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忘れられたオフィウクス  作者: 酣睡


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真夜中の出撃密談、揺るぎなき姉妹の絆

エスペルの屋敷の奥底、薄暗く広大な地下格納庫の片隅で、セリアはオフィウクスの冷たく馴染んだコクピットの中に静かに身を丸めていた。


コントロールパネルに表示された数値が微かに明滅し、神経同調率は150%前後の数値を保ちながら穏やかに揺らいでいる。


その驚異的な数値は、彼女に痛いほど自覚させていた――自身の鼓動の一つ、不安のひとひら、精神の揺らぎのすべてが、何ひとつ隠すことなく、呪いと神格を宿したこの蛇夫座の魔神へと直接投影され、突き動かしているのだということを。


ジュリアンの「偽りの死による脱出」によって、数日間にわたり胸を押し潰していた激痛こそ取り払われたものの、今のセリアの胸中は、さらに濃密で骨身に染みるような別の不安に冷たく締め付けられていた。


全星系を巻き込む大規模な機械衝突の勃発が、もはや目前にまで迫っている――彼女にはそんな予感があった。


とりわけ、イタリア特区の連邦議員が厳重な護衛を敷かれていながら惨殺され、首を刎ねられたという凶報を知って以来、大廈の傾くような危機感が津波の如く胸の内で狂い咲いていたのだ。


主戦派の知性機械が既に中枢上層部への潜入を完了させ、白昼堂々と人類陣営の重要政要に手を下す凶行に及んだということは、奴らが潜入、暗殺、離脱、果ては世論の誘導に至るまでの全プロセスを寸分の狂いもなく予行演習し、完璧な粛清計画を張り巡らせている動かぬ証拠であった。


表向きには、この政治中枢を血で染める嵐は、屋敷に戻ったばかりの少女である自分とは直接の関わりがないようにも見える。


しかし、セリアの背筋を真に凍りつかせていた盲点は――イレーナは、その暗殺リストの中に含まれているのか? という一点にあった。


あるいは……目的のためなら手段を選ばないあの冷酷な女のことだ、水面下で既に主戦派の過激派知性機械と密かに手を結んでいるのではないか?


視野が広がり、隠された真実が次々と白日の下に晒されるにつれ、セリアは思い知り始めていた。権力と嘘、そしてクリスタルエネルギーが複雑に絡み合うこの世界は、かつて温室の中で夢想していたものより何倍も暗く、底知れぬ混沌に満ちているのだと。


彼女の脳裏には、あまりにも大胆で不条理な仮説すら浮かび上がっていた。


もしも……イレーナが二百年以上前の最初の輪廻の時点から、人類と機械という二つの天秤の双方に巨額の賭け金を同時に投じていたとしたら?


そうであれば、この終末の厄災がどちらの勝利に終わろうと、胴元であるエスペル家は不敗の地に立ち、最大の利権を貪り尽くすことができる――それこそが、イレーナがリリスの多次元時間軸を俯瞰する神の眼を通じて導き出した「最適解」なのではないか。


「……いったい誰が……嘘をついていないっていうの?」


セリアは苦悶の表情で冷たい光学計器盤へと額を押し当てた。その双眸には、拭い去れぬ迷いと葛藤が色濃く渦巻いている。


今すぐ主宅へ駆け戻り、イレーナの胸に飛び込んで全てを問い詰めたい衝動に駆られながらも、あの傲岸不遜な当主様が、寝室の天蓋ベッドの上で極度の過労から昏々と眠り続けているであろう姿を思い浮かべ、セリアは伸ばしかけた足を止めた。


……あの狐のように狡猾な女が珍しく思考停止に陥り、警戒心を完全に解いているあの無防備な隙を突いて、口を滑らせるように誘導尋問でも仕掛けてみるべきだろうか?


そこまで考えが至ると、セリアの迷いに曇っていた青い瞳の奥に、悪戯っぽくも危うい企みが密やかに閃いた。


セリアは額に垂れた銀白の前髪を指先で払うと、オフィウクスの狭く冷え切ったコクピットから手足を使って這い出した。


今の彼女には、何よりもまず眼前の情勢を整理整頓する必要があった。


ほんの数ヶ月前までは、単位の取得や日々の些事に頭を悩ませるごく普通の女子大生に過ぎなかったのだ。星間政治に渦巻く、億兆の生命をチップにした陰謀や権謀術数など、彼女の細い肩に背負うにはあまりにも重く、複雑怪奇に過ぎた。


彼女は必死に心を落ち着かせ、最も根源的な疑問点を頭の中で解きほぐそうと試みた。主戦派の知性機械は、いったいどのタイミングで総攻撃を仕掛けてくるのか?


そして何より――奴らが五世紀もの長きにわたり、人類を根絶やしにするまで決して矛を収めようとしないその狂気的な執念は、本当に旧時代の歴史的な憎悪だけが理由なのだろうか?


その疑問は一本の棘となって、セリアの胸の奥に長く刺さり続けていた。


この世界の険悪さと人の心の底知れなさを目の当たりにした今、彼女の胸中には、ある種の冷徹な疑念すら芽生えつつあった――あの温厚に見え、人類のために全てを捧げるかのように振る舞っていた「クム」その人が、実のところ主戦派が中枢へと送り込んだ高級幹部なのではないか?


種族を超えた愛の物語など、ジュリアンの輝かしい家柄を利用し、連邦議会の最後の防衛線を正確にこじ開けるための苦肉の策に過ぎなかったのではないか?


状況はもはや、コインの裏表をめくるような単純な二者択一ではない。彼女は自らの手で、錯綜するすべての情報を手繰り寄せ、紡ぎ直さねばならなかった。


セリアは地下格納庫から地上へと通じるエレベーターへと足を踏み入れ、背後で金属扉が静かに閉ざされた。


彼女は己の性格にある致命的な弱点を自覚していた――「先入観による盲目的な身内贔屓」だ。好意を寄せ、大切に思っている相手のことを、どうしても悪く考えることができない。


だが、冷酷な現実は何度も彼女の頬を張り倒してきた。


カレナはかつて冷酷な任務を遂行する兵器として動き、ジュリアンに至っては彼女を発狂寸前まで追い詰める壮大な狂言死劇を自ら演出しきったのだ。


結果として実害がなかったように見えようと、大義名分を掲げようと、彼らが犯した過ちが帳消しになるわけではない。


だからこそ……いまセリアが何よりも確かめたかったのは、死の運命から自分を救い出すためだけに、三百年の時を孤独に輪廻し続けたあの傲慢な母が、果たして全幅の信頼を預けるに足る存在なのかどうか、その一点だった。


その信頼は、あまりにも繊細で危うい。


あの全身に棘をまとったルネですら、かつてセリアに言い放ったことがあった。この人を呑み込むような屋敷の中で、セリアは世界のすべてを疑ってもいいが、イレーナとルネ自身――この血の呪縛で結ばれた母娘だけは、決してセリアを裏切ることはないのだと。


それは遺伝子と魂の深淵に刻み込まれた、ある種の病的な執念だった。


それでもなお、セリアの直感は警報を鳴らし続けていた。イレーナという存在には、すべてを根底から覆しかねない巨大な歪みが潜んでいるはずだと。


対照的に、ルネの思考はずっと読みやすかった――あの強がりで素直になれない妹は常に真っ直ぐで、裏で小細工を弄するような心理戦など端から好まないのだから。


「チン――」


エレベーターが主宅へと滑り込む。セリアは警戒心の強い子猫のように足音を殺し、静まり返った豪奢な回廊をすり抜け、主寝室の重厚な彫刻扉の前へと忍び寄った。


彼女は深く息を吸い込み、冷たい扉の木肌へとそっと耳を押し当てた。


現代のナノ吸音材が施された建材は完全な物理的遮音を実現していたが、遺伝子改造によって研ぎ澄まされたセリアの聴覚は、幾重もの隔壁を越え、空気中の極めて微細な分子の振動すら捉えることができた。


これ幸いと、彼女は密かな通信やイレーナの寝惚け眼の独り言でも盗み聞きできるのではないかと期待に胸を躍らせた。


だが、冷徹な現実はあっさりと彼女の目論見を打ち砕いた――


重厚な扉の向こうから聞こえてくるのは、どこまでも規則正しく深く、無防備な疲労に満ちた寝息と、寝返りを打つ際に漏れる甘えたような不明瞭な微かな寝言だけであり、そこにはいかなる秘密通信も、天地を揺るがすような陰謀の気配も存在しなかった。


現実の日常は、手に汗握るスパイ映画のようにはいかない。普段は雲を呼び雨を降らす冷徹無比な当主様も、いまこの瞬間ばかりは、甘えん坊の愛娘に精根尽き果てるまで振り回され、死んだ猫のように眠りこけるただの哀れな母親に過ぎなかったのだ。


セリアががっくりと肩を落とし、すごすごと踵を返そうとしたその瞬間――振り返った彼女の視界に、暗闇の中から自分をじっと見つめる深邃な双眸が飛び込んできた。


シルクのパジャマに身を包んだルネが、いつの間に忍び寄ったのか、猫のように音もなく物陰にしゃがみ込んで盗み聞きをしていたのだ!


セリアが悲鳴を上げそうになるよりも早く、ルネの電光石火の手がその口を素早く塞ぎ、もう片方の手の人差し指を自身の桜色の唇に当てて、微かに「シッ――」と息を吐いた。


この土壇場で、ようやく深い眠りに落ちたイレーナを起こすわけにはいかなかったのだ。


だが、昼間のパークでアーサーが見せた底知れぬ情報収集能力を目の当たりにして以来、普段は家中の事情に精通しているルネでさえ、このエスペル邸の深淵に自分たちの知らぬ驚天動地の秘密がどれほど隠されているのか、強い疑念を抱かずにはいられなくなっていた。


セリアが大人しくなったのを見届けると、ルネは手を離し、顎をしゃくって廊下の突き当たりにある自室の方向を示した。安全な場所で密談しようという合図だった。


いまや、二人の少女の胸の内には整理のつかない疑団が渦巻いていた。


とりわけルネにとって――実の父親であるアーサーは、家庭内ヒエラルキーの最下層に位置する発言権ゼロの「お飾りの夫」に過ぎないはずだった。


それにもかかわらず、一日中ゲームばかりして自堕落に過ごしているはずの男が、情報の広さと深さにおいて、後継者たる自分を遥かに凌駕していたのだ。蚊帳の外に置かれていた屈辱と困惑は、ルネのプライドを酷く逆撫でしていた。


「……ルネも、ママを疑ってるの?」


二人は足音を忍ばせてルネの寝室へと滑り込み、重厚な扉に鍵が下りたのを見届けてから、セリアは張り詰めていた声を絞り出した。


「ママが私たちを傷つけるなんて思ってないわよ……でも、全人類を裏切ろうとしてるんじゃないかって、そう疑ってるの。」


ルネは胸の前で腕を組み、冷徹なまでの冷静さを湛えて言い放った。


その大胆な推論はセリアの予感と寸分違わず一致し、ルネのいつもの勝気な横顔には、滅多に見られない重苦しい思索の色が影を落としていた。


「それはさておき、さっき地下格納庫でオフィウクスに触ってきたんでしょ? 同調状態はどうなの?」


「ずいぶん回復したわ……パークであのジュリアンが生きてるって分かったおかげね。」


セリアはルネに対して一切の隠し事をしなかった。


立て続けの裏切りと茶番劇を潜り抜けた今、彼女は来たるべき嵐の中で、背中を完全に預け合える味方を喉から手が出るほど求めていた――そして見渡す限り、口は悪くとも常に寄り添い続けてくれたこの不器用な妹だけが、最初から最後まで彼女に嘘をつかなかった唯一の存在だったのだ。


「ルネ、私ね……あのクムって、最初から主戦派が送り込んだ高級スパイなんじゃないかって思えてきて。ジュリアンに利用価値があるから、わざと従順な主和派のふりをしてるんじゃないかって。そもそも、成層圏と地上での過去二回の反乱で、ジュリアンとカレナはどうやってあれだけの大規模な知性機械の軍勢を動かせたのかしら? そこがずっと腑に落ちないの。」


セリアは胸の最深部に巣食う恐怖を吐露した。


かつての動乱において、カレナもまた大部隊の機械兵装を引き連れて都市を蹂躪した前科がある。だが、カレナが機械の大軍の侵攻ルートを正確に先読みして便乗しただけで、主戦派と直接手を結んでいたわけではないという可能性も残されていた。


「防衛線にわざと小さな風穴を開けて、機械部隊の進撃ペースに合わせて混乱に乗じただけよ、きっと。」


ルネはデスクに寄りかかり、冷静に状況を分析した。


「あんたも気づいてるはずよ。カレナもジュリアンも、あの一連の混乱の中で、市民や兵士を誰一人として直接手にかけてはいないわ。だから、あの二人が本当に人類の裏切り者なのかどうかは、今の段階じゃ白黒つけられない。」


ルネの認識において、主戦派の過激派知性機械など対話の通じる相手では断じてなかった。


前線で数々の凄惨な空戦を潜り抜けてきた彼女は、機械の軍勢に捕らえられた同胞たちの末路を嫌というほど見てきた――どれほど優秀な将校が価値ある戦略暗号や機密を差し出そうと、主戦派の鋼鉄の鉤爪は一切の躊躇なく、その場で彼らを無惨に八つ裂きにして虐殺したのだ。


あの狂気に侵された冷酷な怪物たちにあるのは純粋な殺戮と破壊のみであり、「泳がせて大魚を釣る」などという悠長な忍耐や慈悲など微塵も持ち合わせていない。


「だいたい……あいつらはスキャナーすら欺く高度なアンドロイド技術を手に入れて、人の社会の頂点へ音もなく紛れ込めるのよ。戦場で無意味な人質を生かしておくなんて、奴らにとっちゃただの邪魔な荷物に過ぎないでしょ。」


ルネは腕を組み、戦場の無慈悲を骨の髄まで噛み締めた声音で呟いた。


彼女は言葉を切り、いまだ微かに蒼白さを残すセリアの小顔を見つめると、唐突に声音の調子を変えた。


「明日、軍の沿岸防衛線の定期パトロールがあるの。さっき前線から暗号ブリーフィングが届いて、沿岸の暗礁海域で知性機械の微弱な活動痕跡が引っかかったらしいわ。あんた、私と一緒に出撃しない? 大丈夫、私が絶対に守り抜いてあげるから。」


オフィウクスに乗り込んだセリアが同調率を極限まで引き上げた際、どれほどの天変地異めいた破壊力を叩き出すか、ルネは嫌というほど知っていた。


だが同時に、セリアの神経ネットワークが数日前の精神崩壊からようやく癒えかけたばかりであることも理解していた。


激戦の最中に感情が乱れて同調率が急落すれば、パイロット自身が致命的なバックラッシュに飲み込まれる危険を孕んでいる。


しかし、この疑念に苛まれる少女を屋敷に一人残して報せを待たせれば、今のセリアの気質では、妄想を膨らませて再び自らを追い詰めるだけに違いなかった。


何より、ルネは個人的に尋常ならざる暗号データを傍受していた――沿岸部に不自然に残されたその微弱な痕跡は、主和派のクムたちが主戦派の監視の目を掻い潜り、特定の誰かを誘い出すために遺した道標のシグナルである可能性が極めて高かったのだ。


「でも……ママが私を前線に行かせてくれるはずないじゃない?」


セリアの瞳に光が宿ったものの、胸の高鳴りと同時に気後れが押し寄せてきた。


彼女には自覚があった。自分が戦場で渡り合えるのは、オフィウクスとの規格外の同調率と神格兵装の圧倒的出力による暴力のおかげであり、純粋な単機操縦技術、回避機動、そして実戦の場数において、歴戦のルネとは雲泥の差がある。


イレーナの異常なまでの独占欲と、愛娘を鳥籠に囲い込もうとする病的な気質からして、このような危険極まりない出撃申請に首を縦に振るはずがなかった。


「だったら、ママが完全に目を覚ます前に、既成事実を作ってこっそり抜け出すしかないじゃない。」


ルネは小生意気に顎をツンと突き出し、確信に満ちた、どこか悪戯っぽい笑みを浮かべた。


「万が一、途中でママに捕まりそうになったら……あんたが正面から飛びついて、全力で甘え倒せばいいのよ! 信じなさい、あの冷血女帝を骨抜きにできるのは、全星系を探したってあんたっていう銀白のコアラだけなんだから!」


「な、何よコアラって……!」


あけすけなからかいにセリアは耳朶を真っ赤に染め、恥ずかしそうに頬を膨らませた。だが同時に、ルネのこの荒唐無稽な作戦こそが、イレーナの鉄壁の防壁を突破する唯一の必殺兵器であることも認めざるを得なかった。


「明日は具体的に何時に出るの? それに……地下格納庫のリニアカタパルトを起動したら、主宅の基礎ごと揺れるくらいの轟音が響くわよ。ママだって警報ですぐに起きちゃうんじゃない?」


セリアは下唇を噛み、居心地悪そうに寝室の四方に視線を走らせた。


「機体が射出されて、領空を完全に飛び出してしまえば、後から暗号通信で言い訳すればいいだけの話よ。」


ルネは気にも留めずに顎をしゃくり、その瞳にはエースパイロット特有の不敵な輝きが宿っていた。


彼女の戦術シミュレーションでは、オフィウクスと自機が電磁カタパルトのレールへと滑り込み、轟音と共に音速を突破して水平線の彼方へと二条の光条となって消え去りさえすれば、もはや誰にも止められない既成事実となる――そこまで行ってしまえば、いくらイレーナが激怒して屋敷のテーブルをひっくり返そうと、万米の高空まで腕を伸ばして二人を引きずり戻すことなど不可能なのだ。


ましてや現在、ラグナの専用機は先の激戦による損傷で、動力伝達系と装甲が地下ドックでオーバーホールの真っ最中であり、短時間でのスクランブル発進は絶望的だった。


そして筆頭護衛であるシヴの任務は、絶対的にイレーナの傍らに張り付くことに固定されている。その他の一般護衛部隊などルネの敵ではなく、何の問題にもならなかった。


シヴのことを思い出すだけで、セリアは背筋に冷たいものを覚えずにはいられなかった。シヴはイレーナの厳命により、屋敷内にいる限りは専属メイドとして二十四時間寸分違わぬ距離でセリアに侍り、水を一口飲むタイミングやトイレに立つ時間すら秒単位でバイタル測定されるという息の詰まる監視下に置かれ、セリアを発狂寸前まで追い詰めたのだ。


泣き笑い混じりにシヴをイレーナの元へと追い返して以来、あの鉄仮面の死士は最初の絶対命令へと回帰していた――屋敷に何が起ころうとも、最優先事項は当主イレーナの絶対的な安全確保である、と。


要するに、格納庫で警報が鳴り響こうと、シヴが熟睡中のイレーナを放り出してカタパルトまで二人を止めに来る道理は存在しないのだ。


「……本当に、そんなに上手くいくのかな?」


セリアは熱を持った耳朶を指先で揉みほぐしたが、胸の奥で燻る直感の警鐘は鳴り止まなかった。


時間軸の因果を俯瞰し、あらゆる陰謀を手のひらで転がすあの高慢な母親が、これほど見え透いた防衛の穴を放置しておくはずがない。下手をすれば……二人がこの寝室で顔を突き合わせて密談しているまさに今この瞬間すら、イレーナは夢の中でリリスとの共鳴を通じ、二人の企みをすべて筒抜けに聞き届けているのではないか。


しかし、放たれた矢はもはや戻らない。


崩壊へとひた走る星間社会と、人の皮を被って蠢く見え隠れする凶刃を前に、彼女たちもまた奥歯を噛み締め、目の前の一歩を踏み出すしかなかった。

今日、頭の中にふと妙なアイデアがひらめいてしまいました。

このアイデアを別の新しい小説として書き始めてみようか悩んでいます。


ただ、そうすると今この作品の更新ペースに影響が出てしまうかもしれませんよね……?

まだこちらを連載し始めて数日しか経っていませんが、私にとって本当に素晴らしい経験になっています。


けれど、人間っていつもこういうものなのかもしれません。

一つの小さな段階を踏むたびに、また新しい考えが次々と浮かんできてしまう。

もしかすると、私って単に気が多い性格なだけなのでしょうか?(笑)


もしこの作品を好きだと言ってくださる方がいるなら、全力でこちらをメインに進めていきたいと思っています。


ですが、仮にこの作品があまり上手く書けなかったとしても、それ自体が私にとってかけがえのない経験になるはずです。


今のところは少し迷いの中にいますが、やっぱり複数の作品を同時に連載することにも挑戦してみたい気持ちがあったりします。


By. 酣睡 18:43 P.M.

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