お嬢様の克服戦と支配人の神業サバイバル
愛とは一体何なのだろうか? どこから始まり、どこへと行き着くものなのだろう?
当てもなく幾つもの繁華街を通り抜けるうちに、空はいつの間にかまるで火が燃え盛るかのような、鮮やかな橙紅色に染まり上がっていた。
その夕焼けを見つめながら、セリアの胸の奥には不意に微かな酸っぱい痛みが込み上げてきた――思い出したのだ。
まだ暗雲に覆われていなかったあの頃、ジュリアンもまた、このような夕暮れに染まる長い街路を自分と一緒に歩いてくれたことがあったのだと。
痛みは依然として鮮烈だった。だが、今この瞬間のセリアの心境は、静かに変化を遂げていた。
彼女はもう、ただ盲目的に逃避し拒絶することばかりを考えなくなっていた。
むしろ心の底から、ジュリアンが遺した足跡と正面から向き合うべきだと感じ始めていたのだ。彼女は「愛」とは何なのかを理解しなければならなかった。
せめて、ジュリアンが死の間際に見せたあの従容とした覚悟と、今まさに自らのすべてを賭けているカレナの胸の内を、正しく理解したかった。
いつしか夕食の刻限となり、セリアはカレナ、そしてヴィヴィアンと共に、星網で極めて高い評価を得ている高級景観レストランへと足を踏み入れた。
多種多様な知性補助機械人が基礎労働力の大部分を代替することが当たり前となった社会において、この店はあえてその潮流に逆らい、最も伝統的で古風な「完全有人サービス」の経営様式を頑なに守り続けていた。
ここの給仕たちは皆、最も過酷な古典礼儀作法を叩き込まれており、至極真摯で温かな微笑みをもって客を出迎え、極めて情感豊かな声音で一品ごとの料理の背景や魅力を滔々と語り聞かせる。
科学技術の発展に伴い、名流たちの多くは「血の通った生身の人間」がもたらす温もりと情緒的価値こそが、冷徹で無機質な機械コードよりも遥かに魅力的であり、高額なチップすら惜しみなく弾ませる原動力になることに気づき始めていた。
その結果、こうした復古調のラグジュアリーな営業形態が密かな流行となっていたのだ。
しかし、席に着いたセリアが静かな声音で「ミディアムレア、赤身の血が滲むような焼き加減」の牛ステーキを注文した瞬間、注文を取っていた給仕はその場で完全に硬直した。あまりの事態に、数秒間ぽかんと口を開けて固まってしまったのだ。
直後、数名の給仕たちが血相を変えて物陰に集まりひそひそと囁き合い、ついにはフロア支配人までもが緊急招集された。
大人数で注文端末を囲み、まるで目の前に置かれたのがステーキなどではなく、今にも起爆しかねない星間反物質爆弾であるかのように、深刻な面持ちで何度も確認を繰り返していた。
「どうやら街中のみんなが、あなたの心的外傷後ストレス障害(PTSD)を隅々まで把握しているみたいね。」
カレナは優雅に足を組み、諦めと微かな感嘆を滲ませた口調で呟いた。
だがよくよく考えてみれば、それは何ら不思議なことではなかった。
全星網を通じたあの死角なき全世界生中継以来、このエスペル家の令嬢がどれほど凄惨な精神崩壊を遂げたのかは、全宇宙の知るところとなっていたのだから。
地球圏と各宇宙植民星域における民生経済の半分以上を牛耳る財閥の掌中の珠である。
そんなお嬢様の健康状態に、肝を冷やさずにいられる者などこの世界のどこにいるというのか?
万が一、この銀髪の令嬢が自分の店で何か取り返しのつかない事態にでも陥り、あの娘に対して病的なまでの過保護さを見せるイレーナ夫人の逆鱗に触れ、星区全体の民生サプライチェーンを根底からひっくり返されでもしたら、一体誰に申し開きができるというのか。
実のところ、ほんの小一時間ほど前にも、街の裏側では荒唐無稽極まりない「全都市大掃除」が狂気じみた勢いで繰り広げられたばかりだった。
事の発端は、セリアが市街地で赤い花を目にして苦しげに嘔吐しかけた数秒の映像を、通りすがりの誰かが面白半分で星網に投稿したことだった。
その情報がウイルスのように拡散された瞬間、都市の住民たちは完全にパニックに陥ったのだ――
路面店の花屋の店主は腰を抜かさんばかりに慌てふためき、転がるようにして店中の赤薔薇や鮮やかな花々を地下倉庫へと押し込め隠した。
歩行者天国を優雅に闊歩していた貴婦人は、自分が真っ赤なオートクチュールのロングドレスを着ていることに気づくや否や、あまりの恐怖に血相を変え、体面もかなぐり捨てて最寄りのブティックへと猛ダッシュし、値札すら切る暇もなく純黒の質素な服へと着替えた。
目抜き通り一帯から、わずか一時間のうちにあらゆる「赤」の色彩が物理的に消し去られたのだ。
これほどの恐慌を引き起こした理由は、至極残酷であり、同時に紛れもない現実だった――
現在の地球圏および各宇宙植民区において、名目上の公有地を除くあらゆる繁華街の土地、商業ビル、居住モジュールは、ほぼそのすべてがエスペル家の私有財産として買い占められていた。
言い換えれば、もし誰かの不手際のせいでセリアが体調を崩し、イレーナ夫人の怒りを買うようなことがあれば、単なる賠償金で済むはずもなく、居住権を即座に剥奪されてその夜のうちに強制追放される羽目になるのだ。
公的な行政施設が終業時刻とともに完全に施錠される現代社会において、エスペル家を怒らせた末路として「公園のベンチで夜露をしのぐ」ことすら、破格の温情と呼ぶべきものだった――そして当然ながら、この街に暮らす真っ当な人間の中に、好んで公園生活の味を噛み締めたい者など一人として存在しなかった。
セリアの度重なる強い主張と、「トラウマを克服したい」という真摯な決意を受け、料理を運んできた給仕は、まるで反物質爆弾を捧げ持つかのように両手を激しく震わせながら、本来であれば芳醇な香りを放つ極上の厚切り牛ステーキを、慎重の上に慎重を重ねてテーブルへと配膳した。
テーブルから三歩ほど離れた位置に控えるフロア支配人は、すでに純白のハンカチで額の冷汗を幾度も拭っていた。
右手は背中に回し、左手には防漏仕様の医療用嘔吐袋を密かに、かつ完璧な角度で握り込み、全身の神経を限界まで引き絞った弓のように張り詰めていた。このお嬢様の胃袋が跳ね上がったその瞬間、光速で滑り込んで受け止めるための態勢だ。
支配人は、店が誇る高価な手作り無垢材テーブルが汚れることなど露ほども心配していなかった。
彼が真に恐れていたのは、その汚れがお嬢様の身に纏う布地をわずか一寸でも汚し、イレーナ夫人の逆鱗に触れて、店ごと自分たちの首が吹き飛ぶことだった。
厨房の重厚な両開き扉の隙間からは、このステーキを焼き上げた総料理長が恐る恐る頭を覗かせ、息をすることすら忘れて事態を見守っていた。
西暦3000年という、社会福祉が極めて手厚く、いかなる基礎労働であっても豊かに暮らしていける時代において、彼は純粋な料理芸術への偏愛ゆえに料理人を続けていたのだ。
この一皿のステーキのせいで令嬢がショックを起こし、職を失うばかりか星区から追放されるようなことになれば、泣くに泣けなかった。
そして店内の他の席に陣取る裕福な客たちもまた、完璧な呼吸で一斉にナイフとフォークを止めていた。
ホール全体が水を打ったように静まり返り、誰もが咀嚼する気力すら失い、セリアのテーブルを横目で凝視しながら、万が一お嬢様が吐いた際にどれほどの速度でこの修羅場から脱出すべきかを必死に計算していた。
嵐の目の中にあるセリアは、引き締まった表情のまま、皿の上で淡いピンク色の肉汁をじわりと滲ませるステーキを凝視し、冷汗を流していた。
冷たい汗が彼女の青白く美しい顎を伝い落ちる。心臓は耳元で破裂しそうなほど激しく鐘を乱れ打ち、胃袋はまるで天地が逆転したかのように激しく波打ち、拒絶の痙攣が幾重にも押し寄せていた。
だが、この軟弱さを一刻も早く脱ぎ捨てなければならないという思いから、セリアは下唇をきつく噛み締め、血の気の引いた小さな顔を強張らせながらも、常人離れした意地でその息の詰まる圧迫感に耐え続けていた。
「お、お嬢様……」
支配人は生唾を飲み込み、途方もない重圧に押し潰されそうになりながら、泣き出しそうな愛想笑いを浮かべて小声で進言した。
「当店自慢のベジタリアンシェフが腕を振るいました、極めて美味なる純植物性のトリュフディナーもご用意がございます……そちらをご検討されてはいかがでしょうか……」
支配人は内心、このお嬢様に土下座せんばかりだった――街中に星の数ほどレストランがあるというのに、トラウマ克服の試練の場に、なぜよりによってうちの老舗を選んだのか!
だがそんな本音など逆立ちしても口にできるはずがなく、口にした瞬間、黒服の護衛に裏路地へ引きずり込まれて消されるのがオチだった。
「結構です……私は、この恐怖を克服しなければならないんです。」
セリアのその頑なまでの決意には、頬杖をついて静かに見守っていたカレナの瞳にも、深い賛嘆と胸を締め付けられるような切なさが過った。
心的外傷後ストレス障害とは、決して意志の強さだけで易々と乗り越えられる深淵ではない。
しかし、普段は温室の白猫のように儚げなこの少女は、その骨の髄に誰をも息を呑ませるほどの気骨を秘めていたのだ。
血と肉の色彩を目にしても、辛うじて嘔吐を抑え込めることを確認すると、セリアは深く息を吸い、震える両手を伸ばして冷たい銀のナイフとフォークを握った。
彼女はカレナが手を貸そうとするのを拒んだ。自らの手で、この恐怖を切り裂きたかったのだ。
両腕にはすでに脱力したような気だるさが広がり、指先はナイフを握ることすら覚束ないほど力が入らなかったが、それでも彼女は奥歯を噛み締め、ステーキの端から極めて小さな一片を必死で切り分けた。
全身の力を振り絞り、肉汁を湛えたその小さな牛肉をフォークで唇へと運び、ゆっくりと口に含んで咀嚼した、その刹那――
ジュリアンがオフィウクスの掌の中で血の山茶花と化して弾け散った凄惨な光景が、深紅の雷霆のごとく、暴力的に彼女の精神世界を炸裂させた!
濃密で、生々しく、鼻腔を突く生肉の血の匂いが瞬時に咽喉を満たし、生物としての本能的な極限の拒絶と激痛が、無数の冷たい毒虫のようにセリアの四肢百骸を駆け巡った!
「うっ……げほっ――!」
生理的な防壁は、この瞬間に無残にも決壊した。
セリアが胸を押さえて激しく嘔吐したその刹那、獲物を狙う豹のように身構えていた支配人が、驚異的な爆発力を発揮した――淀みのない流麗なフットワークで滑り込むと、手にした防漏袋を計算し尽くされた完璧な放物線を描いて差し出し、寸分の狂いもなく、一滴の飛沫すら漏らさずに、セリアの吐き出した汚物をすべて袋の中へと受け止めたのだ!
その一連の動作は流れるように完璧で、セリアの身に纏う純白のドレスには微塵の汚れすら飛ばさせなかった。
パチ、パチ、パチパチパチ――!
一瞬の静寂の後、死線を脱した周囲の客たちからは、飲食業の歴史に刻まれるべき命がけのファインプレーに対し、心からの惜しみない拍手が自然と湧き起こったほどだった。
「もう……セリア、本当に無理しちゃダメだよ。」
ヴィヴィアンの柔らかく甘い声が絶妙なタイミングで響き、セリアを窒息の渦から引き戻した。
主人格へと切り替わったピンク髪の少女は、その瞳をいっぱいの痛ましさと慈愛で潤ませていた。彼女は無事な左手を伸ばし、セリアが口を濯げるよう、冷たいレモン水のグラスをそっと差し出した。
同じく漆黒の深淵を泳ぎ抜いてきた者として、ヴィヴィアンにはトラウマに心を苛まれる苦しみが痛いほど分かっていた。
セリアがこれほど自傷に近い形で強引に恐怖をねじ伏せようとするくらいなら、いっそありのままの自分を許してほしいと、彼女は願わずにはいられなかった。
「心の傷なんて、一日や二日でどうにかなるようなものじゃないんだから。
今は怖がったって、嫌がったって全然いいの……その恐怖をまるごと受け入れて、ゆっくりやっていけばいいんだよ、本当に。」
ヴィヴィアンの言葉は、自らの身を削ってきたからこその実感だった。今日に至るまで、彼女自身、両親を失った暗がりから完全に脱出できてなどいないのだ。
だからこそ、セリアがこれほど必死に立ち上がろうとする姿に、胸を打たれずにはいられなかった――自分だったら、心の中の怪物と正面から向き合う勇気など到底持てなかったはずだから。
だが、セリアが全身を痙攣させ、小さく丸まって震える痛々しい姿を見ていると、ヴィヴィアンはやりきれなさと切なさで胸が張り裂けそうだった。
激しい拒絶反応の嵐を抜けたばかりのセリアは視界が明滅し、頭の中は真っ白だった。
荒い息を繰り返す中、彼女は本能的に手を伸ばし、手近に垂れ下がっていた布地を無我夢中で掴むと、濡れた口元を力任せに拭った。
視界が徐々に焦点を結ぶにつれ、セリアは自分が手の中で握りしめているものの正体をまじまじと見つめることとなった――
油分と唾液に濡れた彼女の口元は、フロア支配人のあの極めてパリッと糊の効いた、仕立ての良い黒いスーツの裾に、見事なまでのシミを刻み込んでいたのだ。
「ご、ごめんなさい! 本当にごめんなさい……!」
高級レストランの支配人の制服をあろうことか雑巾代わりに使ってしまったことに気づき、セリアの血の気の引いていた顔は一瞬で耳の付け根まで真っ赤に染まった。
羞恥と焦燥が全身を焼き尽くし、煙となって消え去りたい衝動に駆られながら、彼女の頭はただ一つ――穴があったら入りたいこの場所から一秒でも早く逃げ出したいという思いで埋め尽くされた。
「滅相もございません……お嬢様のお役に立てましたこと、これ以上の栄誉はございません。」
支配人は引きつった口元で、泣くよりも痛々しい絵に描いたような営業スマイルを浮かべ、もはや生死を超越したような悟りの境地を漂わせていた。
客観的に見れば、背後にある複雑怪奇な財閥の権力関係を差し引いても、この銀髪の令嬢の人柄は信じられないほどに善良だった――優しく、礼儀正しく、常人なら耐え難いトラウマに直面しながらも、誰もが敬意を抱かざるを得ない気丈さを見せている。
自暴自棄になって腐ることもなく、温室の中に逃げ込むことも選ばない。ただ……この少女のトラウマ克服に向けた実践は、あまりにも不器用で、見ているこちらが冷汗をかかずにはいられないほど無様だった。
もし彼女が、全星系が手を焼く、いつイレーナ夫人の逆鱗を呼び起こすかもわからない「歩く起爆装置」でさえなければ、支配人も一人の健気で心優しい少女として、心から喜んで最期まで仕えていたことだろう。
セリアが恥ずかしさのあまり本当に地面に穴を掘って逃げ出すべきかと思い詰めていたその時、厨房の重い両開き扉が「ダンッ!」と激しい音を立てて跳ね上がった!
汗だくの総料理長を先頭に、戦々恐々とした料理人チームが一列に並び、芳醇なトリュフの香りを立ち上らせる数々の豪華な植物性フルコースを掲げて、百メートル走の猛ダッシュさながらに駆け出してきたのだ!
セリアが嘔吐しかけたまさにその瞬間、扉の隙間から覗き見ていたシェフたちは魂を吹き飛ばされ、光速で持ち場へ反転し、己の活路を開くべくフル稼働で火を入れていたのだ。
今夜全員が無事に自宅のベッドで眠れるか、あるいは揃って公園のベンチで夜風に吹かれるかの死活問題である!
この小さなお方を満足させて送り届けるため、料理人たちは通常のポーション配分など完全にかなぐり捨て、国賓をもてなすかのごとき豪華絢爛な料理を、成人男性三人前ですら優に超える圧倒的な物量でテーブルへと並べ立てた。
「あらあら……どうやら私たちの可愛いセリアは、お店の方々をすっかり震え上がらせてしまったみたいね。」
カレナから、鈴を転がすような澄んだ笑い声が零れ落ちた。優雅で美しいその響きは、しかし今のセリアにとっては火に油であり、赤く染まった頬をさらに燃え上がらせた。
あまりの居たたまれなさに、彼女は開き直るようにして、恐怖に怯えたダチョウのごとくカレナの胸元へ飛び込み、火照った顔を相手の衣服の奥深くに埋めて、二度と顔を上げようとはしなかった。
「いい子、いい子ね……」
カレナは心底満ち足りた様子で両腕を回し、細やかな指先で少女の艶やかな銀白の長髪を梳きながら、優しくその頭を撫でた。
セリアが単に恥ずかしさのあまり顔を隠す盾にしているだけだと分かっていても、この自ら飛び込んできた愛らしい甘えと依存は、彼女を抗いがたく酔わせた。
そしてまさにこの瞬間、スーツの裾に刻まれた汚れを見下ろしていた支配人の脳裏に、電撃のような閃きが走った。
起死回生――いや、自らの運命すら塗り替えるビジネスの妙案が降りてきたのだ。
彼は周囲の副支配人に向けて目配せをし、耳元で手短に囁いた。
数分後、店内の死角なき超高精細ホログラム防犯カメラの映像が呼び出された。支配人自らが腕を振るい、極めてドラマチックな決定的瞬間を切り取ったのだ――
注文時の緊迫したプロフェッショナルの確認から、令嬢が吐き気を催した瞬間のあの神業のごとき見切りによる「フライングキャッチ」、さらには意識の朦朧とした令嬢にスーツで口を拭われながらも、四十五度の完璧な紳士の礼を保ち続ける支配人の感動的なクローズアップまで。
その一連の流れは、教科書に載せるべき危機管理とホスピタリティの極致だった。
支配人は即座にその編集映像に言葉を添え、店舗公式端末から星網のトップページへと最速で解き放った――
【お嬢様の笑顔を守り、その恐怖の克服をお支えするため、当店は火の中水の中へと飛び込む覚悟でございます!】
動画が投稿されてからわずか十分、アクセス数は爆発的な勢いで跳ね上がり、拡散と「いいね」の数字は天文学的な速度で跳ね上がった。
エスペル財閥の雷霆の怒りを買いかねなかった絶体絶命の危機は、支配人の極限の生存本能によって、「街を挙げて一丸となりお嬢様をお守りする」感動の美談へと鮮やかに塗り替えられ、各星域の掲示板に巨大な熱狂の渦を巻き起こしていったのだった。
今日、小説を書いていてふと頭に浮かんだことがありました。
それは、台湾と日本とでは「極道(裏社会)」に対する捉え方がずいぶんと違うんじゃないか、ということです。
台湾ではどこか極道の世界が美化されがちで、「道を踏み外した者が改心して戻ってくる(浪子回頭)」といったドラマが好まれ、そうしたテーマの映画もたくさん作られています。
けれど、日本の方々はどちらかというと、もっとストレートな「正義」を重んじているように感じます。
過ちを犯した人が普通の生活に戻るのを見て「よく頑張った」と褒められるのなら、最初からずっと真面目にルールを守って生きてきた人の方が、本来はずっと偉いはずじゃないか——。
多くの日本人がそう考えているように思えますし、実は私自身もまったく同感だったりします。
同じ事柄でも、土地や文化が違えばここまで見方が変わるんだなと思うと、なんだかとても興味深く感じた昼下がりでした。
By. 酣睡 台湾・中山区 13:13 P.M.




