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忘れられたオフィウクス  作者: 酣睡


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木漏れ日の深吻、暴走せし裏人格の破防日常

茶房を出て賑やかな市街地の通りへと足を踏み入れると、セリアは周囲を行き交う人々から注がれる視線を肌で感じ取ることができた。


その眼差しに悪意はなかったが、上から目線の同情と憐憫に満ちており、まるで目に見えない幾重もの檻のように重苦しく彼女を取り囲んでいた。


コクピットの中で自らが上げたあの身を引き裂くような慟哭が、全星網(ステラネット)を通じて何百億もの人々に余すところなく晒されてしまったのだと思い出すたび、セリアは地面に穴でも掘って飛び込みたい衝動に駆られた。


だが、外の世界からの詮索に抗う労力を費やすくらいなら、イレーナが自らのために設えたあの黄金の温室へと逃げ帰る方が、遥かに容易だった。


イレーナは、正真正銘、完璧に勝利したのだ。


市中心部に浮かぶ巨大なホログラム天幕では、最高議会の激論の様子がリアルタイムで中継されていた。


ジュリアンの父親が演壇に立ち、全星系に向けて「人類と知性機械」に対する固定観念を見直すべきだと、熱弁を振るっている。


両種の共存を長年訴え続けてきたこの政治家は、機械に対する敵意を払拭することこそが、人類社会の内部に根深く巣食う差別と階級制度を打破する唯一の道だと信じて疑わなかった。


そしてこの議論から、新たな哲学的一問が世論の矢面に立たされることとなった――知性機械とは、果たして一個の独立した人格を持つ「知性生命」と呼ぶべきではないのか?


理論上、機械はいかなる生物学的な生命兆候も持たず、寿命の終わりを意味する「死」の概念すら存在しない。


だが、彼らは思考し、プログラムの深淵で苦痛や悲哀を感じ取り、自らが大切に想う人間を守るためなら、禁忌を犯して同胞を傷つけることすら厭わないのだ。


次の瞬間、天幕の映像が突如としてジュリアンの命の最期を捉えた特写写真へと切り替わった――漆黒の魔神の鋼鉄の掌の中で、血色の山茶花のように凄惨に咲き誇ったあの深紅の瞬間が、高精細ホログラム技術によって都市の空へと克明に映し出されたのだ。


ジュリアンの父親はその映像を背に声を張り上げた。知性機械であるオフィウクスは、幾重もの安全プロトコルの制約の下にあって一般の補助機械よりも遥かに人間性に満ちており、セリアを守るために自ら人を殺める大罪を背負うほどの、深い情動を芽生えさせていたのだと!


「うっ……げほっ……」


不意に網膜を焼いたあの鮮血の赤。万メートルの高空で降り注いだ血の驟雨が、再び彼女の脳内で爆発した。


セリアは膝の力を失い、冷たい歩道の上へと無力に崩れ落ちた。激しい嘔吐感が胃袋を痛めつけ、冷汗が滝のように流れ落ち、胸の奥で狂ったように跳ね上がる心拍は今にも肋骨を突き破らんばかりだった。


「セリア……」


カレナの胸中は複雑を極めていた。世論の動向は確かに彼女たちの思惑通りに寸分の狂いもなく進んでいる。


だが、目の前で愛しい少女がここまで苦痛に喘ぐ姿を見せつけられては、彼女の胸の奥にも言い知れぬ鬱屈と痛みが広がっていくのを止められなかった。


彼女がイレーナと裏で結んだ密約は、極めて単純なものだった。


イレーナはカレナがセリアに言い寄ることを黙認し、成就した暁にはエスペル家の嫁として迎えることを約束した。


しかし、あの底知れぬ当主が損をする取引などするはずがない――その対価として、カレナとイエラン家は、イレーナの手足となる手駒の地位へと甘んじることとなった。


イレーナがカレナを虐げるようなことはしない。だが、一枚の空手形だけで夜蘭家を平伏させ、星系内で最も完璧に遺伝子改造された人造強化兵士を自らの陣営に縛り付けたのだから、この盤上において最初から最大の利益を得ていたのはイレーナだったのだ。


「どうして……愛は人を、ここまで残酷にさせてしまうのかしらね?」


カレナは身を屈めると、力なく倒れ込むセリアをお姫様抱きの体勢で優しく抱き上げ、遠巻きに見守る群衆を抜けて、通り沿いのベンチへと腰を下ろした。


胸の中で微かに漏れ出た少女の呟きを聞き、カレナの胸の底にやりきれない寂寥と酸鼻が過った。


セリアのためなら、彼女とて自らのすべてを投げ出す覚悟があった。だがセリアの無垢で純粋な心は、このような計算と流血の上に築かれた重苦しい情愛を受け止めることなどできないのだ。


二人の魂の本質には、最初から埋めることのできない深淵が横たわっており、真の意味で一つに溶け合うことは叶わないのかもしれない。


「あれほど奇妙な恋愛小説を読み漁って、時代を超えた愛の文学に触れてきたはずなのに……セリアは愛というものに直面すると、どうしてこんなにも不慣れなのかしら?」


カレナは整った眉を微かに顰め、諦めと慈しみの入り混じった声音で呟いた。


彼女の記憶の中のセリアは、普段からあの黄ばんだ古書の文字に耽溺していたというのに、いざ自らが渦中に置かれると、まるで何も知らない幼子のように戸惑うばかりなのだ。


「『見知らぬ女の手紙』も『嵐が丘』も……同じように愛を描いた名作だけど、そこに描かれている愛の形が、同じだと言えるのかな……?」


セリアは怯えた白銀の子猫のようにカレナの温かな胸元へとすっぽりと潜り込み、相手の衣服に顔を埋めながら、カレナを苦笑させ、そして反論の余地すら奪う答えを口にした。


世の中に存在する「愛」の描写と解釈は、あまりにも多岐にわたりすぎていた。


人類が文字を紡ぎ始めてから、西暦3000年に至る現在に至るまで、愛を扱った作品の類型は数え切れないほど存在し、中には旧時代の道徳観を打ち砕き、あるいは破壊し尽くすような極端な規範すら溢れかえっている。


五百余年前に人類と知性機械の全面衝突が勃発して以来、文明の膨大なリソースは科学技術の開発と軍備増強へと注ぎ込まれ、純文学の領域は千年もの間、停滞を余儀なくされてきた。


セリアが愛読する作品の中には、千年前の旧時代の遺物すら含まれている。


だがその間には、千年の歳月がもたらした道徳と認識の断層が横たわっているのだ――西暦二千年代の人類が古代ローマの価値観を振り返った際、「古代ローマ人とはなんと不可解なものか」と呆然としたのと同じように。


倫理の境界が再構築され続けている西暦3000年の現在において、血縁の垣根を越えた親族間の深い愛など、社会的にはすでに広く受け入れられつつあるものだった。


ただ社会秩序を維持するための法整備が追いついていないがゆえに、完全な無秩序へと陥っていないに過ぎない。


イレーナが星網の生中継で見せつけたあのセリアに対する病的なまでの溺愛も、ネット上では驚くほど肯定的な反響を呼んでいた。


それどころか熱狂的なネチズンたちが掲示板を埋め尽くし、イレーナ夫人に対してもっと大胆で親密なプライベート写真の公開を求める声が止まないほどだった。


しかし、外の騒ぎがどれほど過熱しようとも、あの底知れぬエスペル邸がそれに応えることは決してなかった。


ベンチの周囲の空気が次第に落ち着きを取り戻し、微風が重なり合う二人の裾を揺らす。


セリアはカレナの腕の中で身じろぎすると、心の底にずっと蟠っていた疑問をぽつりと口にした。


「どうしてカレナは、私のことが好きなの……? 実は、ずっと分からなかったんだ。」


セリアの声はくぐもっていた。彼女の認識では、この感情は元々自分の一方的な憧れに過ぎなかったのだ。


その後にあまりにも多くの血と裏切りを経験していなければ、彼女はきっと、流されるようにカレナを受け入れていたはずだった。


それを聞いたカレナは焦ることなく、ただ腕の力を強めて腕の中の愛らしい小猫をより強く抱きしめ、さらなる安心感を与えようとした。


「セリアは……ルネやヴィヴィアンが普段、あたしのことを何て呼んでいるか覚えているかしら?」


カレナの声はひどく穏やかだったが、その響きの底には珍しく、深い悲哀が滲んでいた。


その言葉にセリアは小さく息を呑んだ。思い出したのだ――あの二人が何の躊躇もなく、カレナを「人外の化け物」と罵っていたことを。


人造強化兵士とは、星間戦場を彷徨う生ける亡霊のような存在だ。だが彼らは本質において、生身の生きた人間に他ならない。


彼らもまた人間と同じ感情を持ち、泣き、痛みを感じ、飢え、自らの心を誰かに受け入れてもらうことを痛切に渇望している。


だが残酷なことに、その狭間に生きる改造兵器たちは、世間から真の人間として扱われることは永遠にないのだ。


人にあらず、鬼にもあらず。どちらの側にも居場所のないその境遇は、知性機械以上に社会から忌み嫌われ、恐れられていた。


多くの人造強化兵士が生涯をかけて自らの素性を隠そうとするが、誕生した瞬間から強制登録を義務付けられ、個人情報には一生消えない特殊な識別標識が刻まれる。彼らに逃げ場など最初から存在しないのだ。


セリアの青い瞳に宿る悲哀と共感を見て取り、カレナは自分が選んだ相手に間違いはなかったと確信した。


彼女はわずかに顔を寄せ、自らの白く滑らかな頬を、セリアのコラーゲンに満ちた瑞々しく柔らかな頬へと、愛おしそうにすり寄せた。


肌が触れ合うその極上の感触に、カレナの胸には微かな羨望と感嘆が湧き上がった――認めざるを得ないことだが、セリアの遺伝子調整はあまりにも恵まれすぎている。同じ女として腹立たしいほどの体質だ。


大した手入れもしていないというのに、湯水のように金をかけて磨き上げた令嬢たちよりも遥かに完璧なのだから。


「あたしの人生の中で……あたしを一人の普通の女の子として見て、好きになってくれたのは、あなたが初めてだったのよ。」


カレナはセリアの冷たい耳元に唇を寄せ、甘く蕩けるような声で囁いた。


「そして、あたしが人造強化兵士だと知り、この化け物の身体を目の当たりにした後ですら、頑なに『普通の人』だと思ってくれている……そんなあなたを前にして、あたしが愛さずにいられると思う?」


カレナの澄んだ柔らかな声が耳朶をかすめ、熱い吐息とともにセリアの耳の奥へと入り込み、甘美な痺れを呼び起こす。


これほど剥き出しの告白と執着をぶつけられて、セリアとて完全に心を動かされずにいられるはずがなかった。


しかし、ジュリアンが無残に砕かれた光景を思い出し、ルネの不器用で重苦しい想いに触れた今、セリアの心の奥底には拭い去れない冷え込みと動揺が立ち込めていた――自分には本当に、「愛」などというものが必要なのだろうか?


いつの日か、自分もまたジュリアンのように愛という名の執念に狂わされてしまうのではないか? あるいは、自分を愛してくれる者たちもまた、自分を救うために破滅への道を突き進んでしまうのではないか?


セリアには、愛の代償を賭ける勇気などなかった。


それは人の魂を完全に歪め、作り変えてしまう劇薬だ。かつてのイレーナがエルウィンと向き合っていた時も、愛の泥沼に足を取られたからこそ、今のような病的な支配欲の権化へと変貌してしまったのではないか?


セリアは今でもはっきりと覚えている。


エルウィンは口を開けばイレーナへの恨み言ばかりを口にしていたが、あの口先ばかりの男は、周囲に隠れて密かにイレーナと逢瀬を重ねていたのだ。


それを思い出すたび、セリアの胸にはあのろくでなしの父親を一発殴り倒してやりたい衝動が込み上げてくる。


幼い頃の自分があれほど母親の温もりを求めていたというのに、どうしてあの時、エルウィンは幼い自分を連れてイレーナに会いに行ってくれなかったのか?


母の愛を諦める術を学び、孤独に慣れきった今になって、イレーナの執着が狂気へと完成した今日になって、なぜ自分をこの深淵のような屋敷へと送り返したのか。


それは彼女の人生を弄ぶ、あまりにも残酷で理不尽な冗談に他ならなかった。


絡み合い、互いを苛み合う感情の濁流に疲れ果て、セリアはカレナの首元へと額をそっと擦り寄せた。


彼女はもう限界だった。これ以上、複雑な論理や計算で思考を巡らせることなどしたくなかった。


「カレナは……私のために、命を捧げてくれるの……?」


セリアは胸元に顔を埋めたまま、ぽつりと問いかけた。


「どう思うかしら?」


カレナは決まりきった誓いの言葉を口にせず、ただ静かに顔を寄せ、セリアの冷たい頬へと慈しむように口づけを落とした。


そのキスは羽のように軽やかで、けれど焼きごてのように熱く、セリアの身体を抗いがたく震わせた。


カレナの意思は明白だった――セリアのためなら、彼女はとっくに自らの命も魂もこの残酷な賭場へと差し出しているのだ。


目の前の少女が将来どのような姿へと変貌しようとも、彼女は喜んでその深淵へと溺れていく覚悟だった。


「ちょ、ちょっと待ちなさいよ……! あたしがトイレに行ってるほんの数分の間に、アンタたち何ベタベタくっついてんのよぉぉぉッ?!」


ベンチのすぐ脇から、唐突に世の不条理を呪うような悲鳴が響き渡った。


二人の熱烈な抱擁の光景を目にした衝撃のあまり、ヴィヴィアンの裏人格が表へと飛び出してきたのだ。


先ほど茶房で熱いお茶と苦い抹茶を流し込みすぎたヴィヴィアンは、生理現象に耐えかね、痛む右肩を押さえながら隣の商業施設の公衆トイレへと駆け込んでいた。


誰が予想できただろうか、痛みに顔を歪めながら戻ってきた矢先に、白昼堂々路上で抱き合って愛を囁き合う生々しい光景を見せつけられるなどと!


ピンク髪の少女はベンチの前に立ち塞がり、左手を腰に当て、愛らしい童顔をこれ以上ないほど歪めて驚愕と呆れを露わにし、目の前の二人を仁王立ちで睨みつけていた。


「ちょっとお小水に行ってきただけじゃない! アンタたち、どれだけ飢えてんのよッ?!」


ヴィヴィアンは悔しそうに地団駄を踏み、ギプスで吊られた右腕が揺れて痛みに顔をしかめながらも、その丸い瞳を怒りで吊り上げていた。


彼女は足早に詰め寄ると、毛を逆立てた子猫のようにベンチの前に割り込み、カレナを指差して怒鳴り散らした。


「おい! カレナ先輩! 心に傷を負って抵抗もできない無力な女の子相手に路上で手を出して、アンタの道徳手帳には『火事場泥棒の禁止』って項目は書いてないわけぇ?!」


この小柄な少女の激情を込めた糾弾を前にしても、カレナは眉一つ動かさなかった。


手を離すどころか、むしろ腕に力を込めて胸元のセリアをさらに強く抱き寄せると、優位を誇示するように艶然と瞳を上げ、紫水晶の瞳に気だるげで危険な笑みを浮かべた。


「あら、西園寺のお嬢さん、何か勘違いをしているんじゃないかしら?」


カレナの声は最高級の絹のように滑らかで、どこか小馬鹿にしたような響きを帯びていた。


「あたしの辞書において、標的の隙を見逃さず果断に攻め込み、戦果を確実に手中に収めることこそが唯一の正義なの。火事場泥棒? いいえ、これは『精密なる戦略的推進』と呼ぶべきものよ――それに、セリアはさっきから、あたしのことをちっとも突き放そうとしていないじゃない?」


「なっ、何よそれ、ただの屁理屈じゃない! この恥知らずな泥棒猫がぁッ!」


やり込められたヴィヴィアンは顔を真っ赤にし、唯一動く左手で自らのピンクのショートヘアを乱暴に掻きむしると、怒りの矛先をセリアへと向けた。


その声音は先ほどの凶暴さから一転し、不甲斐なさに泣き出しそうな甘えた響きを帯びていた。


「セリア! 目を覚ましなさいよ! この女、中身は真っ黒のドロドロよ?! そんなヤツに抱きついてるなんて、自分から悪い狼の口の中に飛び込んでるのと一緒じゃない! 早くその女を突き放しなさいよぉ!」


純潔な母親が悪徳ヤクザに拐かされたかのように慌てふためき、その場でじたばたと取り乱すヴィヴィアンの滑稽な姿を見ているうちに、セリアの胸を朝から重く圧迫し続けていた巨大な岩の隙間に、知らぬ間に一筋の光が差し込んでいた。


あまりにも馬鹿げていて、おかしくてたまらなかった。

一方は学園で誰もが傅く高嶺の花でありながら、裏では機甲すら素手で引き裂く人外の改造兵器。


もう一方は重砲機甲を駆る時は狂暴な殺戮者でありながら、素顔は愛に飢えた子供のような名門のお嬢様。


そんな二人が今、騒がしい街のど真ん中で、たかが抱擁一つを巡って体面もかなぐり捨てて言い争っているのだ。


早朝から彼女を縛り付けていたあの息の詰まる絶望、そして全星網の視線に対する恐怖が、このどこまでも俗っぽく温かな喧騒によって、音もなく洗い流されていくようだった。


セリアはカレナを乱暴に突き放すことはしなかったが、いつまでもその胸元に顔を埋めていることもしなかった。


彼女は静かに上体を起こし、風に揺れる銀白の髪を撫でながら、微かな呆れと、そしてごく僅かな安らぎを宿してカレナの袖をそっと引いた。


「もう……カレナ。わざとからかうのはやめてあげて。」


そして彼女は向き直り、顔を真っ赤にして膨れるヴィヴィアンを見つめると、その唇の端をほんの僅かに、愛おしそうに綻ばせた。


「ありがとう、ヴィヴィアン……でも、私なら大丈夫だから。本当に。」


その消え入りそうなほど微かな微笑みを目にした瞬間、ベンチの前に立っていたヴィヴィアンは目を見張って硬直した。


そして照れ隠しのようにぷいっと顔を背けると、耳朶を赤く染めながら小さな声で呟いた。


「……あたしはただ、綺麗なものが悪い女に汚されるのが許せないだけなんだからね……」


街角を微風が吹き抜けていく。頭上のホログラム天幕では相変わらず騒々しい中継が続いていたが、この小さなベンチの周りだけには、凍りついた空気を溶かすかのような微かな温もりが、確かに漂い始めていた。

最近、作中のキャラクターたちが「愛」というものをどう捉えているのかを書いていて、ふと不思議なことに思い至りました。


もともとロボットと様々な形の「愛」を描くことが私の作品の大きな軸であり、そこには母性愛や父性愛、恋愛や友情といったものがたくさん詰まっています。


けれど、現実の世界を見渡してみると、案外みんな自分自身でも「愛」の正体がよく分かっていないんじゃないかな、と感じることがあります。


たとえば、世間では「お金と結婚した」なんて言われるように、愛がなくても裕福な人を選ぶ人がいたりしますが、それってやっぱり純粋な「愛」とは違いますよね。


私たちは生きていく中で、いくらでも理性的になって現実的な選択をすることができます。けれど、誰かを好きになって胸が高鳴るあの瞬間だけは、どれだけ理性を働かせても抑えきれないものなんじゃないかと思うんです。


どんなにクールで理性的な人だって、きっと一度はそんな経験があるはず。ただ、理性の力でその「ときめき」をそっと胸の奥にしまい込んでいるだけで。


じゃあ、本当の「愛」って一体何なんでしょうね?


その答えは、この作品の中で少しずつゆっくり探っていけたらいいなと思っています。


読者の皆さんも、「誰かにものすごく心惹かれたのに、理性が勝ってその想いを口に出せず、胸の奥に閉じ込めてしまった」なんて経験はありますか?


By. 酣睡 台湾・台北 09:56 A.M.

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