緋色の盾と魔神の選択、星海に晒されし詰みの一手
機械兵装による実戦の領域において、鉄則とも呼ぶべき戦術的常識が存在する――常軌を逸した未知の特異機体に遭遇でもしない限り、この解析法則はほぼ百発百中で通用するものだ。
すなわち、機械兵装のあらゆる外部構造や追加モジュールには、例外なく極めて明確な実戦上の用途が存在するということ。
見栄えの派手さばかりを追い求める一部の好事家ならいざ知らず、生きるか死ぬかの極限の殺し合いに投入される軍用兵装が、実用性のない無駄な装飾のために一グラムの積載量すら浪費するはずがないのだ。
ここに至り、ようやく冷静さを取り戻したセリアは、この基礎知識を思い起こしていた。彼女は全周囲光学スクリーンの視界を通して、チャリオットのフレーム構造と武装配置を極限の速度で観察し、解体し始める。
戦車の外部装備は一見すると非常に簡潔で無駄がない。超音速戦闘機への変形機構を成立させるためか、その機体シルエットは重装甲機にしては異様なほど細身で引き締まっている。
腰部両脇には二挺の大口径拳銃型射撃兵器を懸架しており、先ほどの変形ドッグファイトにおいては機首へ折り畳まれる形で固定航空砲と化し、超低空での追撃戦の最中、幾度となくオフィウクスへ向けて痛烈な弾幕を浴びせかけてきた。
そして両大腿部の外側装甲には、コンバットナイフを思わせる小型の短刃がそれぞれ一振りずつマウントされている。
表層だけを見れば、高機動の近接格闘戦に特化した軽装構成に見えるが、近接兵装の威力とリーチという面においては、いささか貧弱かつ決定打に欠けるように思えた。
何かがおかしい。
セリアの脳裏に、講義でデイン教官が放った厳しい叱責と、かつてカレナが戦術シミュレーションの際にくれた優しい助言が鮮烈に蘇る――
『もし一機の機体が十分な積載マージンを残していながら、外部に常規の武装をあからさまに欠いているのなら、まず最悪の可能性を疑いなさい。その致命的な牙はすべて、相手が油断した瞬間に不意打ちを食らわせるための隠し武器として内蔵されているのだと』
セリアは頭の中の戦術マップ上で、ジュリアンの火力モデルを素早く構築していく。
現在チャリオットが白日の下に晒している確認済みの武装は、二挺の大口径拳銃と二振りの格闘短刃、そして極限の突進運動エネルギーを誇る可変突撃戦闘機形態のみ。
ならば、あの装甲の下に潜んでいる「未知の隠し暗器」とは何なのか?
セリアの視線は、機体の中で異様な違和感を放つ複数の部位へと吸い寄せられた――
戦車の両脛部外側に位置する異様な厚みを持つ複合装甲ブロック。あれはコールドローンチ機構を採用したマイクロミサイルランチャーのコンテナではないか?
そして腹部に位置する、コアフレームを覆う奇妙なラインを描く独立折り畳み装甲――あれが左右にスライドした時、零距離で標的を蒸発させる高出力粒子加速砲が隠されているのではないか?
そこまで思考を巡らせた瞬間、セリアの背筋に冷たい汗が伝った。
この戦闘が終われば、機動工学と戦術解析の基礎を徹底的に叩き直さなければならない――彼女は骨身に染みて痛感していた。
これまでの日々、自身の貧弱な体力と絶望的な操縦適性の低さから目を背け、こうした実戦理論の学習を疎かにしてきたツケが、この命のやり取りという瀬戸際で「知識の致命的な不足」として重くのしかかっていた。
[どうしたんだい、お嬢様? 戦況の解析能力が……いささか追いついていないようだね?]
オープン通信回線から、ジュリアンの容赦のない嘲弄が鼓膜を刺した。
超一流の諜報エージェントである彼は、誰よりもセリアの致命的な弱点を把握している――この純白の少女は、機甲戦術や工学理論に関してはほぼ完全な白紙であり、これまでは実母イレーナから受け継いだ化け物じみた神経反射速度だけで生き残ってきたに過ぎない。
だからこそ、この禁断のオフィウクスを駆りながらも、戦局を完全に支配し得る自律量子ユニットの真の力をいまだ十全に解放できずにいるのだ。
ジュリアンには、セリアが何を迷っているのかが一目で分かっていた。彼女は必死に戦車の隠蔽武装を見破ろうとし、重厚な装甲構造のハッタリに気圧され、反撃に打って出られずにいる。
だが、現実はあまりに皮肉だった。
戦車に施された、無数の凶器を隠しているように見える重装甲の肩部、脚部、そして腹部――それらの正体はすべて、超高出力の「偏振粒子バリアジェネレーター(Polarized Particle Lattice Generator)」なのだ!
この発生器の作動理論は極めて純粋であり、同時に狂暴を極めている。高周波で振動する偏振粒子を機体の風上側へ展開して不可圧縮の「光格子斥力衝撃波」を編み上げ、巨視的な物理レベルで絶対剛体に近い電磁流体反発フィールドを形成する。
戦闘機形態の質量加速と相まって、戦車は自らの鋼鉄の全身を、あらゆる障害を粉砕する純粋な運動エネルギーの破城槌へと変貌させる。
これこそが戦車の最も誇るべき必殺の矛であり……同時に、この機体が持つ唯一の切り札だった。
極端なまでに偏った強襲特化機。あの破壊的な斥力光格子を維持するため、発生器は突進の刹那に全エネルギーの九割以上を強引に奪い去る。
たとえコアに高エネルギー準位を誇るアルファクリスタルを搭載していようと、短時間に亜光速突進を連続で行えば、リアクターは過負荷によるメルトダウンと機体の瞬間的なブラックアウトという致命的リスクに晒されるのだ。
それゆえに、戦車のエネルギー構造は粒子加速砲などの高消費武装を積む余力など毛頭ない。
腰の大口径拳銃は完全な機械式給弾による「タングステン合金徹甲実包」を採用せざるを得ず、脚部にも物理的なダガーしか持たせられない――すべての簡素な武装は、一ジュールたりとも無駄にできない貴重なエネルギーを、あの命懸けの光格子フィールドへ残すための苦肉の策だった。
もし今、コクピットに座っているのが戦闘狂のルネや戦術の申し子であるカレナであったなら、初撃の廃熱データの数値を見ただけでこの底を見破り、突進直後のエネルギー充填の隙を突いて全出力で正面からねじ伏せていただろう。
だが悲しいかな、座っているのは戦の何たるかも知らぬセリアなのだ。
かつて「操縦適性なし」と烙印を押され、幾度となく否定され挫折を味わってきた灰色の歳月の中で、傷ついたセリアは機体構造や戦術理論といった知識そのものを蛇蝎のごとく避けるようになってしまっていた。
胸が痛むほどの事実を口にするならば、セリアの頭の中に詰まっている洋菓子やケーキの種類のほうが、機動工学の専門用語よりも遥かに多いだろう。
その無垢さは平時であれば愛らしく映るかもしれないが、この血飛沫舞う修羅場においてはあまりに過酷な枷となる――過酷なシミュレーション訓練で心を折られ続けたのでもなければ、生き残るための必須技術に興味を失う者などいるはずがないのだから。
セリアは唇を強く噛みしめ、冷や汗がうなじを濡らすのを感じていた。
己の理論知識の乏しさは痛感している。だが、後悔している時間すら残されていない。
幾度かの紙一重の回避行動の中で、彼女は微かな違和感を捉えていた。近接機動における戦車の動きは極めて単調で、オフィウクスよりも遥かに鈍重であるということを。
あの大口径拳銃の発砲音は鈍い金属の撃発音のみで、ビーム兵器特有の高周波な電磁の鳴動が一切ない――実体弾の証拠だ。
『彼のエネルギー……あの白い光格子の突撃だけにすべて使われているの……?』
大胆な戦術的仮説が、セリアの脳裏で急速に組み上がっていく。
もし、あの剛体突撃の衝撃を正面から相殺するか受け流すことができたなら、戦車は運動エネルギーを失った刹那に短時間の充填空白期に陥る。
その瞬間ならば、ヴィヴィアンの乾坤一擲の狙撃を待たずとも、オフィウクス自身の出力だけで、近距離から一刀のもとに叩き伏せられるはずだ!
セリアの脳内には確かに体系化された戦術データも工学知識も欠けていた。だが、イレーナの血を引く彼女は、生まれながらにして野獣のごとき鋭敏な知覚と超常的な直感を宿していた。
過去の人生において、彼女の直感が嘘をついたことなど一度もない――そして今、研ぎ澄まされた神経が激しく警鐘を鳴らしていた。
『間合いを詰めろ、近接戦に持ち込むんだ!』
射撃戦と超音速巡航がジュリアンの土俵であるならば、刃を交える至近距離へ無理やりにでも引きずり込み、戦車の突進スペースを完全に圧殺するしかない!
近接の間合いをこじ開けるため、セリアは前歯で下唇を強く噛み砕いた。柔らかな唇が裂け、鉄の味を帯びた生温かい鮮血が口内にじわりと広がる。
「動いてよ……動いてぇぇぇッ――!!」
コクピット内で悲痛な絶叫を上げながら、少女は自らの意識を機体の中枢神経系へと深く沈潜させた!
ヴオォォォォンッ――!!
バイオセンサーが突如として血のような真紅の光を放った! 許容量を超えた量子武装の強制駆動――その代償は、常人なら狂気に陥るほどの激痛だった。
セリアの頭蓋を、焼き尽くすほど熱せられた無数の鋼針で抉り回されるような痛打が襲う。
大脳皮質のリソースは物理的限界まで絞り尽くされ、網膜の内側で毛細血管が破裂し、澄んだ青い瞳に痛々しい血走りが浮かび上がった。
神経シグナルが伝達されるたび、まるで煮えたぎる鉄水が脊髄を逆流するかのような激痛が走り、全身の筋肉を硬直させ、冷や汗がインナースーツをびしょ濡れにしていく。
だが、意識を失いかねないその激痛の中で、オフィウクスは戦場を震撼させる共鳴をもって応えた。
カチッ――ガギィンッ!
黒百合のごとく開かれた六弁の自律スカートアーマーから、鈍い金属光沢を帯びた細長い結晶針がそれぞれ三本ずつ射出された――総計十八基の自律量子ユニットが抜き放たれた牙のように甲高い音爆を響かせ、巨大な機体の周囲を高速で旋回し、交錯する。
そして、魂を引き裂くようなセリアの意志に導かれ、十八本の量子長針は虚空において信じがたい精度で展開し、立体的な結合を果たした――
三本を一組とし、それぞれが精密な幾何学トポロジーを形成する。二本の長針が底部で鋭利な「V」字型に開き、第三の長針が幾何学的中心から垂直上方へとリフトアップして空間をロック。
三次元空間において寸分の狂いもなく立体四辺形の力場フレームを組み上げた!
ドォォォォンッ――!!
六組の立体四辺形フレームがオフィウクスの周囲に瞬時に固定され、三方向からの磁気鏡拘束によって完全に閉塞された中空の領域が、微視的空間の臨界点を暴力的に引き裂いた。
ゴォォッ――!
冷徹なエネルギー障壁などではない。高熱のプロミネンスのごとく荒れ狂い渦巻く「緋色の猛火」が虚空から点火され、四辺形の力場を燃え盛る炎の壁へと染め上げた。
それは超臨界縮退プラズマと微小重力拘束場の共振によって生み出された「緋色の炎壁」――
上方の頂針が破浪錐となって正面からのあらゆる物理的運動エネルギーと衝撃波を両側面へと無慈悲に受け流し、内部で猛威を振るう高次元の緋色の焔は、接触した瞬間、襲い来る実体砲弾や金属破片を分子レベルで瞬時に融解・気化せしめる。
神経が焼き切れるような激痛に耐えながら、セリアは口元の血を拭い、血走った青い瞳に決死の光を宿した。
緋色の炎を纏う六面の力場盾を周囲に旋回させ、黒赤の魔神は野太刀を構え、死を恐れぬ獰猛な姿で、迫り来る白き流星の正面へと躍り出た。
[お嬢様もようやく殺す気になってくれたようだね……長々と付き合った甲斐があったというものだ]
通信から響くジュリアンの安堵したような微かな笑みを聞き、セリアは耐え難い皮肉と寒気を感じていた――自分が追い詰められた末にようやく固めた殺意が、あの男にとっては待ち望んでいた救済であったなどと。
[クムのために……世界をめちゃくちゃにして、自分をここまで追い詰めて、そんなことに命をかける価値なんて本当にあるの……?!]
[お嬢様、何か勘違いをしていないかい?]
ジュリアンの口調には、薄い嘲笑と諦観が滲んでいた。
[僕はクムのために動いている。けれどこの盤面の裏では、僕一人が己の執念のために戦っているわけじゃないんだよ]
セリアの心臓が跳ね、操縦桿を握る指先に力が籠もる。特務貴族の捨て駒に過ぎないジュリアンの立場で、これほど大規模な知性機械の蜂起を煽り、都市全域を巻き込む武装反乱を短期間で引き起こせるはずがない。
答えは明白だった――この動乱の背後にはさらに強大な巨頭が糸を引いている。すべてを黙認し護衛隊を引き揚げさせた母イレーナ、そして後方で必死に戦況を繋ぎ止めているカレナ。
誰もがこの炎の中で自らの目的のために動き、誰もが血を流して己の正義を貫こうとしている。
[君には想像もつかないだろうね。君を生かすために、カレナとイレーナがどれほど無惨な代価を払い続けてきたか……]
荒れ狂う突風とエンジンの咆哮の中、ジュリアンの声が冷徹に響く。
[僕がクムを陽の当たる場所へ立たせるために喜んで命を捨てるように……彼女たちもまた、君のために魂と運命のすべてを賭け金として差し出してきたんだ]
[最初から何一つ教えてくれないくせに、私に分かるわけないじゃないッ!!]
抑え込んでいた悲痛、怒り、そして窒息するような無力感が火山のように爆発し、セリアは通信スクリーンへ向けて叫んだ。その瞳から涙と血が滲む。
誰もが彼女を壊れやすいガラス細工のように扱い、勝手に未来を敷き詰め、残酷な現実を温室の外へ締め出してきた。
だが、そんなあてがわれた運命を自分が望んでいるのかどうか、この重荷を背負う覚悟があるのかどうかなど、誰も訊いてはくれなかったのだ!
[確かに……君にとっては不条理極まりないことだ]
通信の向こうでジュリアンは一拍沈黙し、その冷酷だった声音は奇跡のように和らぎ、年長者が言い聞かせるような穏やかさを帯びた。
[けれど、いつか未来のどこかで、君はすべての真実を知ることになる。だから今の君は、ただ用意されたシナリオ通りに動いてくれればいい……難しいことじゃないんだよ、セリア]
それはジュリアンが遺した最後の優しさであり、彼自身が演じ切る悲劇の幕引きの合図でもあった。
今この瞬間、星系全土のパブリックネットワークは完全にパンク状態に陥っていた。
数百億を超える人々の視線が、戦場を飛び交う無数のドローンが中継する立体ホログラム映像を通して、この燃え盛る廃墟へと釘付けになっていた。全宇宙の観衆は、星海を揺るがす二つの真実を目撃していたのだ。
第一に、この壊滅的な動乱を引き起こした主犯は暴走した機械ではなく、血肉を持った人間のエージェントであるということ。
第二に、都市の境界で鋼鉄の奔流を一身に押し留め、緋色の炎壁をもって人類最後の防衛線を死守しているのは、神経同調率の限界を突破し、完全な魂と自律意識を発露させた「知性機械」オフィウクスであるということ。
戦車とオフィウクスが激突するたびに上がる火花も、通信回線で交わされる対峙と詰問も、すべてが遅延なく各星系の隅々へと生中継されていた。
ジュリアンは全宇宙の面前で、知性機械に対等な生存権を与えるための自身の理念を余すところなく語り尽くした。
彼は自らの手で反逆者の首に絞首縄をかけ、最も過激な形で、この大博打における唯一の罪人としての立場を確立させたのだ。
[さあ、オフィウクス……今度は君が選ぶ番だ]
ジュリアンの口元に、微かで、しかし昏い笑みが浮かんだ。
彼は最初から少女と刺し違える気など毛頭なかった。
星系を巻き込んだこの大勝負はここまで進み、暴くべき真実も剥ぎ取るべき欺瞞もすべて星網の前に晒された。目的を果たした今、彼はいつでも潔く舞台から降りる準備ができており、セリアと無意味な泥仕合を続ける必要などないのだ。
セリアはいち早くその異常に気づいた――ジュリアンが呼びかけたのはパイロットである自分ではなく、機体そのものの中枢の魂なのだと!
相手の狙いを察知した瞬間、氷水を浴びせられたような戦慄がセリアの背筋を駆け抜け、彼女は操作中枢に向かって悲鳴のような声を張り上げた。
[オフィウクス! あいつの言葉に耳を貸しちゃダメ! 何を言われても聞かないで!!]
泣き叫ぶような必死の制止の声は、暗号化されていないブロードキャスト信号を通じて星網のあらゆる端末へと響き渡った。
全星系の無数の観衆は、一人の人間のパイロットが、自らの搭乗する鋼鉄の巨神を意思を持った生きた人間として扱い、全身全霊で「説得」と「対話」を試みている様を目の当たりにした。
そしてこれこそが……ジュリアンが全宇宙に見せつけたかった光景そのものだった。
もしこれが人間の操縦者による冷徹な撃破命令であったなら、単なる平淡な鎮圧劇に過ぎない。この決断がオフィウクス自身の「本能的な自律意識」から下されてこそ、この知性魔神の魂の重みは全星系に消えない焼き印として刻まれるのだ!
[オフィウクス、君に残された道は二つに一つだ――]
悪魔の囁きのように、ジュリアンの狂気を孕んだ静かな声が天蓋に木霊する。
[もし今ここで僕を殺さなければ、僕が生きてこの廃墟を出た後、エージェントとしての無数の手段を使って、いつか必ずセリアを殺害してみせる]
男は全宇宙が見守る中で、人ならざる機械に向けて最も残酷な二者択一を突きつけた。
[セリアを守るために、今ここで僕を完全に抹殺するのか? それとも僕を見逃し、未来で僕が彼女の命を奪うのを指をくわえて見ているのか? ……さあ、選べ]
剥き出しの死の脅迫がセリアの耳を打ち据え、彼女の思考は真っ白に焼き切れた。
少女が呆然とし、意識が一瞬の空白に囚われたその刹那――
ヴオォォォォンッ――!!
セリアのマニュアル入力を完全に拒絶したオフィウクスの全身の関節が、低く唸りを上げた!
黒赤の魔神は、誰の介入も許さぬ速度で動いた。極限合金で鍛え上げられ、微小重力フィールドを纏ったその左腕が、無敵の漆黒の槍と化して大気を引き裂き、純粋で冷徹な殺意を宿して一直線に突き出された!
ドスゥッ――!!
金属が軋み千切れる悲鳴と高圧パイプの破裂音が夜空に炸裂した! オフィウクスの剛腕は戦車が誇る重装甲の胸部装甲を紙のように貫通し、コクピットの内部へと正確無比に突き刺さった。
紅蓮の炎と硝煙に染まった夜空の下、主を守るため生死を共にする鋼鉄の魔神は、全宇宙の注視を浴びながら、敵機の防壁を素手で粉砕し、反乱軍の首領をその残骸の中から無慈悲に引きずり出した。
ふと、面白いことに気がつきました。
中国語と日本語において、「孤独」という言葉に対する感覚には言語の壁がほとんど存在しないということです。
それと同時に、「この世界には、心から孤独を感じている人が実はたくさんいるのではないだろうか?」と、そんな思いが頭をよぎりました。
この文章を綴っている今、窓の外の夜空は深く沈み、薄暗い街灯の下では無数の虫たちが舞っています。
体はとても疲れているはずなのに、なぜだか今は、うまく眠りにつくことができません。
そんな夜に、私の大好きな林語堂先生の言葉を思い出しました。
「『孤独』という二文字を分解してみると、そこには子供がいて、瓜(果物)があり、小さな犬がいて、蚊や蠅がいる。それだけで、人情味あふれる真夏の夕暮れの路地裏の風景が立ち現れてくる。
幼子は柳の木陰で瓜を掲げ、細犬は路地の奥で蝶を追う。人の世の賑わいには笑い声が満ちているというのに、私の両の鬢にはただ虚しい風が吹き抜けるばかり。子供も果物も犬猫も飛び交う蠅も、確かにそこにあって賑やかだけれど、そのどれもが自分とは何の関係もない。これこそを、孤独と呼ぶのだ。」
もしかすると、この世界には孤独を抱えた人がたくさんいるのかもしれませんね。
どうか皆さんが、それぞれの幸せを見つけられますように。
By. 酣睡 台湾・桃園 03:46 A.M.




