お願いだから、私をそんな目に遭わせないで
夕暮れの暖かな橙色の残光が、繁華街の石畳の通りへと柔らかに降り注ぎ、並んで歩く二人の影を長く引き延ばしていた。
セリアにとって、ジュリアンと二人きりで校外の街を散歩できるこのような安らかな機会は、極めて稀なものであった。
セリアを取り巻く周囲の人間には、どこか常軌を逸した者が多すぎる――あるいはより正確に言えば、ひとたび彼女を前にすると、それまで理性的だった怪物たちが揃いも揃って正常な思考力を喪失してしまうのだ。
それに引き換え、特務の御曹司であるジュリアンは、普段こそ口が悪く野次馬根性たくましいものの、セリアと接する際にはむしろ純粋で気兼ねのない「普通の友人」のように振る舞ってくれる。
ゆえに、家族にすら打ち明けられない胸の奥の苦悩も、彼女はジュリアンに対してならば素直に吐露できることが多かった。
そして、この二人がいまこうして束の間の平穏を享受できているのも、元を正せば三十分前、学食でカレナとルネの間で全校を揺るがす凄惨な暴力沙汰が勃発したからに他ならない。
事の発端は、実に下らぬものであった――セリアが食べきれずに残してしまったカスタードシュークリームの半分を、隣にいたカレナへ手渡そうとした、ただそれだけのこと。
当初、カレナはその美眸を細めて微笑み、内心では珍しく少女らしい胸の高鳴りすら覚えていた。「同じスイーツを分け合う」というこの行為を、まるで初々しい恋人同士が交わす密やかな情趣のように捉えていたのだ。
だが、カレナの胸算用を敏感に察知したルネが、そのような甘い雰囲気を看過するはずがなかった。
あの短気な小野獣は躊躇することすらなく、電光石火の勢いで身を乗り出すや否や、本来カレナのものとなるはずだったシュークリームの半分を強奪し、衆人環視の真ん中で大口を開けて、名門令嬢の体裁など欠片も気にせず丸ごと口の中へねじ込んだのだ!
カレナが顔色を険しくし、怒りに任せて詰め寄ろうとしたその刹那、ルネの凶行はさらにエスカレートした。
彼女は強引に両手でセリアの驚愕に染まる愛らしい顔を挟み込むと、身をかがめて荒々しくも熱烈な口づけを落とし、セリアの唇や歯列の隙間に残っていたクリームと菓子の残滓を、残らず強引に吸い尽くしてしまったのである。
「――ぜーんぶ、私の~」
ルネは艶やかな唇を舌先で舐め、極めて挑発的かつ不遜に言い放った。
この光景は、常に優雅と自制を保ち続けてきたカレナの生涯において、初めて同年代の他者へ対する実質的な殺意を滾らせるに十分であった。
これまで裏で自分の特製プリンをどれほど盗み食いしてきたか知れぬこの野蛮な女が、今度はセリアの食べ残しのシュークリームまでも、このような卑劣な手口で目の前で横取りしたのだ!
冷静に考えれば、これほど理不尽極まる話もない――いまや星間社会の全富のおよそ九割は、実質的にエスペル世家がその掌中に握り締めている。
セリアはイレーナから偏執的なまでの寵愛を受けているものの、イレーナは外部がセリアを早期に暗殺して傀儡の後継者を擁立するのを防ぐため、公には次期当主の座はおそらくルネが引き継ぐだろうと喧伝していた。
目の肥えた者ならば誰しも理解していることだが、セリアの本質は過保護なまでに守られた絶世の「花瓶」に過ぎない――もっとも、その花瓶がひとたび機甲へ乗り込めば、世界を滅ぼしかねないほどの戦慄すべき戦闘力を発揮するという点を除けばだが。
つまり、将来的に社会の富の九割を継承する星間の覇者となるのは、目の前で下品に笑うこの「プリン泥棒」なのだ!
その事実を思い起こすだけで、カレナは怒りのあまり失笑しそうになった。この狂犬は、スイーツを買う端金に困っているとでもいうのか? 彼女はただ、あらゆる手段を用いて自分を激怒させたいだけなのだ!
この学食の騒乱は、ルネによる衆人環視の強奪キスとともに、瞬く間に星網全域へ転載の嵐となって拡散された。
無数のネット民たちは、早くも妄想を逞しくしていた――将来ルネが当主を継いだ暁には、黄金の檻を設えて、あの美しい白髪の令嬢を自らの傍らに永遠に幽閉するのではないか、と。
度重なる屈辱と刺激は、ついにカレナの理性の防壁を完全に決壊させた。
普段は高嶺の花の如き完璧な先輩が、激情に駆られたあまり貴族の気品をかなぐり捨て、猛然と腕を伸ばしてルネの頭頂部の長い髪を一房ひっ掴み、力任せに引き抜こうとしたのだ!
ルネの野性的な戦闘直感が極めて鋭敏に働き、間一髪で首をすくめて回避しなければ、頭頂部は間違いなく無残に禿げ上がっていたことだろう。
かくして、優美な先輩と野性味あふれる妹は、全校生徒と教職員の呆然とした視線の中で、なりふり構わず無様に取っ組み合いを演じる羽目となった。
さらにセリアの度肝を抜いたのは――純粋な素手による近接肉弾戦において、好戦的なルネがまたしても完全に劣勢へと追い込まれたことだった。
幾重もの熾烈なグラウンドの攻防の末、カレナは血の滲むような鍛錬によって培われた技を淀みなく繰り出し、教科書通りの鮮やかな「ブラジリアン柔術・キムラロック」を極めてみせた。
絶対的なテコの原理によってルネの関節は完全に封じられ、ルネがどれほど野獣のような唸り声を上げて暴れ回ろうとも微動だにさせず、無残な姿で床へねじ伏せられたのである。
やがて膠着状態が続く中、知らせを受けて血相を変えて駆けつけた教官デインが、天井を吹き飛ばさんばかりの怒号でこの向こう見ずな生徒二人を一喝し、その場で絶対的な命令を下したのだった。
社会で名を知らぬ者はいない二大名門の令嬢に対し、今すぐ校舎棟全体の公衆便所を一寸の塵もなく磨き上げろ、と。
「まだあのお二人方の茶番劇のことを考えているのですか?」
夕暮れに赤く染まる通りを並んで歩きながら、ジュリアンは私生活において名門貴公子の温文爾雅な仮面を被り続けるつもりなど微塵もなかった。
なにせ、自身とクームとの間にある最も秘匿すべき心の内すら、すでにセリアには知られているのだ。
この白髪の令嬢の前で、今さら取り繕い隠し立てすることなど何一つ残されていなかった。
セリアは無意識に指先を持ち上げ、先ほど強引に奪われたばかりの己の柔らかな唇をそっと撫でながら、胸の奥に澱のように溜まっていた疑問をぽつりと零した。
「……ジュリアン、普通さ、血の繋がった姉妹って……直接唇にキスしたりするものなの?」
「するわけないでしょう。頭でも湧いたのですか?」
ジュリアンの容赦のない、いっそ清々しいほどの呆れを含んだ突っ込みに、セリアは一瞬虚を突かれたように目を丸くし、次いで思わず小さく吹き出しながら、諦めにも似た安堵の笑みを浮かべた。
そうだ。ルネの自分に対する感情など、疾うの昔に歪み切ってしまっている。
けれど……それが一体なんだというのだろう?
かつてのルネは傲慢な気性を盾に自分を苛めてばかりいたが、思えば今の暮らしは、想像していたよりもずっと穏やかで満たされている。
それどころか、長い共同生活の手探りの中で、セリアは奇妙な「猛獣の宥め方」を見出しつつあった――ルネとイレーナが求めてくる一定のスキンシップを定期的に満たしてやりさえすれば、あの暴走しがちな二頭の野獣は信じられないほど従順になるのだ。
名目上は「欲望」と呼ぶものの、あの母娘が求めているものは至極単純で、他愛のないものであった。要するに、抱擁と口づけに過ぎない。
ただ、ルネという奴は常に強烈な侵略性を剥き出しにして、隙あらばセリアの唇を奪おうとするのに対し、生母であるイレーナの方は遥かに自制が効いており、大抵はセリアの頬や首筋へ優しく唇を寄せるに留めていた。
そう比較してみれば、イレーナの方がルネよりも余程まともに見えてしまう。
自分から進んで抱擁をねだるようになって以来、イレーナは折に触れて彼女を壊れ物のように大切に胸へ抱き寄せ、数分間静かに抱きしめると、満足したようにあっさりと自由にしてくれるようになった。
そのあまりにあっけない満たされ方を見るにつけ、セリアはふと悟ったのだ――母が心の奥底で真に渇望していたものは決して多くはなく、かつての病的なまでの支配欲すら、この寄り添う日々の中で少しずつ癒やされつつあるのではないか、と。
つまるところ、今セリアの頭を悩ませている真の難問は、もはやイレーナではなく、日増しに野蛮さを増すルネ、部屋の中に無数の秘密を隠し持つカレナ先輩、そして今日突如として雛鳥のように懐いてきたヴィヴィアンの方であった。
「ところで……」
セリアは口元の微かな笑みを収め、隣を歩く青年の横顔を見つめながら、ずっと胸の底に押し殺してきた重苦しい問いを投げかけた。
「あなたにとって……世間に決して許されない禁忌の恋に向き合うことは、少しも……怖くないの?」
自分とカレナの関係ならばまだ世の常識の範疇に収まるが、ルネとの間に横たわる血の枷は、どれほど足掻こうと越えられない心理的障壁であった。
同じように愛してはならぬ存在を、星間社会から異端と断じられる者を愛してしまったジュリアンは、一体いかなる心情でその日々を耐え忍んでいるのだろうか。
隣を歩いていたジュリアンの足が、微かに止まった。
夕陽の落とす陰影の中で、彼の顔に張り付いていたいつもの人を食ったような薄笑いが、潮が引くように冷たく静まり返っていく。
いつも眇められていた瞳の奥底に、祈りにも似た絶対的な静謐が浮かび上がった。
彼は振り返り、セリアの瞳を真っ直ぐに見据えながら、他人の身の上話を語るかのように淡々とした声音を紡いだ。
「もし僕が……クムのためにこの命を完全に投げ打つつもりだと言ったら?」
「……え?」
「僕自身の死を重厚な礎とし、全星間の人類が見守る前で、知性体機械もまた人類を守護する崇高な一面を宿しているのだと証明してみせる――たとえその代償が、僕の肉体が粉微塵に砕け散ることだとしても、僕は決して躊躇いません」
セリアは、目の前にある静まり返った青年の顔を凝視した。
その瞬間、彼女にはこれが特務の御曹司による悪趣味な冗談なのか、それとも彼の魂の深奥に刻まれた本物の青写真なのか、判別がつかなくなっていた。
「……それが、最初からあなたが企てていた結末なの?」
セリアの呼吸がかすかに詰まった。
彼女の頭脳は猛烈な速度でその背後にある論理を構築しようとしたが、彼女の感情と本能は、その恐るべき推論を認めることを激しく拒絶していた――
誰もが私欲と権力に狂い、一歩先すら闇に閉ざされたこの世界において、彼女が唯一心を開き、対等な親友と呼べるジュリアンだけは、このような凄惨な自滅の道を歩んでほしくなどなかったのだ。
「もし僕が……今日まで隠し続けてきた真の計画が、社会全土を巻き込む武装叛乱の手綱を自ら引くことだと言ったら?」
夕闇が濃さを増す薄暮の中で、ジュリアンの声は異様なほど透明に響いた。明日の天気を語るかのように、どこまでも平然としていた。
「僕は叛乱軍の首魁としてあなたへ出撃を強要し、全星間の衆目の中で、オフィウクスが独自の魂と自己思考能力を有しているという秘密を白日の下に晒します――そして最後の瞬間に、オフィウクスへ二者択一を迫るのです」
「……オフィウクスに、何を迫るつもりなの?」
セリアの胸は、見えない巨大な鉄塊で押し潰されたかのように重く軋み、呼吸の一つ一つが苦痛を伴うほどに重苦しくなった。
彼女は肌で感じ取っていた。
目の前のジュリアンは戯れ言を言っているのではない。本気配なのだ。
彼は己の命、名誉、未来のすべてを、この狂気の賭場へ賭け金として投げ打つつもりなのだ。
「星網全域の死角なき完全生中継の最中、僕は億兆の人類を前にして、この手でお前の命を奪うと宣言するでしょう」
ジュリアンはセリアを見つめていた。普段の軽薄さと狡猾さを湛えていたその双眸は、いまや底なしの淀んだ死水のように、波紋一つ立たず、一片の揺らぎも宿していなかった。
「もしオフィウクスが僕を殺そうとしなければ、僕は叛乱の首領として本当にあなたの命を奪う。そして、もしオフィウクスがあなたを護るために僕を斬り伏せたならば……全宇宙の人類は目の当たりにすることになるのです――自我に目覚めた知性機械の魔神が、人類を護護せんとするがゆえに、自らの主の無二の親友を断頭台へと送らざるを得なかった、その痛ましき光景をね」
その冷徹極まりない決死の覚悟は、肌を刺す実体的な冷気となって立ち込め、セリアの全身へ未曾有の恐怖を植え付けた。
「……本気で言ってるの?」
セリアの本能は、その現実を狂おしいほどに拒絶していた。
いっそこれが、特務の青年による悪質な試し行動であってほしい。心を許し、背中を預けられる唯一の友が、最初から自らのためにこのような破滅の死地を選び取っていたなどと、信じたくはなかった。
少女の瞳にみるみる涙が滲み、震える足取りで歩み寄ると、細い指先でジュリアンの制服の裾をぎゅっと、引きちぎらんばかりに握り締めた。その声音は完全に泣き声へと変わっていた。
「そんな風に私を扱わないで……お願いだから……ねえ……」
病的な独占欲と権力闘争が渦巻くこの世界で、彼女は母の偏執に縛られ、妹の野性に脅かされ、先輩の物陰からの視線に包囲されてきた。
だが、それらがどれほど重く理不尽であろうと、所詮は人間関係の愛憎劇の範疇に過ぎない。
けれど、ジュリアンだけは違ったのだ。
彼は、セリアが対等に言葉を交わし、「普通の友人」と呼べる唯一の拠り所だった。
その最も信頼する者が、これほどまでに残酷で引き裂かれるような手段で自分を運命の奈落へと引きずり込み、その魂へ永遠に消えぬ罪の烙印を焼き付けようとしているなど、到底受け入れられるはずがなかった。
「あなた、先ほど僕に尋ねましたね。禁忌の恋に向き合うとはどういうことなのかと」
ジュリアンの声音は極めて微かで、どこまでも優しかった。
彼はゆっくりと、抑制の効いた動作で両腕を伸ばし、目の前で激しく震える白髪の少女をそっとその胸の中へと抱き寄せた。
それは、彼が生涯で初めて自発的に女性を抱擁した瞬間であった。
彼の胸中には、男女の情愛など欠片も存在しなかった。彼の心は疾うの昔に、遥か遠き地にいるクームへと残さず捧げ尽くされていたのだから。
いまジュリアンの胸を満たしていたのは、純粋で重苦しい罪悪感と、自らの手でこの穢れなき存在を破壊しようとしていることに対する激しい胸の痛みだけであった。
彼は誰よりも理解していたのだ。この狂気の計画が始動した時、それがセリアの心へどれほど不可逆な致命傷を負わせるかを。
「そんな風に私を巻き込まないでよ……」
セリアはジュリアンの胸元へ顔を埋め、溺れる者が最後の藁に縋るかのように、溢れ出る熱い涙を残さず青年の冷たい制服へ擦り付けた。
ジュリアンは何も語らず、ただ彼女の涙が己の衣類を濡らしていくのを黙って受け止めていた。
このガラスのように澄み渡った少女を欺きたくはなかった。しかし、冷徹な真実はいつだって優しい嘘よりも遥かに残酷なものなのだ。
……なぜ、ここまでの惨劇を演じねばならないのか?
それは、人類というものが途方もなく傲慢で、救いようのないほど頑迷な生物だからだ。
世俗の倫理はいつだって白黒二元論に囚われている。人類こそが絶対の正義であり、知性機械は生まれながらの異端にして原罪である、と。
その根深く刻まれた差別と恐怖は、理知的な説得などでは爪の先ほども揺るぎはしない。
この強固な認識の壁を打ち破るには、最も極限的な劇薬たる悲劇を以てする他ないのだ――
人類の陣営から狂気の虐殺者が現れ、対する知性機械が罪を断ち切り民を救う救世主となった時、旧時代の絶対律は初めて粉々に砕け散る。
人類は己を賢者と錯覚しながら、その実、自らの偏見を捨てて異端を受け入れるためには、いつだって血と悲劇に塗れた「英雄譚」を必要とするのだ。
クームのために、そして全ての知性機械が生きる路を切り拓くために、ジュリアンはとうに自らを捧げ物とする覚悟を完了させていた。
ただ一つ、彼の胸を切り裂くように苦しめていたのは、セリアというこの無垢な少女を、己の手でこの血塗られた盤上へと引きずり込まねばならないという事実だけであった。
夕陽が地平線の彼方へと完全に沈み落ちた黄昏の中で、少女の断続的な嗚咽が、人気のない通りに静かに木霊していた。
ジュリアンはありったけの力を込めて両腕を締め、胸の中で震え続ける少女を強く抱きしめた。
「ごめんね、セリア」
彼は少女の耳元で小さく囁いた。その声音には、果てしない嘆息と悲痛が滲んでいた。
「いつの日か……僕たちの心が、互いを理解できる日が来るかもしれない」
ジュリアンは知っていた。いまのセリアに、この窒息するほどに重い覚悟を受け入れることなどできはしないと。ゆえに彼にできることといえば、この束の間の、無力な抱擁を差し伸べることくらいしかなかった。
できることならば、彼だってこの無垢で愛らしい少女の行く末をもう少し長く見守り、彼女が真の幸福を掴み取るその日を見届けていたかった。
だが無情にも、運命の歯車が一度回り始めてしまえば、それを押し止める術を持つ者など、この宇宙のどこにも存在しないのだ。
ジュリアンにとって、この命は疾うの昔、あの絶望の淵においてクームに救われた時から彼女のものだった。
借りた命であるならば、来るべき日に利子をつけて返済することこそが、彼にとって至極当然の宿命であった。
そしてもう一方において、セリアがあの日、抗えぬ力に流されるままオフィウクスのコックピットへ足を踏み入れた瞬間、彼女の人生の軌道もまた平穏から完全に引き剥がされ、後戻りのできぬ巨変へと呑み込まれていたのだ。
これこそが、運命の最も冷酷で、決して覆すことのできぬ理であった。
この残酷で凍てつく星海に生を受けた矮小な人間など、ただ押し寄せる時代の奔流に押し流されることしか叶わない。
たとえ今、ジュリアンが腕の中で震え泣く少女をどれほど不憫に思おうとも、彼が愛するクームには、無辺の暗闇に怯える全ての知性体たちには、堂々と胸を張って生きるための陽光が必要なのだ。
二つの願いの間で、彼にはもう退路など残されていなかった。
ゆえにジュリアンは、このあまりに残酷な告白という形で、セリアへ自らの最も苛烈で揺るぎなき意志を突きつけるしかなかった。
退くことも、妥協することもできない。
彼はただ、この血の滴るような覚悟を沈みゆく夕陽の下に晒し、彼女へ最後の温もりを手渡しながら、声なき祈りを捧げることしかできなかった――己が唯一無二と認めたこの親友が、いつの日か、自分が選び取ったこの不帰の路を赦し、受け入れてくれることを。
これからのあとがきでは、読者の皆さんとちょっとした雑談でもできたらいいな〜なんて思っています!
日々の生活で見聞きしたこととかね。
やっぱり日本と台湾って、考え方に結構ギャップがあるじゃないですか?
例えば職場でうっかり上司の地雷を踏んじゃった時なんか、台湾だと日本ほど大惨事にはならない……気がするんですよね(笑)。
実は今日、上司が会社にお子さんを連れてきていたんです。
息子の顔をチラッと見て、ついノリで「息子さん、めっちゃイケメンですね!」って声をかけちゃったんですよ。
そしたら上司から、氷のように冷た〜い声で「君もそう思うんだ?」って返されまして……。
その瞬間、周りの同僚たちが一斉に「うわ、こいつマジで空気読めねぇ(KY)……」って顔でこっちを見てて。
後から知ったんですが、どうやらその息子さんの出自には、ちょっと人前では触れちゃいけない深い事情があったらしく……。
マジでリアルにボコボコにされるかと思いました(白目)。




