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忘れられたオフィウクス  作者: 酣睡


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求め得ぬ抱擁と、あまりに贅沢な悩み

清潔で整然とした、午後の柔らかな陽光が降り注ぐ学食の中で、セリアは窓際のベンチシートに腰掛け、まるで精巧なフランス人形のような小柄な少女をその腕に抱き留めていた。


いま、この白髪の令嬢は、途方もなく混沌とした居心地の悪さに苛まれていた。


まさかヴィヴィアンというこの少女が、乗り物に乗ると豹変する「ロードレイジ」そのままの二重人格者であろうとは、夢にも思わなかったのだ――


普段は恐る恐るとして気弱極まりないのに、機械兵装のコックピットに腰を据えるや否や、血に飢えた狂暴な女戦神へと変貌を遂げる。そして戦闘が終わり、機体を降りるや否や、瞬く間に元の泣き虫へと逆戻りしてしまう。


セリアは泣き疲れて己の胸元に顔を埋め、いまだしゃくり上げているヴィヴィアンを優しく抱きかかえながら、呆然と窓の外を眺めていた。


情報端末を開くまでもなく容易に想像がつく。


この「白日の下で可憐な幼女を抱擁する令嬢」という耽美極まる光景は、今頃学内フォーラムや星網(ネット)上で、新たな百合創作の狂乱の嵐を巻き起こしているに違いなかった。


「どうやら、お嬢様を狙う求婚者のリストに、本日また一人強力なエントリーが追加されたようですね」


向かいの席でアイスドリンクのグラスを揺らしながら、ジュリアンが野次馬根性丸出しのからかいの笑みを浮かべていた。


連邦最高峰の情報網を牛耳る特務の御曹司である彼は、ヴィヴィアンが今セリアに対して抱いている、畏怖と愛着と憧憬が入り混じった複雑な執着を、誰よりも正確に理解していた。


「まるで私が好きでやってるみたいに言わないで……」


セリアは不機嫌そうに雪白の頬を膨らませ、そっぽを向いて視線を逸らした。


「まあまあ、お嬢様、今は優しくあやして差し上げてくださいよ」


ジュリアンはどこか楽しげに、決定的な事実を突きつけた。


「なにせ彼女はとっくに両親を亡くした身の上。その上、お嬢様は先ほど全校生徒の目の前で、彼女の両親が遺した唯一の形見である【ウォッチャー】を、完膚なきまでにスクラップへと解体してしまわれたのですから……どう言いつくろおうと、その罪の重さは少々ばかり洒落になりませんよ」


「……っ?!」


その言葉を聞いた瞬間、セリアの美貌は一気に青ざめた!


彼女は愕然として腕の中の小さな塊を見下ろし、内心で激しい動揺に襲われた――あの機械兵装、あの子の両親の形見だったの?! オフィウクスが先ほど披露したあの残虐極まる「機械の生体解剖」は、この子の心の拠り所を木っ端微塵に踏み躙ったも同然ではないか!


隣にいたカレナとルネも、当初は嫉妬と警戒心を露わにしていたが、「孤児の両親の遺品を素手で引き裂いた」という事実を耳にするや否や、気まずそうに視線を泳がせ、セリアの胸に縮こまる哀れな少女をそれ以上責める言葉を失ってしまった。


ヴィヴィアンはふわふわとした桜色の頭をさらに深く埋め込み、小さく冷たい鼻先でセリアの白く細い首筋を甘えるように擦り寄せた。その温かな吐息がくすぐったく、セリアの首元を微かに震わせる。


だが、首筋のくすぐったさ以上にセリアを驚かせたのは、腕の中に収まるこの子のサイズ感であった――抱き上げた重量感は綿毛のように軽く、身長は一メートル十センチにも満たないように見える。


このような幼い存在が、本当に「大学生」などと呼べるのだろうか?


「カレナ、一般的な進学制度において、優秀な成績を収めた小学生が飛び級した場合……最高でどこまで一気に進級できるものなのですか?」


セリアは、常に博識で聡明なカレナへと疑問を投げかけた。天才たちが集うこの世界において、飛び級自体は決して珍しいことではない。


もっとも、全科目満点を叩き出し続けるカレナがなぜ連続飛び級を選ばず、頑なに自分の一学年上という位置に留まり、まるで学校で自分の入学を待ち構えていたかのような進路を取ったのかは謎であったが――もちろん、事実としてセリアのその直感は完全に正鵠を射ていた。


「常識的に考えれば、この年齢の子供が大学のキャンパスにいること自体、あり得ないことではあるのだけれどね」


カレナは優雅に身を乗り出し、セリアの腕の中にいる桃髪の少女を細い双眸でじっくりと観察した。


いまのヴィヴィアンは、まるで柔らかく膨らんだピンク色のマシュマロのようであり、上気した小さな頬に大粒の涙を浮かべたその庇護欲をそそる姿には、普段は最も気性の荒いルネですら、すっかり毒気を抜かれてしまっていた。


ルネは以前の実戦演習でヴィヴィアンと交戦した経験があった。当時、多勢に無勢の包囲網に遭い、最終的にヴィヴィアンの放った正確無比で陰湿なミサイルの一撃によって撃墜されたため、彼女はこの対戦相手を深く記憶に刻み込んでいたのだ。


しかし、かつて通信越しに自分を灰燼に帰すと咆哮していたあの狂暴な戦闘狂が、私生活においてはこれほどまでに幼く小柄な泣き虫であったとは、ルネも夢にも思わなかったのである。


「彼女は正真正銘の飛び級生ですが、実年齢はもう立派に十六歳を迎えていますよ」


ジュリアンが機密ファイルから得た情報を、笑みを浮かべながら明かした。


甘えん坊の子猫のようにセリアの胸にしがみついて離れようとしないヴィヴィアンを見つめ、さらには一見淑やかに振る舞いながらも瞳の奥に冷徹な光を宿すカレナの機微を察して、ジュリアンの口元の笑みは一層深くなった。


もしもこの戦闘力お化けのピンクの小悪魔が、このままセリアの金魚のフンとして定着してしまえば、これからのエスペル邸とキャンパスライフは、より一層賑やかで混沌を極めるに違いなかった。


「何はともあれ、お嬢様、当面の間は彼女の面倒をしっかり見てあげてください。莫大な世家の遺産と忠実な従僕たちがついていますから生活の心配は無用ですが、あなたが【ウォッチャー】を修復不能な鉄屑に変えてしまったのもまた、動かしようのない事実ですからね」


ジュリアンの淡々とした指摘に、セリアは恥ずかしさのあまり地面に穴を掘って潜り込みたい衝動に駆られた。


通常の学内模擬戦であれば、双方が節度を守り、最低限の礼節を保つのが暗黙の了解である。


それなのに、自分は前回の実戦審査でラグナの【ハングドマン】を素手で引き裂いたばかりか、今日は全校生徒の面前で他人の両親の唯一の形見を無残に踏み砕いてしまったのだ……良心の呵責に苛まれ、反論の言葉など見つかるはずもなかった。


「私が悪かったのは分かってるわよ……で、でも……ずっとこうして抱っこしたままってわけにはいかないでしょう……?」


セリアは腕の中の柔らかなマシュマロを見下ろし、泣きたいような表情を浮かべた。


ただでさえ自分を取り巻く突拍子もないスキャンダルや百合小説は山のように積み上がっており、彼女自身、それらの風評被害には諦めとともに慣れつつあった。


だが、明日の星網のトップニュースが「エスペル家の令嬢、未婚のまま隠し子発覚・学食にて衆人環視の授乳劇」などという見出しになってしまえば、その視覚的・社会的名誉への打撃はあまりにも前衛的かつ破滅的すぎる!


セリアが自分を引き剥がそうとしている気配を察知したのか、胸元で小さく震えていた幼子は、無意識のうちに細い両腕にぎゅっと力を込め、まるでタコのようにセリアの白く細い首と腰へとしがみついて離れなくなった。


「……えっ? な、何なのこれ?!」


セリアはその美しい蒼穹の瞳を丸く見開き、全身を硬直させた――どう見ても、完全に強引な居座りを決め込まれてしまっているではないか。


しかも、このように何かに縋り付いて離れまいとする姿に、セリアは言い知れぬ強烈な既視感を覚えていた。


かつて街角を彷徨っていた幼い頃の自分が、母イレーナのドレスの裾を、卑屈で飢えたように必死で握りしめていたあの姿と、あまりにも酷似していたのだ。


だが問題なのは……イレーナは紛れもなく自分を産み落とした実の母親だが、腕の中にいるこの桃髪のロリは、断じて自分が産んだ娘ではないということだ!


セリアがどうやってこの強力なトリモチを引き剥がすべきか途方に暮れていたその時、極めて小さく、まるで子猫の喉鳴らしのような規則正しい寝息が、そっと彼女の耳朶を打った。


「……寝ちゃったの?」


セリアはあまりの理不尽さに呆然とし、向かいのカレナとルネも開いた口が塞がらない様子で見つめ合っていた。


さっきまでリングの上で他機を解体せんと絶叫していた小娘が、泣き始めてから数分も経たぬうちに、どうしてこれほどあっさりと眠りに落ちてしまうのか。


「いやはや、天才と呼ばれる人種には往々にして常人離れした奇癖があるものです。感情の起伏が極端に速く、行動原理が突飛なのも至極当然――それこそ、カレナの部屋のようにね」


「カレナの部屋……?」


セリアは目を瞬かせ、無垢にその言葉を繰り返した。


「パァァァンッ――!!!」


乾いた平手打ちの音が、学食の片隅の静寂を一瞬にして切り裂いた。


見れば、普段は優雅なカレナが氷のように冷たい無表情を浮かべ、何の躊躇もなくジュリアンの整った横顔へ強烈なビンタを叩き込んでいた。


特務の御曹司は首を真横に弾き飛ばされたが、赤く腫れ上がった頬を黙ってさすり、それ以上の追及を避けるように賢明に口を閉ざした。


実のところ、カレナのあの格式高く洗練された私室の奥底には、幼少期から現在に至るまでのセリアの隠し撮り写真が所狭しと貼り巡らされており、彼女がかつて使用し、手放した私物の数々が厳重にコレクションされていた。


その秘密の壁には、セリアが小学生の頃からカレナの背中を密かに見上げ、瞳で追い、大学に至るまでひっそりと追随してきたあらゆる痕跡が克明に記録されていたのだ。


幼いセリア自身は、毎回誰にも悟られぬよう完璧に尾行しているつもりでいた。


しかし天才であるカレナは、そのすべてをあらかじめ完璧に逆算し、約束された定位置に先回りして立ち、あの恐る恐る後を追ってくる小さな影を、優しく、狂おしいほどの忍耐をもって待ち続けていたのである。


ジュリアンは、カレナがセリアに対して抱くその病的なまでに深淵な執着を、最初から完全に把握していた。


ただその当時は、二大世家の内部抗争と権謀術数の嵐があまりに苛烈を極めており、カレナは生き残るための冷徹な権力闘争に全霊を注がざるを得ず、色恋沙汰に現を抜かす余裕など微塵も存在しなかったのだ。


だが、彼女が泥沼の障害をすべて排除し、後継者としての絶対的地位を確立して振り返った時……セリアの周囲にはすでに狂暴なルネが寄り添い、狂気の生母イレーナが立ちはだかり、彼女自身、決定的な先制攻撃の機会を永遠に失ってしまっていた。


もちろん、あの壁に飾られた極めてアングルの際どい高解像度の隠し撮り写真の大部分は、ジュリアンが裏で密かに撮影し、カレナへと高値で売り捌いた特注品であった。


ゆえに、あまりに純粋なセリアは今日に至るまで、あの高嶺の花の如き完璧な先輩が、己に対してどれほど歪で巨大な執念を滾らせているのか、何一つ知る由もなかったのである。


腕の中の小さな存在が完全に熟睡したことを確かめた後も、セリアは全身を強張らせたままベンチに座り込み、この「ピンクのコアラ」をどう扱うべきか完全に途方に暮れていた。


幸いにも、少し離れた場所で恭しく控えていた初老の老執事が静かに歩み寄り、深々と頭を下げて合図を送ると、セリアの腕から眠りこけるヴィヴィアンを慎重に抱き起こし、立ち往生していた白髪の令嬢を救い出してくれた。


「エスペル家の大小姐、我が主が大変なご無礼とご迷惑をおかけいたしましたことを、心よりお詫び申し上げます」


老執事はヴィヴィアンを腕の中にしっかりと抱き留めた。その手つきは熟練しており、表情には深い謝意と恐縮が滲んでいた。


「滅相もありません……先ほどの模擬戦で加減を誤り、貴家の掛け替えのない機体を損壊してしまったのは私の方です」


セリアは小さく首を横に振り、自らの暴挙を弁解するような素振りは微塵も見せなかった。


ただ、老執事の腕の中でもなお不安そうに服の裾を握りしめている少女を見つめ、セリアは胸に去来した疑問を口にせずにはいられなかった。


「あの……ヴィヴィアンさんは、普段からこのような性格なのですか? その……初対面の相手に、これほど無防備に甘えるような……?」


「いいえ、決してそのようなことはございません、エスペルのお嬢様」


老執事は微かに目を見張り、次いで苦笑混じりに息を吐くと、穏やかな声音で真実を語り始めた。


「お嬢様は普段、他人に対して極めて排他的かつ警戒心を露わにされます。本日これほど取り乱してしまわれましたのは……偏に、あなた様から漂う佇まいが、亡くなられた奥様にあまりにも酷似していたからに他なりません」


老執事の静かな語り口を通じて、セリアの脳裏に、疾うに世を去った名門の女主人の輪郭が浮かび上がった。


生前の彼女は、この上なく優美で心優しい若い女性であったという。ヴィヴィアンの厳格で威厳に満ちた父親とは相当の年の差があったものの、その年齢差を越えた夫婦仲は非常に睦まじいものであった。


その高貴な夫人は、世家の貴婦人らしい奢侈な暮らしに身を窶すことを好まず、辺境の立ち遅れた星区や平民の居住区へと進んで赴いては無償で教育を施し、貧しい子供たちへ惜しみなく知識と希望を与え続けた、誰もが聖母と仰ぐ美しい教師であったのだ。


その魂の奥底から滲み出る純粋な優しさ、そして一挙手一投足に宿るどこか胸を締め付けられるような「儚さ」……それらが今、目の前に座るセリアの姿と、奇跡的なまでに重なり合っていた。


だからこそ、先ほど戦場のコックピットから放り出され、精神の極限状態で恐怖に震えていたヴィヴィアンは、オフィウクスから降りてきたセリアの姿を目にした刹那、本能に突き動かされるまま「お母様」と泣き叫び、なりふり構わずその胸へと飛び込んでしまったのだ。


「……そうだったのですね」


セリアは物思いに沈みながら、小さく呟いた。


思えば、先ほど全校生徒の白日の下で「胸に飛び込んで母と呼ぶ」という珍事を巻き起こしたにもかかわらず、シシリス大学はおろか星網の全域において、「エスペル家の令嬢が未婚の母に」などという不埒な噂を書き立てるメディアや野次馬は奇跡的なまでに存在しなかった。


当然である……気に入らない者をいつでも街灯に「物理的に吊るし上げる」暴君の如き生母イレーナの存在を思えば、命が惜しい者ならば誰一人としてそのような妄言を口にできるはずがなかった。


しかし、執事の腕の中で雛鳥のように温もりを求めて眠るヴィヴィアンを見つめるうちに、セリアの心の琴線は深く揺さぶられていた。


彼女は幼い日々の記憶を手繰り寄せる。幾重もの孤独な街角で、自分もまた今のヴィヴィアンのように、母の姿ばかりを目で追い、怯えながらも狂おしいほどにイレーナの抱擁と眼差しを渇望していたのではなかったか。


成長した今、イレーナから向けられる愛は息が詰まるほどに歪で偏執的なものへと変貌してしまったが、胸に手を当ててみれば……その重すぎる独占欲を除けば、あの傲岸不遜な女はあらゆる意味において、自分へ最高峰の庇護と偏愛を注ぎ続けてくれていたのだ。


老執事がヴィヴィアンを抱きかかえて去っていく後ろ姿を見送りながら、セリアの胸の奥に、かつてない切なさと感慨が込み上げてきた――


あの誇り高く、巨大な一族の生殺与奪の権を一人で握り続けていたイレーナが、毎日泣いて母を求め、小さな荷物のように足元に縋り付いて離れなかった幼い日の自分と向き合っていた時……


誰の目にも触れぬ孤独な深夜の中で、母もまた……どれほど心身をすり減らし、過酷な疲弊に耐えていたのだろうか、と。


「あの子の中に……かつての自分の影を見ましたか?」

ジュリアンから、先ほどまでの不真面目で人を食ったような冷やかしの気配が綺麗に消え失せていた。少女の胸に広がった波紋をいたわるように、その声音は極めて静かで、どこまでも優しかった。


「……少しだけね」


セリアは伏し目がちに長い睫毛を落とし、どこか寂しげにうつむいた。


「ただ……私、最初から今まで、母の気持ちなんて何一つ理解できていなかったんじゃないかって、そう思えてしまって」


亡き母を偲ぶヴィヴィアンの姿を前に、セリアはいま、権力と偏執の鎧に覆われたイレーナの真意を少しでも知りたいと願っていた。けれど近づこうとするたびに、二人の間に横たわる溝の深さと冷たさに阻まれてしまうのだ。


「彼女はきっと……あなたに自分を『理解』してほしいなどと、最初から望んでいませんよ」


ジュリアンは窓から差し込む陽光に目を細め、静謐で、どこか物悲しい感情を滲ませながら紡いだ。


「もしあなたが彼女を完全に理解してしまえば、かつて一族の利権と冷徹な権力闘争のために、幼く脆いあなたを切り捨てたという残酷な現実を、あなた自身の手で確定させてしまうことになる……そんな痛ましく重い理解を求めるくらいなら、毎日少しでも時間を作って、屋敷に帰って彼女のそばにいてあげることですよ」


ジュリアンの口から紡がれた思いがけない温もりと感性に、セリアは息を呑み、胸の奥を強く突かれたような衝撃を覚えた。


彼女は唐突に悟ったのだ――ジュリアンがこのような言葉を口にしたのは、彼自身が心から愛するクームとの間に、決して越えられない陣営の壁と特務としての過酷な足枷を抱え、どれほど胸が張り裂けそうになろうとも、気ままに逢瀬を重ねることすら許されない境遇にあるからなのだと。


それに引き換え、今のイレーナは、十数年に及ぶ後悔と焦燥の果てに、ようやく愛娘をその翼の下に匿う権利を勝ち取ったのだ。


両者が置かれた現実の隔たりは、あまりにも途方もなかった。


見渡してみれば――


ヴィヴィアンは最愛の両親を永遠に奪われ、どれほど泣き濡れようとも、二度と母の温もりに触れることは叶わない。


ジュリアンは重い宿命の鎖に縛られ、想い人と目を合わせることすら命懸けの冒険となってしまう。


隣で凶暴そうに不貞腐れているルネですら、生まれながらにして冷酷な契約に縛られ、「エスペルを継ぐ刃」として生きることを義務付けられている。


それらに比べれば……今自分が直面している「過剰なまでの偏執的な愛に包まれている」という贅沢な苦悩は、この冷酷無比な星間時代において、奇跡と呼ぶほかないほどの幸運と幸福に満ち溢れていた。


「お嬢様が今抱えておられるそのお悩みは、僕にとっては……喉から手が出るほど羨ましい、あまりに贅沢な代物ですよ」


ジュリアンの唇の端に、極めて微かで淡い自嘲の笑みが浮かんだ。だがその双眸の奥には、「思慕」という名の濃密な情念が静かに渦巻いていた。


「ですが誤解なさらないでください。僕はお嬢様の今の葛藤や苦しみを否定するつもりなど毛頭ありません……ただ時折、あなたを見つめていると、僕も思わず願ってしまうのですよ――いつの日か僕も、あなたのような悩みを抱えられる身分になれたなら、どれほど幸福だろうか、とね」

最近、心臓の調子があまり良くなくて。

昨夜も痛みのせいでなかなか眠れませんでした。

この作品を最後まで書き終えられるのか、本当に不安になってしまいますね。

自分で生み出したこの愛しい娘――セリアのそばに、少しでも長く寄り添っていけたらいいな(笑)

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