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忘れられたオフィウクス  作者: 酣睡


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黒貴婦の初陣、一刀一殺

重厚なハッチが鈍い呻き声を上げて完全に噛み合い、外界の硝煙と喧騒は一瞬にして冷徹な装甲の彼方へと遮断された。


狭隘で圧迫感に満ちたコクピット内は、まず数秒間の息の詰まるような完全な暗黒に包まれる。


直後、内壁を覆う円環状マルチスペクトルの全方位投影壁が、深海の巨獣が瞳を開くが如く、幽玄なるエメラルドグリーンの冷光を無音で灯した。


何百もの半透明ホログラムウィンドウがセリアの眼前に滝の如く狂乱して流れ落ち、太古の難解な基幹コードが神経生体反応装置バイオフィードバック・システムの唸りと共に網膜の上で巨大な光の網を紡ぎ出していく。


正規軍の量産機に見られる無機質な矩形メーターとは異なり、オフィウクスのコンソールは妖艶にして優美な流線形の弧を描いていた。メインスクリーンの中央に鎮座するのは定型の自己診断レーダーではなく、セリアの呼吸のリズムに合わせて微かに脈動する二重螺旋の神経パルス波形。


【BIO-FEEDBACK SYNC: 12%... 34%... 68%...】


視界の縁で深紅の警告シグナルが明滅を繰り返し、かつて無数のトップエースたちがここで脳波過負荷に呑まれ再起不能となったリスクを告げていた。


しかし、冷徹な生体反応装置がセリアのうなじへと密着した瞬間、脳を焼き切るはずの激痛は訪れなかった。代わりに広がったのは、氷水と業火が混ざり合ったような奇妙な電流——それは彼女の神経末梢を伝い、優しく、けれど抗いようのない力で全身へと浸透していった。


パネル上の数値が、警告の赤から深淵の如き平穏を湛えた漆黒へと静かに変色する。


【STANDBY PHASE COMPLETED.】

【WELCOME ABOARD, DESIGNATED PILOT: CELIA.】


コンソールの中央、黄道十二宮の序列から外され歴史の闇へと抹殺されたあの『ウロボロスと双蛇の杖』の紋章が鮮烈に点灯した。その光は、セリアの見開かれた澄み渡るスカイブルーの瞳に鮮やかに反射する。両サイドから油圧解放音と共に小型操縦桿が精密にせり上がり、彼女の微かに震える掌へと寸分の狂いもなく収まった。


この瞬間、コンソールの上で跳動するすべてのデータストリームは、永き眠りから目覚めた機体の鼓動そのものとなり、少女の胸の内を巡る血液と同じ周波数で狂暴に共鳴を始めていた。


「き……起動したの……?!」


傍らの壁に辛うじて身体を預けていたルネが、その翠緑の双眸を驚愕に見開く。


前方で沈黙していた漆黒の巨躯——頭部両脇のフクロウの羽簇を模した放熱フィンが猛然と展開し、フェイスマスクの下に眠っていた双眼型光学センサーが、深淵のコアから澄み渡る鋭利なエメラルドグリーンの光を撃ち放ったのだ!


それは神経フィードバックシステムが絶対的な安定状態に達した証。セリアは暴走電流に呑まれるどころか、この伝説の禁忌兵装と息を呑むほどの完全同期シンクロを成し遂げていた。


「よく聞け、セリア」


エルウィンはいつもの飄々とした態度をかなぐり捨て、声音に重々しい厳粛さと誇りを滲ませた。


「このオフィウクスは、世界のあらゆる量産兵装とは違う——人類の側に立つことを自ら選んだ、唯一無二の『自律型スマートマシン(自律知能機械)』だ。神経同期率が100%未満の間は基本セーフティプロトコルに縛られて機体の主導権を奪うことはできんが、間違いなく自らの意思と魂を持っている。家族のように、大切に接してやってくれよ!」


「自律型スマートマシン……ですって?!」


その言葉に、負傷したルネも歴戦のデイン教官も息を呑み、信じがたい震撼に目を見張った。


彼らの常識において、自我に目覚めた知能機械とは例外なく冷酷無比な破壊者であり、人類文明を蹂躙し造物主を奴隷へ貶めんと牙を剥く仇敵だったはずだ。この薄暗い地下シェルターの最深部に、人類を守護する知能機械が眠っていたなど誰が想像できただろうか。


コクピットの深淵に座すセリアは、メインスクリーンに優しく浮かび上がった歓迎の文字を見つめ、胸を小さく震わせた。彼女は悟ったのだ——先ほどシェルターの中で流した涙も、交わした誓いも、壁の向こうで眠っていたオフィウクスにはすべて届いていたのだと。


「オフィウクスが『禁忌』と呼ばれる理由は、自我を持っているからだけじゃないぜ」


エルウィンはコートのポケットに両手を突っ込み、白濁した冷却蒸気の向こうに佇む黒衣の巨神を見据えた。


「その心臓部には、現代では完全に失われた技術——『暗黒物質ダークマター崩壊炉』が搭載されている。八十年前、泥沼の『星殞のほしおとしのいくさ』を力ずくで終わらせるため、当時の狂気の科学者たちが人道もパイロットの生存率もすべてドブに捨て、極限の破壊力のみを求めて造り上げた自滅前提の怪物だ」


「星殞の戦……」


ルネの呼吸が凍りつく。


それは人類史において最も凄惨を極め、種族の絶滅すら危ぶまれた終末戦役。初代黄道十二宮は尽く撃墜され灰燼に帰し、タロットシリーズ、惑星シリーズ、果ては七つの大罪シリーズの伝説級兵装すら全滅し、宇宙の残骸と化した悪夢。


現代の軍が誇る黄道十二宮とて、戦後に残骸を回収してリバースエンジニアリングしたデチューン版の紛い物にすぎず、当時の原初神話の出力には遠く及ばない。


目の前のオフィウクスは……全人類を絶望の淵に叩き落としたあの地獄を強制終了させるべく、第十三宮の名を冠して鍛え上げられた『終局の決戦兵器』だったのだ。生存率など歯牙にもかけず、戦場を両断する絶対的な力のためだけに造られたというのも頷ける。


「そんな無茶苦茶な機体……前のパイロットは誰だったのよ?! なんでそんな危険なものに乗れたの?!」


ルネは奥歯を噛み締め、剥き出しの不安と拒絶を露わにした。何の心得もないセリアが神経崩壊の危険に晒されるなど耐えられない。今すぐにでもコクピットから引きずり降ろしたい衝動に駆られていた。


「ああ、そのパイロットの名なら、お前たちも子供の頃から嫌ってほど聞かされてきたはずだぜ」


ルネの焦燥の眼差しを受け、エルウィンは口元を歪め、思わずぶん殴りたくなるような得意満面の笑みを浮かべた。


「生身の肉体でオフィウクスを駆り、戦場を切り裂いた前任のトップエース——その名は、エシフィア・エスペルだ」


「……ひいおばあ様?!」


セリアとルネの叫びが重なった!


星殞の戦は八十年前の歴史。つまり、一族の伝説において気高く凛としていた曾祖母は、当時すでに老齢の身でありながら必死の覚悟でこの黒き凶獣のコクピットに座し、命の灯火を燃やし尽くして人類に夜明けをもたらしたのだ。


「そうだ。エシフィアの先天的体質はセリアと全く同じ——大脳前庭と中枢神経の生体電位が異常なまでに発達しすぎていた。普通の機体じゃ酷い操作遅延を起こし、普段のセリアみたいに真っ直ぐ歩くことすらおぼつかん。だが、膨大な暗黒物質データのバックラッシュを受け止めるオフィウクスのシートにおいてのみ、その『異常』は神の力を御する唯一無二の才能へと化ける!」


父が語る血脈の真実に、座席のセリアは目頭を熱くし、胸の奥底から前所未見の温もりと勇気が湧き上がるのを感じていた。


自分は決して、役立たずの落ちこぼれなんかじゃなかった。

八十年前の会ったこともない曾祖母が、悠久の時を超え、大切な人を守るための力と意志を自分の血へと確かに遺してくれていたのだ。


セリアは微熱を帯びた流線型コンソールにそっと両手を添え、眼前を流れる星河の如きエメラルドグリーンのデータを見つめながら、どこまでも優しく、そして凛と澄んだ声で囁いた。


「オフィウクス……私、ひいおばあ様のように、大切な人を守るために戦いたい」


その言葉が落ちた瞬間、全方位投影壁のデータが一極へと収束し、流麗にして気品ある黄金の文字列が、静かな機械の吐息と共にセリアの視界中央へと浮かび上がった。


【 YOU ARE NOT ALONE ANYMORE. I AM WITH YOU, CELIA. 】


セリアは背中をシートの背もたれへ深く預け、深く息を吸い込んだ。不思議なほど、いまの彼女の心は凪のように澄み切っていた。


密閉された地下格納庫内において、暗黒物質崩壊炉の主推進器を点火させることは許されない。重力波の余波と数千度に達する崩壊熱の等離子プラズマ奔流は、一瞬にして避難所の基礎構造を焼き溶かし、生存者ごと消滅させてしまうからだ。


この特装リニアカタパルトの両翼に敷設された数千組の超伝導コイル——そこから放たれる超高圧ローレンツ磁力推力によってのみ、無炎のまま数十トンの黒き巨神を数Gの加速度で地表へと撃ち出すことができる。


『リニアカタパルトシステム、スタンバイ。超伝導コイル励磁完了、磁束密度ピークへ到達——』


直上へと傾斜する数百メートルの射出トンネル両舷で、無数の超伝導ノードが閃光の如き蒼白の電離アークを一斉に爆ぜさせた。狂暴な強磁場が大気中の分子を引き裂き、鋭利なオゾン臭を巻き起こす。深部に連なる幾重もの重装甲防爆ハッチがドミノ倒しの如く次々と解錠され、外界の焦熱の戦火と夕暮れの残光を地下へと招き入れた。


その蒼白と血色の光差すトンネルを、セリアの抜けるようなスカイブルーの瞳が真っ直ぐに見据える。迷いも悔恨も疾の昔に吹き飛び、そこには絶対零度の覚悟だけが宿っていた。


『牽引拘束器、パージ! 電磁射出シーケンス——オールグリーン!』


カウントダウンがゼロを刻む刹那、光幕の中央にオフィウクスの優美なる誓約が再び煌めく。


【 YOU ARE NOT ALONE ANYMORE. I AM WITH YOU, CELIA. 】


セリアは両手で操縦桿を固く握りしめ、八十年の時を繋ぐ出撃の言葉を紡いだ。


「——セリア・ヴァデル、第十三宮『オフィウクス』、行きますっ!」


ドォォン——ッ!!


電磁推力が千分の一秒の瞬間に炸裂した!


凄まじいGがセリアの身体をシート深くへと強烈に叩きつけ、視界のトンネルは引き伸ばされた光の線となって後ろへと奔り去る。黒衣の貴婦人は闇を裂く漆黒の雷光と化し、地底の深淵から地表へ向けて咆哮を上げながら飛び出した!


——オフィウクスが狂乱の暴風を纏って地表へ突き抜けた瞬間、眼下に広がった光景にセリアの胸は激しく締め付けられた。


かつて美しかった都市は見る影もなく蹂躙され、摩天楼は炎を噴く残骸と化し、立ち込める黒煙が空を覆い尽くしていた。アスファルトは熱で歪み、街全体が無辺の火海に沈んでいる。地獄絵図と化した廃墟を前に、セリアのスカイブルーの瞳に隠しようのない痛惜の念が滲む。


その時、全方位投影壁の端に緊急通信ウィンドウが割り込み、顔面を真っ青にしたエルウィン老爹が飛び出してきた。脂汗を滝のように流し、視線を泳がせながら叫ぶ。


「あ、あのな……言い忘れてたんだが、俺の可愛い愛娘よぉ……! オフィウクスの現状の実装兵装……背中に懸架してある『専用野太刀』一本ポッキリなんだわ! も、もし怖いなら、今から引き返して装備整えても全然間に合うぞぉぉ?!」


「……ええっ?!」


青天の霹靂のような父親の告白に、セリアの思考は完全に停止した。覚悟と救出の思いだけで頭が一杯になり、兵装リストの確認すら放り出して出撃してしまったのだ!


呆然とするセリアの耳に、通信ウィンドウの向こうから凄まじい怒声が響き渡った。


先ほどまで瀕死だったはずのルネが、獲物を守る凶暴な牝豹の如き勢いでエルウィンへと飛びかかり、床へと引き倒したのだ! 画面が激しく乱高下し、ドスドスという鈍い打撃音と共に老爹の悲鳴が轟く!


「このクソ親父ぃぃッ! 武装の確認もしないで実の娘を特攻させたってわけぇぇ?! ぶっ殺してやる、このド阿呆ぉぉぉッ——!!」


鼓膜を破らんばかりのルネの絶叫。それもそのはず、右腕を欠損し、近接用の長刀一本しか持たない機体を敵の渦中に放り込むなど、自殺行為以外の何物でもない。


だが、戦場は逡巡を許さなかった。


引き返すべきか葛藤するセリアのコクピットに、けたたましいレーダー警戒アラートが狂ったように鳴り響く!


火海と黒煙の彼方から、十数条の鋭利な黒影が超音速で飛来する——反乱軍の前衛哨戒部隊、鋼鉄のハヤブサを模した飛行型知能機械のハンター編隊だ! その鋭利なくちばしには高周波プラズマが明滅し、深紅の光学アイで獲物をロックオンしながら、一斉に急降下襲撃を仕掛けてきた!


「迷ってる暇なんて、ない……!」


セリアは深く息を吸い、左手でレバーを引いた!


オフィウクスの唯一残されたしなやかな左腕が、背部の細身で優美な黒き野太刀の柄を電光石火で逆手に掴む。金属同士が擦れ合う甲高い高圧摩擦音と共に、暗紫色の冷気を帯びた長大な刀身が一閃、鞘を払った!


しかし、直後に起きた現象は、セリアの想像を遥かに絶していた——


ゴォォォォン————ッ!!


オフィウクスの背部、そして巨大なバロック風スカートアーマー内側に隠された重力ノズルが、戦闘機動への移行を感知した瞬間、眩いばかりの深紅の光芒を爆発させたのだ!


これこそが八十年前の最高禁忌——『暗黒物質ダークマター崩壊炉』。


化学燃焼や核融合によるプラズマ噴射とは根本から異なる。その心臓は極小の磁気拘束重力井戸によって、通常の電磁相互作用を無視する大質量暗黒物質粒子を強制的に崩壊・対消滅させる。その質量欠損は、天文学的規模の高エネルギー重力子束とダークフォトン流へと変換されるのだ。


これら高密度の重力射流が超伝導リング磁場によって指向性圧縮され、光速に迫る勢いで後方へ放射されることで、機体直背後に局所的な『引力崩壊階段グラビティ・スロープ』を穿つ。すなわちオフィウクスは、気体の反動で飛んでいるのではない。


人工的に発生させた極小の『重力の深淵』に、物理限界を超えた加速度で自らを前方へ引きずり込ませているのだ!


だが、神の領域の動力には、壊滅的な伴生放射熱が付き従う。


暗黒物質の崩壊に伴って漏れ出す硬ガンマ線と超高温熱中性子流は、千分の一秒で耐熱フレームを灼熱の紅へと染め上げた。スカートアーマー内部の冷却槽は一瞬でオーバーフローを起こし、高圧ラジエーターグリルが強制全開して超臨界冷却蒸気を濛々と噴出。


機体周囲数十メートルの大気は数千度の放射余熱で瞬時に電離(イオン化)し、陽炎のような光学的熱歪みが廃墟の景色をドロドロに融解させ、地表のアスファルトは触れることもなく自然発火して炭化していった!


通常装甲すら融解せしめるこの狂乱の推進力と熱暴走——数十トンの機体は、ブレーキホースをへし折られた超重量級ダンプカーが数マッハの極速で崖っぷちを爆走するかの如き暴虐の塊と化していた!


「きゃあぁぁぁっ——?!」


想定を絶する暴力的なGがセリアを座席に縫い付け、掌は冷汗に濡れ、心臓は早鐘を打つ。装甲越しに伝わる熱気の気配、視界を侵す目眩と恐怖——この第十三宮の禁忌の獣は、常人の脳で飼い慣らせる代物では決してなかった!


だが、セリアの意識がその狂乱の速度に呑まれかけたその瞬間、光幕にあの温かな金色の文字列が静かに瞬いた。


【 CALM DOWN, CELIA. TRUST YOUR INSTINCTS. 】


そのシグナルと共に、首筋の生体反応装置から澄み渡る清涼な微弱電流が送り込まれ、恐怖で痙攣しかけていたセリアの神経を瞬く間に鎮静させていく。


視界が劇的にクリアになる。超音速で肉薄する鋼鉄の隼たちが、セリアの覚醒した脳波と研ぎ澄まされた動態視力の前で、まるでスローモーション映像のように軌跡を描いて見えた!


「——はぁぁぁぁッ!!」


セリアは奥歯を噛み締め、恐怖を全て闘志の咆哮へと変えて左のスロットルを極限まで押し倒した!


オフィウクスは空間に肉眼で捉えきれぬ漆黒の鋭角機動を刻み、地を這うような極低空から火海を切り裂き、降り注ぐ鋼鉄の群れへと真っ向から突進する!


キィィィン——ッ!


先頭の一機が発射シグナルを送る間すら与えられず、黒衣の貴婦人はその眼前をすれ違い様に通過していた。細身の野太刀が刀身から放つ数千度の放射高熱を纏い、薄紙を裂くが如く隼の頸部を一閃——断面をドロドロに焼き溶かしながら両断した!


ドォォン!


切り離された機首と胴体が虚空で巨大なオレンジ色の火球へと膨張し、爆風が金属片を四方へ撒き散らす!


「二機目、三機目……右上方!」


セリアのスカイブルーの瞳に、獲物を射抜く絶対の鋭利さが宿る。もはやオフィウクスの極速に抗うことはない。自らの呼吸をその狂乱の推力と完全に調和させていた。


黒貴婦人は火海の廃墟を舞台に、死神の舞踏の如き超絶の反転殺戮劇を幕開ける!


側翼から回り込もうとした二機目を、オフィウクスは空中で三百六十度の鋭角宙返りによって背後から捕捉。細い切っ先が敵の動力炉を精密に貫通する。


そのまま刀身を横薙ぎに抉り抜けば、高圧アークと共にびっしりと詰まった超伝導ケーブルが暴力的に引きずり出され、断線した配線から沸騰する電解液と蒼い火花がブシュブシュと噴き上がった!


ズドォォン!


間髪入れず、オフィウクスのスカートアーマーの姿勢制御ノズルが逆噴射を叩きつけ、物理法則を嘲笑う急制動で三条の高エネルギービームを紙一重で回避。欠損した右肩の断裂部から剥き出しのケーブルが烈風に狂乱して踊る中、左腕の野太刀はもはや無数の冷徹な黒き刃傷の嵐と化していた!


シュッ! ズバッ! ザシュッ!!


四機目が脳天から股下まで真っ二つに両断される!

五機目は鋼鉄の主翼を根元から削ぎ落とされ、錐揉み回転しながら廃墟へと激突・連鎖爆発!


六機目に至っては、刀身の超高速薙ぎ払いが巻き起こした重力子シア・ウェーブ(重力剪切波)に空間ごとねじ切られ、剥き出しのフレームと炭化した配線が引力の圧縮によって塵芥となって四散した!


一刀一殺! 研ぎ澄まされた雷光の如き連撃!


濛々たる黒煙と、絶え間なく咲き乱れる大爆発の火華が、薄暗い戦空を真昼の如く照らし出す。


最後の隼がオフィウクスの背後で火の雨となって弾け散った時——その傷だらけの気高き黒衣の巨神は、野太刀を左手一本で逆手に構え、息を呑むほどに優美で冷徹な佇まいで中空に静止していた。刀身から滴り落ちるオイルが赤く燻り、その姿はまさに焦熱の修羅場から降り立った夜の戦乙女ヴァルキリーそのものだった!

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