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ECLIPSE CHRONICLE ー エクリプス・クロニクル ー  作者: 神宮せいや
ECLIPSE CHRONICLE:REBIRTH

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黒星王の鼓動

ドクン――


世界が脈打った。


その鼓動は王都だけではない。


アストレア。


ヴェリス帝国。


イグニス王国。


ウィンダリア連邦。


世界中の空気が震えた。


人々は違和感を覚える。


理由は分からない。


だが。


胸の奥が妙に熱い。


忘れていた何かを思い出しそうになる。


子供達は空を見上げる。


老人達は涙を流す。


兵士達は懐かしさを覚える。


誰も理由を知らない。


だが。


世界は確実に反応していた。


忘れられた英雄に。


消された歴史に。


そして。


黒星王の帰還に。


同時刻。


観測者領域。


黒い星の中心。


シオン・アルヴィスは静かに立ち上がった。


全身傷だらけだった。


黒いコートは破れ。


腕には無数の傷。


肩からは血が流れている。


それでも。


蒼い瞳だけは強く輝いていた。


その胸元。


消えたはずの黒星晶の痕跡が脈動している。


ドクン。


ドクン。


ドクン。


今までにない反応だった。


まるで誰かが呼んでいる。


遠く離れた場所から。


世界を越えて。


魂へ直接届いてくる。


シオンは目を閉じた。


聞こえる。


懐かしい声。


忘れたことなど一度もない声。


ルナリア。


彼女の想いが届いている。


「思い出したんだな……」


小さく笑う。


その瞬間。


黒い星全体が輝いた。


蒼黒い光。


終焉にも似た力。


だが。


その本質は違う。


これは破壊ではない。


守るための力。


未来を繋ぐための力。


黒星王の力だった。


「危険度上昇」


AE-01が反応する。


銀色の瞳がシオンを捉える。


「黒星王因子活性化確認」


「世界固定率低下」


「緊急修正を開始」


次の瞬間。


無数の白い槍が出現した。


数万。


数十万。


観測者領域を埋め尽くすほどの数。


その全てがシオンへ向けられる。


普通なら終わりだった。


だが。


シオンは動かなかった。


ただ空を見上げる。


そして。


静かに呟く。


「帰るんだ」


ドォォォォォォォォォン!!


黒い衝撃波が解放された。


空間が砕ける。


白い槍が吹き飛ぶ。


観測者領域そのものが震える。


AE-01が初めて後退した。


「異常」


「異常」


「異常」


繰り返される機械音声。


その様子を。


遠くから見つめる存在がいた。


レイ。


最初の黒星王。


世界最初の英雄。


彼は静かに笑った。


「ようやくだな」


蒼い瞳が細くなる。


長かった。


本当に長かった。


何万回も繰り返された世界。


何万回も訪れた終焉。


その全てで届かなかった未来。


だが。


今回は違う。


シオンは一人じゃない。


ルナリアがいる。


仲間達がいる。


記憶が戻り始めている。


だから。


世界が変わる可能性がある。


その頃。


記憶の海。


管理者アーカイヴとクロノの対峙は続いていた。


白い門が開いている。


世界編集権限。


最終修正術式。


それは本来。


文明一つを消せるほどの力。


その力が。


たった一人。


ルナリアへ向けられていた。


「やめろ!」


クロノが叫ぶ。


赤い光が爆発する。


だが。


間に合わない。


白い光が降り注ぐ。


ルナリアは動けなかった。


圧倒的な力。


圧倒的な絶望。


その時だった。


胸元が光った。


銀色の光。


月の輝き。


そして。


その中心に浮かぶ一つの記憶。


月の花畑。


満月。


優しい笑顔。


『大丈夫だ』


シオンの声。


ルナリアの瞳が見開かれる。


その瞬間。


彼女の身体から銀色の光が溢れ出した。


世界が止まる。


アーカイヴですら動きを止めた。


「月の継承者因子覚醒確認」


初めて。


管理者の声に動揺が混じる。


クロノも目を見開く。


「まさか……」


銀色の光はさらに広がる。


記憶の海全体を包み込む。


失われた記録が浮かび上がる。


忘却された歴史が戻り始める。


そして。


ルナリアの脳裏へ。


もう一つの記憶が流れ込む。


それは。


世界再構築直前。


最後の瞬間。


誰も知らない真実だった。


泣いている自分。


消えていくシオン。


そして。


交わされた最後の約束。


『必ず迎えに行く』


その言葉と共に。


世界は再構築された。


ルナリアの瞳から涙が零れる。


「シオン……」


今度ははっきりと思い出した。


忘れられた英雄。


世界を救った少年。


自分が愛した人。


その名前を。


その想いを。


その瞬間。


観測者領域でシオンが顔を上げる。


蒼い瞳が揺れる。


聞こえた。


確かに。


届いた。


ルナリアの声が。


そして。


黒い星の最深部。


誰も知らない場所で。


封印されていた何かが目を開いた。


真紅の瞳。


世界より古い存在。


管理者ですら恐れる存在。


それは静かに呟く。


『観測完了』


世界が震えた。


本当の物語が。


ここから始まろうとしていた。

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