「運命の交差点」
光の扉が開いていた。
世界核の中心。
観測者領域。
誰も到達したことのない場所。
世界の始まりと終わりが記録された領域。
その入口が。
今まさに開かれようとしていた。
ゴォォォォォォォォォ――――
光が溢れる。
世界核が脈打つ。
空間そのものが震えている。
世界中の空が反応していた。
亀裂がさらに広がる。
星喰いが咆哮する。
終焉神ゼノアの翼が膨れ上がる。
全てが共鳴していた。
まるで世界そのものが運命の瞬間を迎えようとしているかのように。
シオンは膝をついていた。
黒星晶が激しく脈打つ。
ドクン。
ドクン。
ドクン。
頭痛。
記憶。
感情。
全てが溢れ出してくる。
何千もの世界。
何千もの終焉。
何千もの別れ。
その全てが脳裏を埋め尽くしていく。
「ぐあああああああっ!!」
叫び声が響く。
アリアが駆け寄ろうとする。
だが。
ノクスが手で制した。
「待て」
低い声。
アリアが振り返る。
「何よ」
ノクスはシオンを見つめていた。
赤黒い瞳が揺れている。
「今は触るな」
その言葉に。
アリアも理解する。
始まっているのだ。
最後の記憶が。
シオンがずっと失っていた真実が。
その時。
ルナリアの胸が締め付けられる。
彼女は知っている。
もしシオンが全てを思い出せば。
必ず辿り着く。
世界を救う方法へ。
そして。
その代償へ。
「お願い……」
小さな呟き。
誰にも聞こえない。
聞かれてはいけない。
ルナリアは拳を握る。
震えていた。
どれだけ覚悟を決めても。
どれだけ決意しても。
怖いものは怖かった。
シオンを失うことが。
仲間を失うことが。
未来を失うことが。
その時だった。
観測者領域の扉がさらに開く。
バキィィィィィィィィン!!
世界が揺れる。
光が爆発する。
全員が顔を上げる。
そして。
見た。
扉の向こう。
果てしなく広がる白い世界。
無数の記録。
無数の歴史。
無数の可能性。
そして。
その中心に立つ一つの影。
白い外套。
黒髪。
蒼い瞳。
誰かがそこにいた。
レオニクスの顔色が変わる。
「そんな……」
震える声。
信じられないものを見る顔。
終焉神ゼノアですら表情を失う。
銀色の瞳が揺れる。
「あり得ない」
掠れた声。
「まだ存在していたのか」
その瞬間。
シオンの黒星晶が暴走する。
ドクン!!
世界が止まる。
視界が白く染まる。
そして。
最後の記憶が蘇る。
崩壊した世界。
泣いているルナリア。
血塗れのノクス。
倒れた仲間達。
終わる世界。
そして。
自分の前に立つ一人の男。
白い外套。
蒼い瞳。
その男は優しく笑っていた。
『頼んだぞ』
その声。
その姿。
シオンは知っていた。
忘れていただけだった。
男が笑う。
どこか寂しそうに。
どこか嬉しそうに。
『今度こそ』
『世界を終わらせろ』
記憶が砕ける。
現実へ戻る。
シオンの瞳が大きく見開かれる。
呼吸が止まる。
身体が震える。
そして。
彼はようやく理解する。
なぜ自分が存在しているのか。
なぜ何度も終焉へ抗ってきたのか。
なぜ黒星晶に選ばれたのか。
その全ての理由を。
「……そうだったのか」
静かな声。
誰も動けない。
誰も言葉を発せない。
シオンは観測者領域を見つめる。
その瞳には涙が浮かんでいた。
そして。
白い世界の中心に立つ影が。
ゆっくりとこちらを見る。
蒼い瞳がシオンを見つめる。
まるで。
ずっと待っていたかのように。
世界核が脈打つ。
終焉神ゼノアが立ち上がる。
星喰いが咆哮する。
ルナリアが息を呑む。
レオニクスが震える。
全ての真実が揃おうとしていた。
最後の観測者。
世界最初の記録者。
全ての始まり。
全ての終わり。
その存在が。
ついに姿を現そうとしていた。




