「黒星王と融合将」
終焉神が誕生した。
その事実は世界中へ伝わっていた。
言葉ではない。
本能だった。
誰もが理解していた。
生まれてはいけない存在が生まれたのだと。
天空神殿エデン。
世界核の光が空を貫く。
終焉神ゼノアは静かに浮かんでいた。
銀色の瞳。
無数の光翼。
神そのものの威圧感。
もはや人類が到達できる領域ではない。
だが。
それ以上の脅威がまだ残っていた。
星喰い。
終焉領域から侵入を続ける世界最大の災厄。
巨大な腕が振り下ろされる。
それだけで大気が裂ける。
空間が崩壊する。
世界樹アストレアが悲鳴を上げる。
「来るぞ!」
レオニクスが叫んだ。
次の瞬間。
シオンとノクスが同時に動く。
蒼黒い閃光。
二人の姿が消える。
轟音。
空中で星喰いの腕と激突した。
ドォォォォォォォォォン!!
衝撃波が世界中へ広がる。
雲が吹き飛ぶ。
空間が砕ける。
大陸規模の余波。
それでも。
星喰いは止まらない。
巨大な瞳が開く。
無数の瞳。
その全てがシオンを見ていた。
まるで獲物を見つけた獣のように。
シオンは歯を食いしばる。
黒星晶が暴走する。
ドクン。
ドクン。
ドクン。
記憶が流れ込む。
まただ。
最近増えている。
知らないはずの景色。
知らないはずの戦い。
だが。
確かに自分の記憶だった。
崩壊した世界。
燃える都市。
星喰い。
そして。
隣にはいつもノクスがいた。
共に戦っていた。
共に傷付いていた。
共に世界を救おうとしていた。
何度も。
何度も。
何度も。
「チッ……!」
シオンが頭を押さえる。
ノクスが横へ並ぶ。
「また見たか」
シオンは頷く。
隠す必要はなかった。
ノクスも同じだからだ。
「ああ」
短い返事。
だが。
それだけで伝わる。
ノクスもまた見ていた。
失われた世界の記憶を。
忘れられた歴史を。
そして。
何度も繰り返された終焉を。
「思い出したか?」
ノクスが聞く。
シオンは首を振る。
「全部じゃない」
拳を握る。
脳裏に焼き付いている光景。
血だらけのノクス。
崩壊する世界。
泣いているルナリア。
そして。
自分自身。
黒い翼を広げた黒星王。
「でも」
シオンは空を見る。
巨大な星喰い。
終焉神ゼノア。
崩壊する世界。
「俺達は何度も戦ってた」
ノクスが笑う。
「ああ」
その笑顔は少し寂しかった。
「何回死んだか覚えてねぇ」
風が吹く。
終末の風。
だが。
二人は笑った。
恐怖はなかった。
今さらだった。
何度終わろうが。
何度失敗しようが。
また立ち上がる。
それがシオンであり。
それがノクスだった。
その時だった。
星喰いが咆哮する。
グォォォォォォォォォォォォォ!!
終焉の叫び。
世界が震える。
巨大な口が開く。
闇が集まる。
圧縮。
凝縮。
収束。
レオニクスの顔色が変わった。
「まずい!」
研究員達が叫ぶ。
「終焉砲撃!」
「大陸消滅級です!」
「直撃すれば世界樹が!」
誰もが青ざめる。
回避不能。
防御不能。
世界そのものを消し飛ばす攻撃。
その瞬間。
シオンが前へ出る。
黒星晶が燃え上がる。
ノクスも並ぶ。
蒼黒い光。
漆黒の光。
二つの力が重なる。
世界が共鳴する。
ドクン。
ドクン。
ドクン。
世界樹が反応した。
星晶が輝く。
黒星晶が応える。
まるで。
世界そのものが二人へ力を貸しているようだった。
ノクスが笑う。
「派手に行くぞ」
シオンも笑う。
「当然だ」
二人は拳を握る。
終焉砲撃が放たれる。
同時に。
二人も飛び出した。
蒼黒い流星。
漆黒の流星。
二つの光が終焉へ向かう。
世界中の人々が見ていた。
希望と絶望。
終焉と反逆。
その全てが衝突する瞬間を。
そして。
その衝突の中心で。
シオンの黒星晶がさらに激しく脈打ち始める。
まるで。
まだ思い出していない何かを呼び覚ますように。
世界の真実へ近付くように。
そして。
運命はさらに加速していく。
その裏で。
誰にも知られず。
ルナリアは一人。
天空神殿最深部へ向かっていた。
全てを終わらせるために。
誰よりも静かな覚悟を胸に秘めながら。




