「七星将最後の戦い」
終末の戦争が始まった。
空では星喰いが世界を侵食している。
地上では世界再構築術式が発動している。
もはや後戻りはできない。
この戦いで全てが決まる。
アストレアから天空神殿エデンへ続く巨大な転送回廊。
そこでは激しい戦闘が繰り広げられていた。
轟音。
爆炎。
剣戟。
無数の光が交差する。
アリアは疾走していた。
黒い外套を翻しながら。
影そのもののような速度で。
その前へ一人の男が降り立つ。
空間が歪む。
紫色の魔法陣。
現れたのはリヴェルだった。
七星将。
空間将。
教団最悪の策士。
彼は笑っていた。
まるで全てを楽しむように。
「久しぶりだね」
アリアの表情が険しくなる。
「相変わらず気持ち悪い笑い方ね」
リヴェルは肩を竦めた。
「酷いな」
「事実よ」
空気が張り詰める。
かつて何度も交差した因縁。
幾度も戦い。
幾度も逃げられた相手。
その決着の時だった。
「終わらせる」
アリアが呟く。
双剣が輝く。
次の瞬間。
二人の姿が消えた。
爆音。
衝撃波。
空間そのものが切り裂かれる。
影と空間。
二つの能力が激突する。
リヴェルが笑う。
「それでこそだ」
アリアの瞳に迷いはない。
今までとは違う。
もう負けない。
仲間がいる。
守りたい未来がある。
その想いが彼女を強くしていた。
その頃。
別の回廊では炎が荒れ狂っていた。
ガルドが大剣を振るう。
炎牙。
その名に相応しい業火。
目の前にはゼルヴァスが立っていた。
重力将。
教団最高司祭直属の怪物。
漆黒の法衣。
黄金の紋章。
圧倒的な重圧。
周囲の床が沈んでいる。
重力そのものを支配する力。
「久しぶりだな」
ゼルヴァスが言う。
ガルドは笑った。
「そうか?」
大剣を肩へ担ぐ。
「俺はお前の顔なんて見たくもなかったぜ」
重力が落ちる。
轟音。
空間が潰れる。
普通の人間なら即死。
だが。
ガルドは前へ出る。
炎が爆発する。
重力と炎。
二つの力が正面から激突した。
ゼルヴァスが目を細める。
「愚かだ」
「知ってる」
ガルドは笑う。
「でもな」
炎がさらに燃え上がる。
「馬鹿だからここまで来れたんだよ」
咆哮。
炎柱が天井を貫いた。
別の区域。
氷と炎がぶつかっていた。
セラフィナ。
レオナ・ヴァーミリオン。
かつて同じ教団にいた二人。
氷晶と紅蓮。
真逆の力。
真逆の生き方。
「戻ってきなさい」
レオナが言う。
「まだ間に合う」
セラフィナは首を振った。
蒼い瞳は真っ直ぐだった。
「もう戻らない」
短い言葉。
だが。
その中に全てが込められていた。
「私は私として生きる」
氷晶が舞う。
氷の花が咲く。
レオナの炎と激突する。
世界が白く染まった。
その上空。
エリナが弓を構える。
翠色の瞳。
小柄な少女。
だが。
誰よりも鋭い。
矢が放たれる。
一筋の光。
数百メートル先の教団兵を貫く。
さらに次。
さらに次。
矢が雨のように降り注ぐ。
「道を開けるよ!」
元気な声。
だが。
その表情は真剣だった。
仲間達の背中を守る。
それが今の役目だった。
神殿内部は戦場と化していた。
誰も退かない。
誰も諦めない。
なぜなら。
その先にシオンがいるから。
ルナリアがいるから。
守りたい未来があるから。
その時だった。
天空神殿全体が大きく揺れる。
ゴォォォォォォォォォ――――!!
世界核が脈動した。
黄金の光。
黒い光。
二つの力が神殿全域を包み込む。
研究員達が叫ぶ。
「世界再構築術式が加速している!」
「限界突破!」
「ゼノアが世界核と融合を開始!」
全員の表情が変わる。
時間がない。
終焉神が誕生しようとしている。
アリアが剣を握る。
ガルドが炎を纏う。
セラフィナが槍を構える。
エリナが最後の矢を番える。
そして。
全員が同じ方向を見る。
天空神殿最深部。
そこにいるシオンへ続く道を。
絶対に繋ぐために。
戦いはさらに激しさを増していく。
そして運命は。
終焉神誕生の瞬間へ向かって動き始めていた。




