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ECLIPSE CHRONICLE ー エクリプス・クロニクル ー  作者: 神宮せいや
ECLIPSE CHRONICLE:REBIRTH

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終焉神

ゴゴゴゴゴゴゴゴ――――ッ!!


契約樹が激しく軋み、神域全体へ無数の亀裂が走った。


黄金に輝いていた世界樹の根は黒く侵食され、空を漂っていた星々が一つ、また一つと光を失っていく。


その異変は神域だけではなかった。


第五百世界。


セレスティア。


アストレア王国。


世界樹都市。


月の神殿。


あらゆる世界で空が黒く染まり、人々は理由も分からないまま空を見上げていた。


「何が起きてるんだ……。」


ヴォルグが大剣を構えながら唸る。


レオニクスも剣を抜いたまま周囲を警戒する。


「この気配……。」


「今までの終焉とは別物だ。」


ルナリアは胸元を押さえ、小さく息を呑んだ。


「月の力が……。」


「消えていく。」


イヴも青ざめた表情で契約樹を見つめる。


「生命の流れが止まっています。」


「世界そのものが、呼吸をやめようとしている。」


ノアとルクスは同時に創世術式を展開した。


幾重もの魔法陣が神域全体を覆い、契約樹の状態を解析していく。


しかし、二人の表情はみるみる険しくなった。


「解析不能……。」


「法則が書き換えられています。」


「違う。」


ルクスは震える声で首を横に振った。


「書き換えられているんじゃない。」


「法則そのものが……。」


「消されています。」


その一言に、全員の背筋へ冷たいものが走る。


法則が消える。


それは世界の終わりを意味していた。


⸻


始祖契約者はゆっくりと前へ出る。


穏やかだった表情は消え、その瞳には何万年ぶりかの緊張が宿っていた。


「ノルン。」


「はい。」


「全世界との接続を切れ。」


ノルンは苦しそうに目を閉じる。


「できません。」


「もう契約樹の制御権が奪われています。」


始祖契約者は静かに拳を握り締めた。


「やはり……。」


「間に合わなかったか。」


シオンが隣へ並ぶ。


「何が出てくる。」


始祖契約者は契約樹の最深部を見つめたまま答えた。


「終焉。」


「いや。」


「終焉という概念を創った存在。」


「……終焉神だ。」


その名が告げられた瞬間、神域の空気が凍りついた。


アストラはゆっくり膝をつく。


オルフェウスも目を閉じ、静かに頭を垂れる。


カインでさえ苦々しい表情を浮かべていた。


「終焉神……。」


シオンは低く呟く。


「神なのか。」


「違う。」


始祖契約者は静かに首を横へ振る。


「神という存在は、世界が生まれてから名付けられた。」


「彼はそれ以前から在る。」


「神という言葉では表せない。」


「世界で最初の”終わり”だ。」


ゴォォォォォォォ――――!!


契約樹の中心が完全に裂ける。


そこから現れたのは闇ではなかった。


漆黒よりも深い「虚無」。


光を飲み込み、音を消し、存在そのものを否定する空間。


その虚無の中から、一人の男がゆっくりと歩いてくる。


黒い長髪。


黒い外套。


整った顔立ち。


年齢はシオン達より少し上に見える。


驚くほど普通の青年だった。


だが、その瞳だけは空っぽだった。


感情も意思も映らない。


ただ、世界の終わりだけが宿っている。


青年は神域を見渡し、最後にシオンへ視線を止めた。


そして、静かに笑う。


「やっと。」


「起きられた。」


その声に敵意はない。


怒りもない。


ただ、退屈そうだった。


始祖契約者が一歩前へ出る。


「久しぶりだな。」


「……ノクティス。」


青年は少しだけ首を傾げる。


「その名前。」


「懐かしいな。」


「まだ覚えていてくれたんだ。」


シオンは剣を抜く。


「お前が終焉神。」


青年――ノクティスは、まるで世間話をするような穏やかさで頷いた。


「ああ。」


「みんなはそう呼ぶ。」


「でも。」


「私は世界を終わらせたいわけじゃない。」


シオンは眉をひそめる。


「なら、何が目的だ。」


ノクティスは契約樹へ手を伸ばす。


黒い粒子が指先から零れ落ち、それだけで一本の世界の光が静かに消えた。


「私は。」


「眠りたいだけなんだ。」


その一言に、誰も理解できなかった。


眠る。


ただ、それだけの願い。


なのに世界は滅びようとしている。


ノクティスは少し困ったように笑う。


「私が眠るには。」


「世界が存在していてはいけない。」


神域へ、絶望的な沈黙が落ちた。

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