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ECLIPSE CHRONICLE ー エクリプス・クロニクル ー  作者: 神宮せいや
ECLIPSE CHRONICLE:REBIRTH

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継承者の試練

契約の神殿。


それは、世界が始まる以前から存在する唯一の神域だった。


純白の巨門には、数え切れないほどの古代文字が刻まれている。


その一文字一文字が、まるで生きているように静かに脈動していた。


シオンはゆっくりと黄金の《契約の鍵》を握り締める。


隣ではオルフェウスが漆黒の鍵を見つめていた。


「この門は、一人では開かない。」


静かに呟く。


「黄金の鍵と漆黒の鍵。二つが揃った時だけ、契約の神殿は継承者を受け入れる。」


シオンは視線を向けた。


「敵同士なのに、一緒に開けろってことか。」


「……皮肉な話だ。」


オルフェウスは苦く笑う。


「創世神も、最初の観測者も、この門だけは力尽くで開けられなかった。」


その時、イヴがゆっくり前へ歩み出た。


「兄さんは言っていました。」


「契約とは、支配ではなく”信頼”の上に成り立つものだと。」


その言葉を聞き、オルフェウスは静かに目を閉じる。


「……アダムらしい。」


彼は迷いを振り切るように漆黒の鍵を門へ向けた。


シオンも黄金の鍵を掲げる。


二つの鍵が共鳴し、柔らかな鐘の音が第零世界へ響き渡る。


ゴォォォォォン――――。


巨大な門がゆっくりと開き始めた。


しかし、その瞬間だった。


バチィッ!!


黒い雷が二本の鍵を弾き飛ばす。


「なっ!」


シオンは咄嗟に黄金の鍵を掴み直した。


オルフェウスも後方へ飛び退く。


開きかけた門は再び閉じ、神殿全体が赤黒い光を放ち始めた。


空間へ冷たい声が響く。


『継承者認証……失敗。』


『資格を確認します。』


『試練を開始。』


ノアの顔色が変わる。


「試練!?」


リーヴァは静かに頷いた。


「契約の神殿は、誰でも入れる場所ではありません。」


「契約を継ぐ資格があるかどうか……神殿そのものが試すんです。」


その瞬間、門の前の白い大地が崩れ、巨大な円形闘技場が姿を現した。


床一面に刻まれた魔法陣が黄金色に輝き始める。


シオン達が足を踏み入れた瞬間、外界との道は光の壁によって閉ざされた。


ヴォルグが大剣を肩へ担ぐ。


「結界か。」


レオニクスも周囲を見回す。


「逃げ道はないな。」


「試練を突破するしかありません。」


イヴが静かに呟いた。


すると闘技場の中央へ、一つの光球が現れる。


その光は少しずつ人の姿を形作っていった。


銀色の髪。


蒼い瞳。


黒い外套。


シオンは思わず息を呑む。


「……俺?」


目の前に立っていたのは、シオン自身だった。


ただ一つ違うのは、その瞳。


右目も左目も、完全な黄金色に染まっている。


『私は試練の管理者。』


『継承者の可能性を映す存在。』


『継承者シオン・アルヴィス。』


『汝は己を超えられるか。』


シオンはゆっくり剣を抜いた。


「未来の俺ってことか。」


『違う。』


『お前が選ばなかった未来。』


『契約を受け入れ、すべてを捨てたお前だ。』


その一言で空気が変わる。


黄金のシオンは剣を抜くことなく語りかける。


「世界は救えない。」


「だから契約を受け入れろ。」


「命を減らせば、残る命は救われる。」


「それが最善だ。」


シオンは首を横へ振った。


「違う。」


「最善なんて誰が決める。」


「お前自身だ。」


黄金のシオンは静かに答える。


「綺麗事だけでは世界は守れない。」


「何かを選べば、何かを捨てる。」


「お前にも、その時が来る。」


ルナリアが不安そうにシオンを見る。


「シオン……。」


しかしシオンは一歩も退かなかった。


「確かに選ぶ時は来る。」


「でも、最初から誰かを見捨てる答えだけは選ばない。」


黄金のシオンは静かに目を閉じる。


「その答えが、お前を苦しめる。」


「何度でも苦しむ。」


「何度でも後悔する。」


「それでもいい。」


シオンは剣を構えた。


「後悔しないために戦うんじゃない。」


「後悔しても前へ進むために戦うんだ。」


その言葉を聞いた瞬間、黄金のシオンは初めて微笑んだ。


「……合格だ。」


「え?」


次の瞬間、黄金のシオンの姿は無数の光となってシオンの身体へ吸い込まれていく。


ドクン――。


《創世の継承印》が一段と強く輝いた。


同時に、神殿の門へ刻まれていた古代文字が一つずつ黄金色へ変わっていく。


『第一試練……突破。』


『継承者シオン・アルヴィス。』


『資格を確認。』


『第二試練を開始します。』


門の奥から重い足音が響く。


ドン。


ドン。


ドン。


今度はシオンだけではない。


七人全員へ向けられた試練が、静かに始まろうとしていた。

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