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ECLIPSE CHRONICLE ー エクリプス・クロニクル ー  作者: 神宮せいや
ECLIPSE CHRONICLE:REBIRTH

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神話の終焉

ゴゴゴゴゴゴゴゴ――――。


原初世界樹が軋む。


世界が生まれる以前から立ち続けた巨樹が、ゆっくりと傾き始めていた。


その根は第零世界だけではない。


第五百世界。


そして、これまで生まれた全ての世界へ繋がっている。


一本の枝が折れた。


パキン――。


その瞬間。


ルクスが青ざめる。


「第五十三世界……。」


「消滅しました。」


続けて二本目。


三本目。


枝が折れるたび、世界が一つずつ光となって消えていく。


ノアは震える声で叫ぶ。


「止めないと!」


「全部の世界が!」


「連鎖崩壊します!」


終焉の黒い繭は膨れ上がり、第零世界の半分を覆っていた。


その中心から響く声は、ますます鮮明になっていく。


『命は巡る。』


『終焉も巡る。』


『それが契約。』


『誰にも変えられない。』


シオンは黄金に輝く左目で、その繭を睨みつける。


「だったら。」


「変える。」


「契約ごと。」


『……愚か。』


『創世神も。』


『観測者も。』


『誰一人できなかったことを。』


『お前が成せると?』


シオンは剣を握り直した。


「俺一人じゃ無理だ。」


「でも。」


「一人じゃない。」


その言葉に応えるように、ルナリアが隣へ並ぶ。


「最後まで。」


「一緒に戦う。」


レオニクスが剣を掲げる。


「王国騎士の誇りに懸けて。」


ヴォルグは豪快に笑う。


「神でも契約でも。」


「ぶっ壊しゃ同じだ。」


アリアは双剣を回しながら口元を緩める。


「無茶ばっかり。」


「でも嫌いじゃない。」


ノアとルクスは創世術式を重ね合わせる。


「世界樹の演算開始!」


「共鳴率七十二……八十一……九十四!」


リーヴァは原初世界樹へ両手を添えた。


「お願い。」


「もう一度だけ。」


「この子達へ力を。」


イヴは静かに涙を拭い、兄の眠る黒い繭へ向き直る。


「兄さん。」


「あなたは言った。」


「命は弱いって。」


「でも。」


「違う。」


彼女はシオンの手を握る。


《生命の核》が眩く輝いた。


ドクン――。


その鼓動に合わせるように、原初生命達が一斉に舞い上がる。


数え切れない命の光。


それらは一本の巨大な光柱となり、傾き始めた原初世界樹を支え始めた。


「止まった……!」


ステラが歓声を上げる。


わずかだが、世界樹の傾きが止まる。


『馬鹿な。』


終焉の声が初めて動揺する。


『命だけで。』


『世界を支えているだと。』


シオンは静かに答えた。


「命は。」


「誰かを支えるためにある。」


「それが。」


「お前には分からなかった。」


その瞬間。


黒い繭へ一本の亀裂が走る。


パキッ――。


「兄さん!」


イヴが叫ぶ。


繭の中から、黄金の光が漏れ始める。


アダムの声だった。


「……イヴ。」


「シオン。」


「今だ。」


「兄さん!」


「聞け。」


アダムの声は弱い。


だが確かな意志があった。


「終焉は。」


「私を器に。」


「契約者を。」


「呼び起こそうとしている。」


「なら!」


シオンが叫ぶ。


「お前ごと助ける!」


「……ふっ。」


アダムは小さく笑った。


「やはり。」


「エインに。」


「似ている。」


その瞬間。


黄金の光が爆発した。


アダム自身が終焉を内側から押さえ込み、巨大な黒い繭を引き裂いていく。


『観測者!!』


闇が怒りに満ちた叫びを上げる。


『裏切るのか!!』


「私は。」


アダムは静かに立ち上がる。


黄金と漆黒。


二つの光をその身へ宿しながら。


「最初の観測者。」


「最後まで。」


「命を観測する。」


彼はシオンを振り返る。


その表情は、数万年前にイヴやエインと笑い合っていた青年そのものだった。


「シオン。」


「次は。」


「お前の番だ。」


「世界を。」


「頼む。」


アダムは静かに右手を掲げる。


その瞬間、自らの存在を光へ変え、黒い繭ごと天へ昇っていく。


ゴォォォォォォォォン――――!!


第零世界を覆っていた終焉が一瞬だけ吹き飛んだ。


原初世界樹は再び真っ直ぐ立ち上がる。


しかし。


空の遥か彼方。


時空の裂け目の向こうで、二つの深紅の瞳が静かに開いた。


『観測者アダム。』


『消滅を確認。』


『第二契約を開始する。』


『継承者シオン・アルヴィス。』


『お前が最後の鍵だ。』


その声だけを残し、裂け目はゆっくり閉じていく。


シオンは黄金の左目で空を見つめながら、静かに拳を握った。


アダムは消えた。


だが、彼が命を懸けて繋いだ希望は、確かにシオン達へ託された。


一方で、新たな敵――**「第二契約」**が動き始める。


神話は終わらない。


本当の始まりは、ここからだった。

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