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ECLIPSE CHRONICLE ー エクリプス・クロニクル ー  作者: 神宮せいや
ECLIPSE CHRONICLE:REBIRTH

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原初の契約

『……ようやく。』


『器が完成した。』


その声が響いた瞬間、第零世界の空が粉々に砕け散った。


バキィィィィィン――――!!


七色の空は完全な漆黒へ変わり、原初世界樹の枝葉が一斉に枯れ始める。


原初生命達は悲鳴を上げるように光を明滅させ、シオンとイヴの周囲へ集まった。


「この声は……。」


シオンは剣を構え直す。


リーヴァの顔から血の気が引いていた。


「そんな……。」


「あり得ない。」


「兄さんの中じゃない……。」


「もっと深い場所から聞こえる。」


アダムは頭を押さえ、苦しそうに叫ぶ。


「出てくるな……!」


「まだ……!」


「私は!」


「支配されない!」


しかし黒い瘴気は止まらない。


胸の奥から黒い光が溢れ、アダムの身体を内側から引き裂こうとしていた。


ノアは震える声で呟く。


「終焉じゃない……。」


「終焉を操っている存在です。」


ルクスも目を見開く。


「管理者の記録にない……。」


「まさか。」


「終焉そのものにも意思があるのか。」


イヴは静かに首を横へ振る。


「違います。」


「終焉は意思ではありません。」


「誰かが。」


「終焉を生み出したんです。」


全員が息を呑む。


アダムは苦しみながら、シオンへ視線を向けた。


「シオン……。」


「聞け。」


「時間がない。」


シオンは迷わずアダムの前へ駆け寄る。


「喋るな!」


「傷が!」


「構うな。」


アダムは震える手でシオンの胸元へ触れる。


七色に輝く《生命の核》がゆっくりと鼓動を刻んでいた。


「生命の核は。」


「鍵だ。」


「鍵?」


「創世神は。」


「生命を創った。」


「私は。」


「世界を守った。」


「だが。」


「契約だけは。」


「誰も壊せなかった。」


「契約って何だ。」


アダムは最後の力を振り絞るように口を開く。


「創世以前。」


「世界は一つだった。」


「命も。」


「終焉も。」


「全て。」


「一つの存在から生まれた。」


シオンの表情が変わる。


「一つの存在……?」


「それが。」


「《原初の契約者》。」


その名前が語られた瞬間。


世界中の原初生命が一斉に震えた。


リーヴァはゆっくり目を閉じる。


「……とうとう。」


「その名が語られてしまいましたか。」


ルナリアが問い掛ける。


「知ってるの?」


「はい。」


リーヴァは静かに頷いた。


「でも。」


「その名を知る者は。」


「第零世界でも私と兄さんだけ。」


「エインですら。」


「最後まで知らなかった。」


「なんで。」


「それは。」


「知れば。」


「契約が始まるからです。」


その瞬間。


シオンの《創世の継承印》が激しく輝き始めた。


ドクン。


ドクン。


ドクン。


鼓動が速くなる。


《生命の核》も同じ速度で脈打ち始める。


二つの力が完全に共鳴していた。


アダムは苦しそうに笑う。


「始まったか……。」


「何が!」


シオンが叫ぶ。


「継承だ。」


「創世神エインは。」


「創世を託した。」


「私は。」


「観測を託す。」


アダムは震える右手をシオンの額へ当てた。


黄金の紋章が浮かび上がる。


同時に、膨大な記憶がシオンの中へ流れ込んできた。


第一世界。


第二世界。


第三世界。


滅びた五百以上の文明。


笑顔。


涙。


別れ。


希望。


絶望。


アダムが数万年見続けた全ての記憶。


「ぐあああああああっ!!」


シオンは膝をつく。


頭が割れそうだった。


世界そのものが脳へ流れ込んでくる。


「シオン!」


ルナリアが駆け寄ろうとする。


しかしイヴが静かに腕を掴んだ。


「今は駄目です。」


「これは。」


「継承の儀。」


「誰にも止められません。」


シオンの瞳へ黄金色が宿る。


右目は蒼。


左目は黄金。


二つの光が混ざり合い、新しい紋章が瞳へ刻まれていく。


アダムは安堵したように微笑んだ。


「ようやく。」


「終われる。」


その時だった。


黒い瘴気が爆発する。


『許さない。』


『観測者。』


『契約は終わらない。』


巨大な黒い手がアダムの身体を貫いた。


イヴが悲鳴を上げる。


「兄さん!!」


アダムは最後の力で、その黒い腕を押さえ込む。


「シオン。」


「聞け。」


「絶対に。」


「契約者だけは。」


「目覚めさせるな。」


「契約者って!」


「誰なんだ!」


アダムは何かを言おうと口を開く。


しかし。


その言葉は最後まで紡がれなかった。


黒い闇がアダムを完全に飲み込み、第零世界全体へ不気味な笑い声が響き渡る。


『もう遅い。』


『契約は再び動き始めた。』


『最後の観測者よ。』


『お前が扉を開いたのだ。』


シオンは黄金に輝く左目で、その闇を真っ直ぐ見据えた。


そして初めて確信する。


終焉との戦いは、まだ始まったばかりだった。

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