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ECLIPSE CHRONICLE ー エクリプス・クロニクル ー  作者: 神宮せいや
ECLIPSE CHRONICLE:REBIRTH

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生命の共鳴

「離れろ!!」


アダムの絶叫が《始まりの庭園》へ響き渡る。


その叫びと同時に、黒い瘴気が爆発するように周囲へ広がった。


ドォォォォォォォォン!!


シオン達は衝撃で数十メートル吹き飛ばされる。


ルナリアは空中で体勢を立て直し、月光魔法で仲間を受け止める。


「みんな!」


「無事!?」


「何とか!」


レオニクスは剣を地面へ突き立てながら立ち上がる。


ヴォルグも瓦礫を押し退け、大きく息を吐いた。


「今までで一番重ぇ一撃だったな……。」


しかし、誰も笑わない。


視線の先。


アダムが苦しそうに両腕で身体を抱えていた。


漆黒の瘴気が胸から溢れ、黄金だった瞳は半分以上が黒く侵食されている。


「兄さん!」


イヴが駆け出そうとする。


「行くな!」


リーヴァがその腕を掴んだ。


「今近付けば!」


「終焉に取り込まれる!」


アダムは苦しそうに膝をつく。


「来るな……。」


「イヴ……。」


「私はもう……。」


「私では……ない。」


その瞬間、黒い瘴気の中から無数の腕が伸びる。


一本。


十本。


百本。


終焉そのものが、アダムの身体を器にしようとしていた。


ノアが歯を食いしばる。


「終焉は!」


「兄さんを乗っ取る気です!」


ルクスは魔法陣を展開しながら叫ぶ。


「アダムは世界法則そのもの!」


「支配されたら!」


「全世界の法則を書き換えられる!」


第零世界が激しく揺れる。


第五百世界へ繋がる根も黒く染まり始めていた。


シオンはゆっくり立ち上がる。


終焉の瘴気が肌を焼く。


肺へ入るたび、命を削られるような痛みが走る。


それでも前へ進む。


「シオン!」


ルナリアが叫ぶ。


「近付いたら駄目!」


「分かってる。」


シオンは静かに答える。


「でも。」


「行かなきゃ。」


アダムは必死に首を振る。


「来るな!」


「殺して……しまう!」


「だから行く。」


シオンは歩みを止めない。


「一人で苦しんでる奴を。」


「見捨てるくらいなら。」


「俺は最後まで馬鹿でいい。」


その言葉を聞いた瞬間。


アダムの瞳が一瞬だけ黄金へ戻る。


「……エイン。」


掠れた声だった。


「違う。」


シオンは笑う。


「俺はシオンだ。」


「でも。」


「似てるとはよく言われる。」


アダムの表情が僅かに緩む。


その一瞬を狙うように、終焉が再び侵食を始めた。


黒い腕がシオンへ襲い掛かる。


「危ない!」


アリアが飛び込む。


双剣が閃き、黒い腕を次々と斬り裂いていく。


「シオン!」


「今!」


レオニクスとヴォルグも同時に前へ出る。


「ここは俺達が抑える!」


「早く行け!」


二人は神剣を受け止め、アダムとシオンの間へ立ちはだかった。


ノアとルクスは最大規模の創世術式を展開する。


「創世術式!」


「第七階位!」


「《生命共鳴陣》!」


巨大な黄金の魔法陣が庭園全体を覆う。


しかし。


術式は完成しない。


魔法陣の半分が黒く侵食され、崩壊を始めていた。


「駄目です!」


「出力が足りません!」


リーヴァは静かにイヴを見る。


「今しかありません。」


イヴは小さく頷く。


迷いはなかった。


「シオン。」


「私の手を。」


シオンは迷わず右手を差し出す。


イヴがその手を握った瞬間。


七色の原初生命が二人の間へ集まり始める。


一匹。


十匹。


百匹。


数え切れない命の光が渦を描き、《生命の核》が強く鼓動した。


ドクン――。


ドクン――。


世界樹も同じ鼓動を刻み始める。


第五百世界。


第零世界。


二つの世界樹が、時空を越えて共鳴する。


ゴォォォォォォォン――!!


黄金の光柱が天へ伸びた。


原初生命達は歓喜するように舞い上がり、黒い瘴気を少しずつ押し返していく。


リーヴァは涙を流して微笑んだ。


「成功した……。」


「生命の核が。」


「継承者を認めた。」


シオンの身体は黄金色の粒子へ包まれていく。


《創世の継承印》は今までにない輝きを放ち、その紋章へ七色の光が刻まれていく。


アダムは震える瞳でその光景を見つめていた。


「……そんな。」


「生命の核が。」


「共鳴した。」


イヴは優しく笑う。


「兄さん。」


「見て。」


「命は。」


「一人では輝けない。」


「誰かと繋がるから。」


「強くなれる。」


その言葉と共に、シオンは静かにアダムの前へ立つ。


終焉の瘴気はまだ消えていない。


だが、その中心には確かに一人の人間が残っていた。


シオンは右手をゆっくり差し出す。


「帰ってこい。」


「アダム。」


「まだ。」


「終わってない。」


その差し出された手を見つめるアダムの瞳から、一筋の涙が静かに零れ落ちた。


しかし、その直後――


黒い瘴気の奥から、誰も聞いたことのない笑い声が響く。


『……ようやく。』


『器が完成した。』


その声はアダムのものではない。


イヴでもない。


リーヴァでもない。


終焉よりも古く、世界よりも深い闇から響く”何か”の声だった。


第零世界の空が、大きくひび割れる。

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