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ECLIPSE CHRONICLE ー エクリプス・クロニクル ー  作者: 神宮せいや
ECLIPSE CHRONICLE:REBIRTH

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304/308

始まりの庭園

ゴゴゴゴゴゴ――――。


原初世界樹が悲鳴を上げる。


幹を走る黒い亀裂は一本では終わらなかった。


二本。


三本。


無数の亀裂が枝葉へ広がり、黄金色だった葉が次々と灰へ変わっていく。


原初生命達は怯えたように空を飛び回り、小さな鳴き声を上げ始めた。


「終焉が……。」


ルナリアは空を見上げる。


第零世界の七色の空が、ゆっくり黒く染まり始めていた。


「ここまで来たのか。」


レオニクスが剣を抜く。


リーヴァは静かに首を横へ振った。


「違います。」


「終焉そのものではありません。」


「これは。」


「終焉の”影”です。」


原初世界樹の根元。


黄金の草原が黒く枯れ始める。


草花は触れられてもいないのに崩れ落ち、光の川も少しずつ色を失っていく。


シオンは七色の原初生命を胸へ抱き寄せた。


「この子を狙ってるのか。」


「はい。」


リーヴァの声は重かった。


「生命の核を取り込めば。」


「終焉は。」


「命そのものを書き換えられる。」


「だから。」


「ずっと待っていたのです。」


ノアは顔色を変える。


「まさか。」


「第五百世界で終焉が動かなかった理由は。」


「生命の核が近くにあったから。」


「ええ。」


リーヴァは静かに頷く。


「終焉は。」


「生命の核が第零世界へ戻る瞬間を待っていました。」


その言葉が終わると同時に。


ズズズズズ……


原初世界樹の根元に巨大な影が落ちる。


影には輪郭がない。


黒い霧が人の形を保っているだけ。


しかし、その存在感はアビスを遥かに超えていた。


空間が悲鳴を上げる。


時間が止まり、空気が凍り付く。


ステラは思わずシオンの後ろへ隠れた。


「怖い……。」


リシアも息を呑む。


「姿だけで。」


「世界が壊れていく。」


リーヴァは静かに前へ出た。


「来てはいけません。」


「ここは。」


「命の庭です。」


影は何も答えない。


ただ、一歩だけ前へ進む。


その一歩だけで、大地が黒く染まり、数百匹の原初生命が光となって消えた。


「やめろ!」


シオンが叫ぶ。


影は初めて動きを止める。


そして、ゆっくりとシオンを見る。


金色の瞳。


《創世の間》で見た、あの瞳だった。


『生命の核。』


『確認。』


『回収を開始する。』


低い声が第零世界全体へ響く。


リーヴァは杖を掲げる。


「シオン!」


「この先へ!」


彼女が指差した先。


原初世界樹の奥で、巨大な花園が黄金色に輝いていた。


数え切れない花々。


透き通る湖。


空へ向かって咲く樹々。


そこだけは終焉の影も届いていない。


「あれが。」


「《始まりの庭園》です!」


シオンは頷く。


「みんな!」


「走るぞ!」


全員が一斉に駆け出す。


影は追わない。


右手を静かに上げるだけだった。


その瞬間。


第零世界の空が割れる。


無数の黒い裂け目が現れ、その中から終焉の獣が次々と姿を現した。


狼。


竜。


巨鳥。


人型。


どれも黒い霧で形作られた存在。


数百。


いや、数千。


空を埋め尽くすほどの大群だった。


ヴォルグが豪快に笑う。


「やっと戦えるな!」


「嬉しそうに言わない!」


アリアが短剣を構える。


「数が多すぎる!」


「だったら。」


レオニクスが剣を掲げる。


「突破する!」


「ノア!」


「道を!」


「はい!」


ノアとルクスが同時に魔法陣を展開する。


青白い光が一直線に走り、花園までの道を切り開いた。


しかし。


黒い獣達は止まらない。


次々と降り立ち、行く手を塞ぐ。


シオンは剣を抜いた。


漆黒の刀身へ黄金色の紋様が浮かび上がる。


《創世の継承印》が共鳴し、剣は今までにない輝きを放っていた。


「行くぞ。」


「この先に。」


「世界の未来がある。」


七人は背中を預け合う。


花園まで、あと僅か。


その時だった。


花園の中心から一本の光柱が天へ伸びる。


眩い白銀の光。


その中で、一人の少女が静かに眠っていた。


白銀の長髪。


純白の衣。


胸元で両手を重ね、穏やかな表情で眠り続けている。


リーヴァは涙ぐみながら、その名を口にした。


「……ようやく。」


「会えます。」


「世界で最初の命。」


「《イヴ》に。」


その瞬間、眠っていた少女の瞼がゆっくりと開いた。


蒼く透き通る瞳が、真っ直ぐシオンを見つめる。


そして、優しく微笑んだ。


「待っていました。」


「最後の観測者。」


世界最初の少女との邂逅。


それは、全ての世界の運命を変える出会いだった。

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