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ECLIPSE CHRONICLE ー エクリプス・クロニクル ー  作者: 神宮せいや
ECLIPSE CHRONICLE

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3/53

「世界の真実」

朝日が差し込んでいた。


割れたステンドグラスから差し込む光が、静かな廃教会の床を照らしている。


昨夜の騒動が嘘のようだった。


教団兵に追われ、命からがら逃げ延びた夜。


その疲労がようやく体を眠りへ落としていた。


シオンはゆっくりと目を開く。


冷たい石床。


崩れた天井。


見慣れない景色。


そして。


すぐ隣で眠る少女。


銀色の長い髪が朝日に照らされ、まるで月光そのものが形になったように輝いていた。


ルナリア。


昨日出会ったばかりの少女。


本来なら処刑されるはずだった少女。


シオンはぼんやりと眺める。


不思議な感覚だった。


昨日まで一人だった。


誰かと朝を迎えるなんて何年ぶりだろう。


「……平和そうな顔してるな」


思わず呟く。


その瞬間だった。


ルナリアの瞳がぱちりと開く。


蒼銀色(そうぎんいろ)の瞳が真正面からシオンを捉えた。


数秒の沈黙。


そして。


「見てた?」


「見てない」


即答だった。


「嘘」


「見てない」


「絶対見てた」


「見てないって」


ルナリアはじっと見つめてくる。


シオンは視線を逸らした。


なぜか居心地が悪い。


ルナリアは小さく笑う。


その笑顔を見て、シオンも少しだけ肩の力が抜けた。


昨日まで命を狙われていた少女とは思えない。


その笑顔だけ見れば、どこにでもいる普通の少女だった。


だが。


そんな平穏は長く続かない。


シオンは表情を引き締めた。


「昨日の続きだ」


ルナリアの笑顔が消える。


「星晶が世界を壊してるって話」


静寂が落ちた。


風が吹く。


割れた窓から入り込んだ風が、ルナリアの銀髪を揺らした。


彼女はしばらく黙っていた。


言うべきか迷っているようだった。


だがやがて決意したように顔を上げる。


「知ってる?」


「星晶は感情を記録するの」


シオンは眉をひそめる。


「感情?」


「喜び」


「怒り」


「悲しみ」


「憎しみ」


ルナリアは静かに続けた。


「人間の感情そのものを、星晶は吸収している」


シオンは言葉を失った。


そんな話は聞いたことがない。


学校でも。


街でも。


教団でも。


誰も教えてくれなかった。


「当然よ」


ルナリアは苦しそうに笑った。


「教団が隠しているから」


朝の光が差し込む。


その横顔はどこか悲しそうだった。


「昔、月の民は研究していた」


「なぜ星晶が力を持つのか」


「なぜ文明が発展したのか」


「なぜ世界が浮かんでいるのか」


そして。


「私たちは真実に辿り着いてしまった」


ルナリアの声が震える。


「星晶は人間の希望だけじゃなく」


「絶望も吸収していたの」


シオンの背筋に冷たいものが走った。


ルナリアは空を見上げる。


青く輝く星晶。


人々が信仰し続けた奇跡の結晶。


だが。


「何百年も」


「何千年も」


「憎しみや悲しみを溜め込み続けた結果」


彼女は静かに言った。


「世界そのものが壊れ始めた」


シオンは言葉を失った。


人類が作り出した絶望。


それが世界を蝕んでいる。


あまりにも現実離れした話だった。


信じたい。


だが信じられない。


その時だった。


遠くから鐘の音が響く。


ゴォォォォン――


異常警報。


街全体がざわめく。


シオンが立ち上がる。


「何だ?」


次の瞬間。


夜空が赤く染まった。


巨大な爆発。


揺れる大地。


そして――


教団兵達の怒号。


「見つけたぞ!!」


ルナリアの顔色が変わる。


シオンは舌打ちした。


「話の続きは後だな」


再び、逃亡が始まる。


次回 第4話 「エクリプス教団」

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