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ECLIPSE CHRONICLE ー エクリプス・クロニクル ー  作者: 神宮せいや
ECLIPSE CHRONICLE:REBIRTH

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創世の継承印

朝日が世界樹の枝葉を黄金色に染めていた。


創世神エインの姿はもうない。


静かな《創世の間》には、風に揺れる葉の音だけが優しく響いていた。


誰も言葉を発さない。


別れの余韻が、まだ胸の奥へ残っていた。


やがてシオンがゆっくり振り返る。


「行こう。」


短い一言だった。


それだけで全員が歩き出す。


アルバとセレスは並んで深く一礼した。


「創世の継承者の皆様。」


「どうか、ご無事で。」


シオンも静かに頭を下げる。


「必ず戻る。」


「世界を救って。」


「またここへ来る。」


アルバは穏やかに微笑んだ。


「その言葉だけで十分です。」


創世の間を抜け、七人は長い回廊を歩いていく。


行きに見た景色とは違っていた。


壁一面に、歴代の世界が映し出されている。


生まれた世界。


滅びた世界。


誰にも知られず消えていった文明。


数え切れない歴史が静かに流れていた。


ステラが足を止める。


「全部、本当にあった世界なの?」


ノアがゆっくり頷く。


「ええ。」


「でも。」


「今は誰も覚えていません。」


「世界が消えると。」


「そこで生きていた人達も。」


「歴史そのものも消えてしまう。」


ステラは寂しそうに壁画を見つめた。


「かわいそう。」


「そうですね。」


リシアも静かに呟く。


「だから私達が忘れない。」


シオンは一枚の壁画の前で立ち止まる。


そこには、小さな村で笑い合う家族が描かれていた。


特別な英雄ではない。


王でもない。


どこにでもいる普通の人々。


「始祖は。」


「こういう景色を守りたかったんだな。」


ルナリアが微笑む。


「うん。」


「だから私も好き。」


「誰かの日常。」


「それが一番大切だから。」


レオニクスも壁画へ手を添えた。


「国を守ることばかり考えていた。」


「でも。」


「守るべきものは城じゃない。」


「人なんだ。」


ヴォルグが照れ臭そうに鼻を掻く。


「最近みんな真面目すぎねぇか?」


「お前が言うな。」


アリアが即座に返す。


「俺だって真面目な時くらいある。」


「一年に一回くらい?」


「少なすぎるだろ!」


久しぶりに全員が笑った。


その笑い声を聞きながら、アルバも優しく目を細める。


「始祖様。」


「やはり。」


「あなたの見る目は正しかった。」


長い階段を下りると、巨大な転移陣が待っていた。


純白の円陣。


七つの紋章が輝き、その中心には《創世の継承印》と同じ紋章が刻まれている。


セレスが静かに説明する。


「この転移陣は。」


「世界の境界までしか送れません。」


「そこから先は。」


「皆様自身の足で進んでください。」


「十分だ。」


シオンは円陣の中央へ立つ。


仲間達もその周囲へ並んだ。


アルバが杖を掲げる。


「《創世の継承者》シオン。」


「あなたへ最後の権限を継承します。」


世界樹から一筋の光が降り注ぎ、シオンの左手に刻まれた《創世の継承印》が黄金色に輝く。


ゴォォォォォン――。


塔全体が共鳴する。


転移陣がゆっくり回転を始めた。


「転移が始まります。」


セレスが一礼する。


「どうか。」


「希望を。」


シオンは小さく頷いた。


「ああ。」


「必ず。」


光が七人を包む。


視界が真っ白に染まり、身体がゆっくり浮かび上がる。


次の瞬間。


全身へ冷たい風が吹き付けた。


眩しい光が晴れる。


目の前には果てしなく広がる灰色の海。


波は一切存在しない。


風も吹いていない。


まるで時間そのものが止まっているような海だった。


水平線の彼方には、黒い霧が空まで続いている。


その中心から、不気味な鐘の音がゆっくりと響いた。


ゴォォォォン――。


ノアの表情が引き締まる。


「ここが。」


「世界の境界。」


ルクスも静かに海を見つめる。


「そして。」


「《終焉の海》の入口です。」


シオンは腰の剣へ手を添えた。


冷たい風が再び頬を撫でる。


世界の始まりへ続く旅。


そして。


本当の終焉との戦いが、静かに幕を開けようとしていた。

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