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ECLIPSE CHRONICLE ー エクリプス・クロニクル ー  作者: 神宮せいや
ECLIPSE CHRONICLE:REBIRTH

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終焉の正体

黄金の球体が静かに浮かび上がる。


《創世の核》。


世界樹の中心で脈打つその光は、生き物の鼓動のように一定のリズムを刻んでいた。


トクン――。


トクン――。


その鼓動に合わせるように、《創世の間》全体が淡く明滅する。


ステラは思わず一歩前へ出た。


「綺麗……。」


リシアも静かに頷く。


「この光。」


「世界そのものだ。」


シオンは黄金の球体を見つめながら尋ねる。


「これが世界を支えてるのか。」


『そうだ。』


エインはゆっくり頷く。


『世界には必ず一つだけ《創世の核》が存在する。』


『空も。』


『海も。』


『命も。』


『時間も。』


『全て、この核から生まれる。』


ノアが静かに息を呑む。


「だから管理者は。」


「創世の核を守っていたんですね。」


『守るというより。』


『監視していた。』


エインは少しだけ苦い笑みを浮かべる。


『核が止まれば。』


『世界は終わる。』


『それだけの話だった。』


シオンは世界樹へ視線を向けた。


「じゃあ。」


「今まで滅んだ世界も。」


『全部。』


『創世の核を失った。』


『あるいは。』


『終焉へ呑まれた。』


静寂が流れる。


エインは球体へ手をかざした。


黄金の光がゆっくり揺れ、一つの映像が映し出される。


無数の世界。


それぞれ違う空。


違う文明。


違う命。


笑い合う人々。


愛し合う家族。


子ども達の笑顔。


しかし。


次の瞬間。


一つの世界から光が消える。


創世の核が黒く染まり、大地は崩れ、空は砕け散る。


命が消え、文明が滅び、最後には星そのものが闇へ呑み込まれた。


その映像が一つでは終わらない。


二つ。


三つ。


十。


百。


千。


数え切れないほどの世界が、同じように滅んでいく。


ルナリアは思わず口元を押さえた。


「こんなに……。」


「全部滅んだの……?」


『ああ。』


エインの声は静かだった。


『私は何度も見送った。』


『何度も救おうとした。』


『でも。』


『一度も成功しなかった。』


レオニクスが低く呟く。


「だから第五百世界だけは。」


「絶対に守ろうとした。」


『そうだ。』


『五百回目で。』


『初めて希望が生まれた。』


『それが君達だった。』


シオンは黄金の球体を見つめる。


「俺達だけが違った理由は?」


エインは静かに笑う。


『君達は。』


『初めて終焉を倒した世界だから。』


「え?」


ヴォルグが目を丸くする。


「倒した?」


『今までの世界は。』


『終焉から逃げた。』


『封印した。』


『時間を巻き戻した。』


『誰かを犠牲にした。』


『だが。』


『終焉そのものへ立ち向かった世界は、一つもなかった。』


シオン達は言葉を失う。


自分達が戦ってきた戦いは、そんな意味を持っていたのか。


エインはゆっくり振り返る。


『だから終焉は。』


『君を観測した。』


『最後の観測者。』


『あいつは興味を持ってしまった。』


『世界ではなく。』


『君という存在に。』


シオンは苦笑する。


「嬉しくないな。」


『私もそう思う。』


エインも小さく笑った。


しかし、その笑みはすぐに消える。


『ここからが本題だ。』


創世の核が急激に明るく輝き始める。


黄金色だった光が、少しずつ七色へ変化していく。


アルバが静かに頭を下げた。


「始祖様。」


「いよいよですね。」


『ああ。』


エインは球体へ手を伸ばす。


その手が触れた瞬間。


パキッ。


小さな音が響いた。


創世の核へ一本の亀裂が走る。


「なっ……!」


ノアが目を見開く。


「核が壊れてる!」


アルバは苦しそうに拳を握る。


「違います。」


「これは……。」


「寿命です。」


世界から音が消えた。


シオンはゆっくりエインを見る。


「……寿命?」


『世界にも寿命がある。』


エインは静かに頷いた。


『第五百世界も例外じゃない。』


『創世の核は。』


『あと一年ほどで完全に停止する。』


その一言は、誰の予想も遥かに超えていた。


ルナリアの顔から笑みが消える。


ヴォルグも拳を握り締める。


レオニクスは険しい表情で世界樹を見上げた。


「つまり。」


「世界はまた滅ぶのか。」


『このままなら。』


『確実に。』


エインは迷いなく答えた。


『終焉が来る前に。』


『世界そのものが寿命を迎える。』


静かな絶望だった。


アビスとの戦いは終わった。


平和を取り戻した。


ようやく未来を歩き始めた。


それでも世界は、一年後に終わる。


誰も言葉を発せなかった。


そんな中、シオンだけは創世の核を真っ直ぐ見つめていた。


「……直せるんだろ。」


エインは少し驚いたように笑う。


『どうしてそう思う?』


「始祖が。」


「俺達をここまで連れてきた。」


「それだけで十分だ。」


「終わりを教えるためだけなら。」


「わざわざ希望なんて見せない。」


シオンは仲間達を見渡す。


誰も諦めていない。


ルナリアも。


レオニクスも。


アリアも。


ヴォルグも。


ノアも。


ルクスも。


全員が同じ答えを見つめていた。


「方法があるなら教えてくれ。」


「今度は。」


「俺達全員で世界を救う。」


エインは静かに目を閉じる。


そして、嬉しそうに笑った。


『その言葉を待っていた。』


世界樹の最上部から、一枚の純白の葉がゆっくりと舞い降りる。


それはシオンの掌へ落ちると、一枚の古い地図へ姿を変えた。


地図の中央には、今まで誰も見たことのない名前が刻まれている。


《始まりの庭園》


エインはその地図を見つめながら、静かに告げた。


『創世の核を救えるものは、一つだけ。』


『世界が生まれた場所。』


『第零世界の最深部――《始まりの庭園》に眠っている。』

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