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ECLIPSE CHRONICLE ー エクリプス・クロニクル ー  作者: 神宮せいや
ECLIPSE CHRONICLE:REBIRTH

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星喰いの残影

「逃げてぇぇぇぇぇッ!!」


リシアの叫びが草原へ響き渡る。


次の瞬間、彼女の身体から噴き出した黒い霧が空を覆い尽くした。


ゴォォォォォォォォォォォ――――!!


星花の光が一斉に掻き消える。


青く輝いていた花々は黒く染まり、まるで命を吸い取られるように次々と枯れていく。


「来るぞ!」


レオニクスが剣を抜き放つ。


黒い霧の中から、《ロスト》達が一斉に動き出した。


今までのような緩慢な動きではない。


獣のような速度でシオン達へ飛び掛かってくる。


「速い!」


アリアが横へ飛び退きながら短剣を振るう。


銀色の刃が《ロスト》の胸を貫き、星晶核を砕く。


一体。


二体。


三体。


光となって消えていく。


しかし、その隙間を縫うように次の《ロスト》が迫る。


「数が減らねぇ!」


ヴォルグの拳が地面を砕く。


衝撃波で十体近い《ロスト》が吹き飛ぶが、それでも後方から次々と現れる。


「終わりが見えねぇぞ!」


ノアが叫ぶ。


「本体を止めてください!」


「リシアさんが源です!」


シオンはリシアを見る。


黒い翼はさらに巨大になり、彼女の周囲だけ空間が歪み始めていた。


瞳からは涙が流れている。


それでも身体は、自分の意思とは関係なく《ロスト》を生み出し続けていた。


「……シオン。」


ステラが震える声で呟く。


「お姉ちゃん。」


「苦しそう。」


シオンは静かに頷いた。


「ああ。」


「あれはリシアさん自身が望んでる姿じゃない。」


「なら!」


ステラは涙を拭う。


「助けよう!」


その言葉を聞いたシオンは笑った。


「もちろん。」


「最初からそのつもりだ。」


レオニクスが《ロスト》を斬り伏せながら叫ぶ。


「シオン!」


「ここは俺達が押さえる!」


「お前はリシアを!」


「分かった!」


シオンは一気に駆け出す。


その進路を塞ぐように、《ロスト》が何十体も立ちはだかった。


「どけぇぇぇぇッ!」


旅用の剣を振り抜く。


鋭い一閃が三体をまとめて斬り裂き、胸の星晶核を砕く。


「ありがとう……。」


光となって消えていく《ロスト》。


誰も憎しみの表情を浮かべていなかった。


皆、安堵したように微笑んでいる。


シオンは胸が締め付けられた。


「帰る場所が欲しかっただけなんだな……。」


その時だった。


リシアの背後で黒い霧が渦を巻く。


「フフフ……。」


不気味な笑い声。


シオンの表情が変わる。


「あの声……。」


聞き覚えがあった。


アビスとの戦い。


世界の傷痕。


終焉の残滓。


「あいつか!」


黒い霧の中から、人の顔のようなものが浮かび上がる。


それは完全な姿ではない。


顔だけだった。


「最後の観測者。」


低く嗤う。


「まだ私を終わらせたと思ったか。」


ルクスが目を見開く。


「まさか!」


「残留思念……!」


ノアも歯を食いしばる。


「世界の傷痕へ僅かに残っていたんです!」


「完全には消えていなかった!」


終焉の残滓は笑い続ける。


「私は終焉ではない。」


「命が絶望する限り。」


「何度でも生まれる。」


「だから。」


「救えない。」


黒い霧がリシアの身体へさらに流れ込む。


「ぁぁぁぁぁっ!!」


リシアが苦しそうに叫ぶ。


星花が一斉に枯れていく。


草原全体が黒く染まり始めた。


ステラは泣きながら姉へ手を伸ばす。


「お姉ちゃん!」


「やめて!」


「もう苦しまないで!」


その叫びが届いたのか。


リシアの瞳へ、一瞬だけ青い光が戻る。


「……ステラ。」


「逃げて。」


「私は。」


「もう……。」


「嫌だ!」


ステラは首を横へ振る。


「今度は私がお姉ちゃんを守る!」


その言葉と共に、少女の身体が淡い星の光に包まれ始める。


ノアが驚きの声を上げた。


「星の加護が目覚めた……!」


ルクスも目を見開く。


「世界がステラを選んだ。」


シオンは二人の会話を聞きながら、ゆっくりと剣を握り直す。


「だったら。」


「俺も応える。」


剣先を黒い霧へ向ける。


「今度こそ。」


「お前を、この世界から解放する。」


終焉の残滓が不気味に笑う。


「やってみろ。」


「最後の観測者。」


黒い霧が巨大な怪物へ姿を変え、咆哮と共にシオンへ襲い掛かった。


星見の草原を巡る戦いは、ついに本当の決着の時を迎える。

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