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ECLIPSE CHRONICLE ー エクリプス・クロニクル ー  作者: 神宮せいや
ECLIPSE CHRONICLE:REBIRTH

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空を見上げて

翌朝。


新世界の空は、どこまでも澄み渡っていた。


街を包む朝霧がゆっくりと晴れ、東の空から昇った太陽が石造りの街並みを黄金色へ染めていく。


宿の窓を開けたシオンは、大きく息を吸い込んだ。


冷たい朝の空気が肺を満たす。


「……気持ちいい。」


戦いの気配はない。


魔力の暴走も。


崩壊する空も。


悲鳴も聞こえない。


鳥のさえずりだけが、静かな朝を彩っていた。


「もう起きてたの?」


後ろからルナリアの声が聞こえる。


振り返ると、眠そうに目を擦りながら部屋へ入ってきた。


「おはよう。」


「おはよう。」


シオンは笑顔で答える。


「昨日ちゃんと眠れた?」


「久しぶりにぐっすり。」


「シオンは?」


「途中で何回か目が覚めた。」


「まだ戦いの夢?」


「……うん。」


少しだけ表情が曇る。


ルナリアは何も言わず、隣へ並んで空を見上げた。


「焦らなくていいよ。」


「え?」


「全部忘れなくてもいい。」


「辛かったことも。」


「悲しかったことも。」


「全部シオンが歩いてきた道なんだから。」


シオンは少し驚いたように彼女を見る。


ルナリアは照れ臭そうに笑った。


「私もね。」


「今でも夢を見るの。」


「シオンがいなくなる夢。」


「目が覚めると怖くて。」


「ちゃんと隣にいるか探しちゃう。」


その言葉に、シオンは静かに彼女の頭へ手を置いた。


「もう大丈夫。」


「約束する。」


「今度はちゃんと帰ってくる。」


ルナリアは少しだけ頬を膨らませる。


「約束。」


「約束。」


二人は指切りを交わす。


幼い頃の子どものような、小さな約束。


それだけで心が温かくなった。


「おーい!」


宿の一階からヴォルグの大声が響く。


「朝飯できてるぞー!」


「また一番に食べてる。」


アリアの呆れた声も聞こえる。


「残しておきなさい!」


「ちゃんと残してる!」


「肉だけでしょ!」


「肉が一番大事だ!」


レオニクスのため息が聞こえた。


「朝から賑やかだな。」


シオンは思わず笑う。


ルナリアも吹き出した。


「みんな変わらないね。」


「それが一番嬉しい。」


二人は部屋を出て階段を下りる。


食堂では予想通りヴォルグが山盛りの肉へかぶりつき、アリアが呆れ顔で皿を取り上げていた。


「だから食べ過ぎ!」


「俺の肉!」


「まだあるでしょ!」


レオニクスは新聞のような紙へ目を通しながら静かにコーヒーを飲んでいる。


その光景を見たシオンは思わず吹き出した。


「何笑ってんだ。」


ヴォルグが口いっぱいに肉を頬張ったまま睨む。


「いや。」


「これが日常なんだなって。」


ヴォルグは豪快に笑った。


「当たり前だ!」


「戦いが終わったなら。」


「次は平和を楽しむ番だ!」


その時だった。


コンコン。


宿の扉が叩かれる。


店主が扉を開けると、そこにはノアが立っていた。


「皆さん。」


「準備はできていますか。」


食堂の空気が引き締まる。


シオンが立ち上がる。


「創世の塔か。」


ノアは静かに頷く。


「はい。」


「ですが。」


「その前に見ていただきたいものがあります。」


ノアは宿の外へ視線を向ける。


全員が後を追う。


街の広場には多くの人々が集まっていた。


子どもも。


老人も。


騎士も。


商人も。


皆が同じ方向を見上げている。


シオンも空を見上げた。


青空の遥か彼方。


雲の上を、七つの光がゆっくりと流れていく。


赤。


青。


白。


金。


緑。


紫。


銀。


流星のように輝くその光は、やがて一つになり、新世界全体を優しく包み込んだ。


街の人々は自然と笑顔になる。


涙を流す者もいた。


理由は誰にも分からない。


それでも胸が温かくなる。


シオンはその光を見つめながら、小さく微笑んだ。


「始祖。」


「クロノス。」


「みんな。」


「見守ってくれてるんだな。」


ルクスは静かに頷く。


「神としてではない。」


「この世界を愛した、一人の命として。」


その光景を胸へ刻みながら、シオンはゆっくりと歩き出した。


「行こう。」


「未来が待ってる。」


ルナリアが笑顔で隣へ並ぶ。


「うん。」


レオニクス、アリア、ヴォルグ、ノア、ルクスも続く。


七人は街の門を抜け、新世界の大地へ最初の一歩を踏み出した。


朝日がその背中を照らす。


長い戦いを越えた英雄たちは、今度は世界を救うためではなく、世界を育てるために歩き始める。


その旅路は、誰も知らない未来へと続いていた。

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