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ECLIPSE CHRONICLE ー エクリプス・クロニクル ー  作者: 神宮せいや
ECLIPSE CHRONICLE:REBIRTH

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新世界

虚無は静まり返っていた。


希望と絶望。


二つの意思だけが、果てのない闇の中で向かい合う。


終焉の残滓は静かに両腕を広げた。


「見せてやろう。」


「命の最後を。」


黒い霧が一瞬で膨れ上がる。


虚無を埋め尽くすほどの絶望が、シオンへ襲い掛かった。


その瞬間だった。


シオンは静かに目を閉じる。


恐怖はあった。


仲間を失うことも怖い。


また誰かが消えることも怖い。


それでも。


もう逃げない。


始祖が最後に託した未来。


クロノスが笑って送り出してくれた背中。


ルナリアとの約束。


すべてを胸に刻み、シオンはゆっくりと目を開いた。


「終わらせる。」


《ECLIPSE》が静かに輝く。


朝日が昇る直前のような、優しく温かな光。


世界群から集まった命の輝きが、一つの刃へ宿っていく。


終焉の残滓が笑う。


「そんな光で。」


「絶望は斬れない。」


「そうかもな。」


シオンは小さく笑った。


「でも。」


「人は絶望を消すために生きてるんじゃない。」


「絶望があっても。」


「前へ進むために生きてる。」


一歩踏み出す。


黒い霧が身体を蝕む。


皮膚が裂け、血が舞う。


それでも足は止まらない。


「始祖。」


もう返事はない。


「クロノス。」


笑い声も聞こえない。


「みんな。」


「ここまで連れてきてくれてありがとう。」


その言葉と共に、《ECLIPSE》が今までで最も強く輝いた。


透明だった刀身は、世界そのものを映すような虹色へ変わる。


エインが静かに微笑む。


「完成した。」


ルクスも息を呑む。


「世界自身が。」


「彼を選んだ。」


終焉の残滓が初めて表情を歪める。


「あり得ない。」


「世界は命を選ばない。」


「選ぶさ。」


シオンは迷わず踏み込んだ。


「世界は。」


「命が創るんだから。」


《ECLIPSE》が振り下ろされる。


音はなかった。


ただ一筋の光だけが虚無を貫いた。


その光は終焉の残滓を包み込み、黒い霧を静かに浄化していく。


男は驚いたように自分の身体を見下ろした。


黒い身体が少しずつ光へ変わっていく。


「なぜ……。」


「私は絶望だ。」


「違う。」


シオンは静かに答えた。


「お前も誰かの願いから生まれた。」


「だから。」


「救われてもいい。」


男は目を見開く。


長い沈黙の後、小さく笑った。


「……初めてだ。」


「そんなことを言われたのは。」


その身体は無数の光となって虚無へ溶けていく。


消える直前、男はシオンへ微笑んだ。


「ありがとう。」


「最後の観測者。」


光が弾ける。


世界を覆っていた黒い霧が、一瞬で晴れていく。


崩壊していた世界群が静かに震え始めた。


第五百世界。


新世界。


砕け散っていた世界の欠片が、一つ、また一つと元の場所へ戻っていく。


エインは空を見上げる。


「始まる。」


「新しい世界が。」


ネメシスは穏やかに笑う。


「ようやく。」


「終焉の役目も終わる。」


アビスは静かにシオンの隣へ立った。


「君がいたから。」


「私は終わりを恐れなくて済んだ。」


シオンは照れ臭そうに笑う。


「仲間だろ。」


その一言に、アビスも初めて自然な笑みを浮かべた。


虚無の果てから朝日にも似た光が差し込む。


エインの身体は少しずつ粒子となって空へ還り始めていた。


「シオン。」


「これから先。」


「世界は、お前達が創る。」


「俺達が?」


「神はいらない。」


「創世神も。」


「観測者も。」


「これからは。」


「命自身が未来を選ぶ時代だ。」


シオンはゆっくり頷いた。


「分かった。」


「約束する。」


「みんなで。」


「この世界を守る。」


エインは満足そうに笑った。


「それでいい。」


創世の光が静かに空へ昇る。


ネメシスも。


アビスも。


ルクスも。


それぞれが新たな役割を胸に、未来を見つめていた。


そしてシオンは、再生を始めた世界群へ静かに手を伸ばす。


「帰ろう。」


その一言と共に、眩い光が虚無を包み込む。


長く続いた外界との戦いは、ここで幕を閉じた。


だが、それは終わりではない。


再生した世界では、新たな時代が静かに動き始めている。


誰も知らない未来。


誰も歩いたことのない世界。


その最初の一歩を踏み出すために。


最後の観測者は、仲間たちが待つ空へ帰っていく。

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