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ECLIPSE CHRONICLE ー エクリプス・クロニクル ー  作者: 神宮せいや
ECLIPSE CHRONICLE:REBIRTH

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創世の継承者

黒い球体は、ゆっくりと脈動していた。


ドクン――。


鼓動のたびに世界群が軋む。


第五百世界の空へ新たな亀裂が走り、新世界では世界樹オメガの枝葉が次々と光へ還っていく。


シオンは《ECLIPSE》を握り締めたまま、黒い球体から目を離さなかった。


「……あれが終焉そのもの。」


ルクスは険しい表情で頷く。


「終焉という概念が、自我を持った存在。」


「アビスは何億年もの間、それを自らの中へ封じ続けていた。」


エインは静かに息を吐く。


「だから世界は続いた。」


「始祖が命を創れたのも。」


「七柱が生まれたのも。」


「全てはアビスが耐え続けていたからだ。」


シオンは白い姿へ戻ったアビスを見る。


その身体は少しずつ透け始めていた。


「お前……。」


アビスは優しく微笑む。


「封印を解いた以上。」


「私はもう長く存在できない。」


「またそれかよ。」


シオンは苦笑した。


「始祖も。」


「クロノスも。」


「今度はお前まで。」


「どうしてみんな最後は消えようとする。」


アビスは少し困ったように笑う。


「私達は役目を終えた存在だから。」


「違う。」


シオンは即座に否定した。


「役目を終えたから消えるんじゃない。」


「生きて、次の世界を見ればいい。」


「世界は。」


「もうお前らだけのものじゃない。」


その言葉に、アビスは静かに目を閉じた。


「……温かい言葉だ。」


「初めて言われた。」


その時だった。


黒い球体へ一本の亀裂が走る。


パキッ。


小さな音。


だが次の瞬間、亀裂は一気に球体全体へ広がった。


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ――――!!


漆黒の殻が砕け散り、その中心から巨大な黒い結晶が姿を現す。


結晶の内部には、一人の少年が眠っていた。


黒い髪。


閉じられた瞳。


年齢はシオンと変わらない。


しかし、その身体から放たれる終焉の気配は、今までのどの敵とも比べものにならない。


「人……?」


シオンが思わず呟く。


エインはゆっくり首を横へ振る。


「違う。」


「命が誕生する前。」


「世界が終わるという概念だけが形を持った姿だ。」


ネメシスは苦しそうに息を呑む。


「目を覚ます前に止めろ。」


「完全に覚醒すれば。」


「世界群は一瞬で消える。」


シオンは《ECLIPSE》を構えた。


しかし足は動かない。


眠る少年の顔は、あまりにも穏やかだった。


まるで悪意など存在しない。


ただ眠っているだけ。


「斬れないのか。」


ルクスが静かに問う。


「……ああ。」


シオンは正直に答えた。


「こいつは。」


「誰かを憎んでる顔じゃない。」


「苦しそうな顔をしてる。」


その瞬間。


眠っていた少年が、ゆっくりと瞳を開く。


瞳は深い漆黒だった。


そこには怒りも憎しみもない。


あるのは底知れない孤独だけ。


少年は周囲を見回し、小さく呟く。


「……ここは。」


その声は幼かった。


シオンは剣を下ろさないまま、一歩前へ出る。


「名前は。」


少年は首を傾げる。


「……ない。」


「誰も。」


「僕を呼んだことがない。」


静寂が流れる。


アビスは悲しそうに目を伏せた。


「終焉に名前は必要ない。」


「そう教えられてきた。」


シオンは小さく笑った。


「じゃあ今日から必要だ。」


全員がシオンを見る。


「名前がないなら。」


「俺が付ける。」


ルクスが目を見開く。


「何を考えている。」


「名前を持てば。」


「そいつは一人じゃなくなる。」


シオンは少年へ歩み寄る。


《ECLIPSE》を鞘へ納め、右手を差し出した。


「俺はシオン。」


「お前は?」


少年は差し出された手を見つめる。


何億年もの間。


誰からも手を差し伸べられたことなどなかった。


震える指先が、ゆっくりとシオンの手へ触れる。


その瞬間。


世界群すべてを包むような白い光が溢れ出した。


終焉が。


初めて誰かと繋がった瞬間だった。


しかし、その光の中でエインだけは険しい表情を崩さなかった。


「シオン……。」


「まだ終わっていない。」


光の奥。


砕け散った黒い結晶の最深部から、誰かの笑い声が響く。


「フフ……。」


少年でもない。


アビスでもない。


ルクスでもない。


その笑い声を聞いた瞬間、ネメシスの顔から血の気が引いた。


「……嘘だ。」


「まだ残っていたのか。」


光の中から、一つの影がゆっくりと立ち上がる。


本当の終焉は。


今、初めてその姿を現そうとしていた。

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