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ECLIPSE CHRONICLE ー エクリプス・クロニクル ー  作者: 神宮せいや
ECLIPSE CHRONICLE:REBIRTH

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最後の創世神

「その願い。本当に、お前一人で背負えるのか。」


ネメシスの問いは静かだった。


責めるような響きも、嘲るような感情もない。


ただ純粋な疑問。


それだけだった。


シオンは《オブザーバー・レガリア》を下ろさず答える。


「一人じゃない。」


ネメシスは僅かに首を傾ける。


「世界はもう壊れた。」


「七柱も消えた。」


「世界海もない。」


「それでも、お前は一人ではないと言うのか。」


「当たり前だ。」


シオンは迷わなかった。


「俺には帰る場所がある。」


「仲間がいる。」


「約束した奴らがいる。」


「だから俺は一人じゃない。」


ネメシスは黙り込む。


その沈黙は長かった。


まるで、その言葉を理解しようとしているようだった。


エインが静かにシオンの隣へ立つ。


「それが命だ。」


「互いを繋ぎ、支え合う。」


「だから滅んでも、また立ち上がる。」


ネメシスはエインを見つめる。


「……お前は昔からそうだった。」


「命を信じ続けた。」


「だから世界を生んだ。」


エインは微笑んだ。


「後悔はしていない。」


「たとえ何度滅びてもか。」


「何度でも。」


「命は終わりから始まれる。」


その言葉に、ネメシスはゆっくりと目を閉じる。


「理解できない。」


「だが。」


「少しだけ興味がある。」


虚無が震えた。


ネメシスの背後に無数の黒い輪が現れ、その一つ一つへ崩壊した世界群が映し出される。


第五百世界ではレオニクスが最後まで剣を握り続けている。


アリアは瓦礫の下から幼い子どもを救い出していた。


ヴォルグは笑いながら崩れ落ちる城門を支えている。


新世界ではエルディアが世界樹オメガへ両手を添え、泣きながらシオンの名を呼んでいた。


ネメシスはその景色を見つめる。


「彼らは。」


「死ぬと分かっていて戦っている。」


「そうだ。」


シオンは静かに答える。


「無意味じゃないのか。」


「違う。」


「生きたいから戦うんじゃない。」


「守りたい奴がいるから戦う。」


ネメシスは初めて眉を動かした。


「守る。」


「その概念が理解できない。」


シオンは一歩踏み出す。


「なら教えてやる。」


「俺達は誰かのために泣く。」


「誰かのために笑う。」


「誰かのために命を懸ける。」


「それが人間だ。」


虚無へ静寂が落ちた。


ネメシスは長い時間、何も答えなかった。


やがて小さく息を吐く。


「……だから。」


「エインは命を創ったのか。」


エインは穏やかに頷いた。


「一人では見ることのできない景色を見たかった。」


「笑う者。」


「泣く者。」


「愛する者。」


「憎む者。」


「その全てが、世界を美しくした。」


ネメシスは空を見上げる。


いや、空ではない。


崩壊し続ける無数の世界だった。


「私は終わりだけを見続けた。」


「始まりを見ることはなかった。」


その声には初めて寂しさが滲んでいた。


シオンは剣を鞘へ納める。


「だったら来い。」


ネメシスが視線を向ける。


「俺が見せてやる。」


「終わりじゃない。」


「その先を。」


エインは少し驚いたようにシオンを見る。


「戦わないのか。」


「必要なら戦う。」


シオンは笑った。


「でも。」


「こいつは今まで誰とも話してこなかっただけだ。」


「だったら。」


「まず話す。」


ネメシスの瞳が僅かに揺れる。


それは初めて生まれた迷いだった。


しかし、その瞬間だった。


ズガァァァァァァァァァァァン――――!!


虚無のさらに奥。


ネメシスの背後に広がる漆黒が、突然縦に裂ける。


ネメシスの表情が初めて変わった。


「……まさか。」


エインも息を呑む。


「遅かったか。」


裂け目の奥から現れたのは、巨大な黒い鎖だった。


一本ではない。


何千、何万という鎖がネメシスの身体へ巻き付き始める。


ネメシスは苦しそうに顔を歪めた。


「これは……!」


シオンは剣を抜く。


「何が起きてる!」


エインの声は、今までで最も緊迫していた。


「違う!」


「ネメシスは敵じゃない!」


「あれが本当の敵だ!」


虚無の裂け目の向こうで、何かがゆっくりと目を開く。


その瞬間。


エインの顔から初めて笑みが消えた。


「創世より前の存在ではない……。」


「さらに、その前から存在していた”原初の虚無”が目覚めた。」


ネメシスは鎖に囚われながら、シオンへ手を伸ばす。


「最後の……観測者……。」


「世界を……頼む。」


その叫びは、悲鳴にも似ていた。

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