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ECLIPSE CHRONICLE ー エクリプス・クロニクル ー  作者: 神宮せいや
ECLIPSE CHRONICLE

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24/52

「星喰い」

夜空の中央に。


一本の亀裂が走った。


最初は細かった。


まるで硝子に入った小さな傷のように。


だが次の瞬間。


その亀裂は音もなく広がり始める。


ピシッ――


空が割れる。


誰も理解できなかった。


理解したくなかった。


だが。


本能だけは知っていた。


見てはいけないものが現れようとしている。


「な……」


防衛隊の兵士が震える。


「何だよ……あれ……」


教団軍も動揺していた。


誰も戦うことを忘れ。


誰もが空を見上げていた。


世界樹の光すら霞むほどの異常。


アストレア全域が沈黙している。


そして。


亀裂の向こう側から。


何かがこちらを覗いた。


巨大な瞳。


赤い。


ただ赤いだけではない。


血のような赤。


終焉のような赤。


絶望そのものが形になったような瞳だった。


あまりにも巨大だった。


山など比べ物にならない。


世界樹ですら小さく見える。


まるで空の向こうにもう一つの世界が存在し。


その世界の主がこちらを見下ろしているようだった。


誰も呼吸ができない。


身体が動かない。


魂が凍り付く。


それほどの存在感。


レオニクスの顔から血の気が消えた。


「まさか……」


その声は震えていた。


世界最高の学者。


禁書を読み尽くした男。


その彼ですら恐怖している。


「星喰い……」


その名が零れ落ちる。


瞬間。


アストレア中が凍り付いた。


星喰い。


世界崩壊の元凶。


文明を滅ぼす災厄。


神話。


伝説。


空想。


そう思われていた存在。


だが。


違った。


存在していた。


今。


目の前に。


教団軍の兵士達が膝をつく。


恐怖だった。


本能が理解している。


勝てない。


逃げられない。


抗えない。


あれは人が戦う相手ではない。


セラフィナも空を見上げていた。


蒼い瞳が大きく揺れている。


七星将。


氷晶将。


感情を失った少女。


そんな彼女ですら恐怖していた。


「これが……」


声が震える。


「星喰い……」


空の向こう。


巨大な瞳がゆっくりと細められる。


そして。


笑った。


世界が震えた。


『見つけた』


声。


だが耳で聞くものではない。


頭の中へ直接響く。


魂そのものへ刻まれる声。


『見つけたぞ』


アストレア全域へ響き渡る。


市民達が耳を塞ぐ。


研究員達が倒れる。


教団軍が悲鳴を上げる。


ただ声を聞いただけで精神が削られていく。


圧倒的だった。


格が違う。


存在の次元が違う。


巨大な瞳はゆっくりと動く。


そして。


その視線が止まった。


シオン。


黒星王。


その一点だけを見つめていた。


『黒星王』


黒い粒子が揺れる。


シオンは睨み返した。


恐怖はない。


不思議なほど冷静だった。


むしろ。


懐かしさを感じていた。


会ったことがある。


どこかで。


ずっと昔に。


何度も。


そんな感覚。


星喰いが笑う。


『やはりお前か』


その瞬間。


シオンの頭へ大量の映像が流れ込んだ。


燃える空。


崩壊する世界。


倒れていく仲間達。


世界樹の消滅。


ルナリアの涙。


アリアの叫び。


ガルドの最期。


そして。


自分自身。


黒い王冠を被った自分が。


世界の終わりを見つめていた。


「ぐっ……!」


頭が割れそうになる。


黒星晶が脈動する。


ドクン。


ドクン。


ドクン。


ルナリアが叫んだ。


「シオン!」


だがシオンは倒れない。


黒い瞳で空を見上げる。


星喰いは続ける。


『三度目も同じか』


レオニクスが息を呑んだ。


三度目。


禁書にしか記されていない言葉。


世界は繰り返している。


滅び。


再生し。


また滅びる。


その中心に存在したのが。


黒星王。


最後の観測者。


『観測者よ』


巨大な瞳が細められる。


『また世界を救うのか』


静かな声。


だが。


その奥には嘲笑があった。


『また失敗するのか』


シオンは拳を握る。


『それとも』


世界が軋む。


『今度こそ壊すのか』


沈黙。


誰も言葉を発せない。


アストレア。


教団軍。


七星将。


全てがその答えを待っていた。


シオンは静かに目を閉じる。


仲間達の顔が浮かぶ。


ルナリア。


アリア。


エリナ。


ガルド。


レオニクス。


今まで出会った人達。


守りたいもの。


失いたくないもの。


そして。


二度と繰り返したくない未来。


ゆっくりと目を開く。


黒い瞳が星喰いを見据える。


「決まってる」


静かな声。


だが。


誰よりも強かった。


「全部守る」


その瞬間。


黒い光が空へ駆け上がった。


世界が震える。


星喰いが初めて沈黙した。


そして。


ルナリアの胸元で。


月のペンダントが輝き始める。


最初は小さな光だった。


だが。


次第に強くなる。


暖かい。


優しい。


まるで夜空に浮かぶ月のような光。


レオニクスが目を見開いた。


「まさか……」


震える声。


信じられないものを見るように。


月光はさらに強くなる。


ルナリア自身も戸惑っていた。


「何……これ……」


胸が熱い。


心が震える。


何かが呼んでいる。


遠い記憶の向こうから。


誰かが。


優しく。


名前を呼んでいる。


そして。


彼女の背中から。


淡い光が溢れ始めた。


月光の粒子。


無数の光。


それは少しずつ形を成していく。


翼だった。


神々しい月光の翼。


誰もが息を呑む。


黒星王。


そして。


月の継承者。


二つの鍵が。


ついに揃おうとしていた。 17話「黒星王VS氷晶将」


第四章 《星喰い》


夜空の中央に。


一本の亀裂が走った。


最初は細かった。


まるで硝子に入った小さな傷のように。


だが次の瞬間。


その亀裂は音もなく広がり始める。


ピシッ――


空が割れる。


誰も理解できなかった。


理解したくなかった。


だが。


本能だけは知っていた。


見てはいけないものが現れようとしている。


「な……」


防衛隊の兵士が震える。


「何だよ……あれ……」


教団軍も動揺していた。


誰も戦うことを忘れ。


誰もが空を見上げていた。


世界樹の光すら霞むほどの異常。


アストレア全域が沈黙している。


そして。


亀裂の向こう側から。


何かがこちらを覗いた。


巨大な瞳。


赤い。


ただ赤いだけではない。


血のような赤。


終焉のような赤。


絶望そのものが形になったような瞳だった。


あまりにも巨大だった。


山など比べ物にならない。


世界樹ですら小さく見える。


まるで空の向こうにもう一つの世界が存在し。


その世界の主がこちらを見下ろしているようだった。


誰も呼吸ができない。


身体が動かない。


魂が凍り付く。


それほどの存在感。


レオニクスの顔から血の気が消えた。


「まさか……」


その声は震えていた。


世界最高の学者。


禁書を読み尽くした男。


その彼ですら恐怖している。


「星喰い……」


その名が零れ落ちる。


瞬間。


アストレア中が凍り付いた。


星喰い。


世界崩壊の元凶。


文明を滅ぼす災厄。


神話。


伝説。


空想。


そう思われていた存在。


だが。


違った。


存在していた。


今。


目の前に。


教団軍の兵士達が膝をつく。


恐怖だった。


本能が理解している。


勝てない。


逃げられない。


抗えない。


あれは人が戦う相手ではない。


セラフィナも空を見上げていた。


蒼い瞳が大きく揺れている。


七星将。


氷晶将。


感情を失った少女。


そんな彼女ですら恐怖していた。


「これが……」


声が震える。


「星喰い……」


空の向こう。


巨大な瞳がゆっくりと細められる。


そして。


笑った。


世界が震えた。


『見つけた』


声。


だが耳で聞くものではない。


頭の中へ直接響く。


魂そのものへ刻まれる声。


『見つけたぞ』


アストレア全域へ響き渡る。


市民達が耳を塞ぐ。


研究員達が倒れる。


教団軍が悲鳴を上げる。


ただ声を聞いただけで精神が削られていく。


圧倒的だった。


格が違う。


存在の次元が違う。


巨大な瞳はゆっくりと動く。


そして。


その視線が止まった。


シオン。


黒星王。


その一点だけを見つめていた。


『黒星王』


黒い粒子が揺れる。


シオンは睨み返した。


恐怖はない。


不思議なほど冷静だった。


むしろ。


懐かしさを感じていた。


会ったことがある。


どこかで。


ずっと昔に。


何度も。


そんな感覚。


星喰いが笑う。


『やはりお前か』


その瞬間。


シオンの頭へ大量の映像が流れ込んだ。


燃える空。


崩壊する世界。


倒れていく仲間達。


世界樹の消滅。


ルナリアの涙。


アリアの叫び。


ガルドの最期。


そして。


自分自身。


黒い王冠を被った自分が。


世界の終わりを見つめていた。


「ぐっ……!」


頭が割れそうになる。


黒星晶が脈動する。


ドクン。


ドクン。


ドクン。


ルナリアが叫んだ。


「シオン!」


だがシオンは倒れない。


黒い瞳で空を見上げる。


星喰いは続ける。


『三度目も同じか』


レオニクスが息を呑んだ。


三度目。


禁書にしか記されていない言葉。


世界は繰り返している。


滅び。


再生し。


また滅びる。


その中心に存在したのが。


黒星王。


最後の観測者。


『観測者よ』


巨大な瞳が細められる。


『また世界を救うのか』


静かな声。


だが。


その奥には嘲笑があった。


『また失敗するのか』


シオンは拳を握る。


『それとも』


世界が軋む。


『今度こそ壊すのか』


沈黙。


誰も言葉を発せない。


アストレア。


教団軍。


七星将。


全てがその答えを待っていた。


シオンは静かに目を閉じる。


仲間達の顔が浮かぶ。


ルナリア。


アリア。


エリナ。


ガルド。


レオニクス。


今まで出会った人達。


守りたいもの。


失いたくないもの。


そして。


二度と繰り返したくない未来。


ゆっくりと目を開く。


黒い瞳が星喰いを見据える。


「決まってる」


静かな声。


だが。


誰よりも強かった。


「全部守る」


その瞬間。


黒い光が空へ駆け上がった。


世界が震える。


星喰いが初めて沈黙した。


そして。


ルナリアの胸元で。


月のペンダントが輝き始める。


最初は小さな光だった。


だが。


次第に強くなる。


暖かい。


優しい。


まるで夜空に浮かぶ月のような光。


レオニクスが目を見開いた。


「まさか……」


震える声。


信じられないものを見るように。


月光はさらに強くなる。


ルナリア自身も戸惑っていた。


「何……これ……」


胸が熱い。


心が震える。


何かが呼んでいる。


遠い記憶の向こうから。


誰かが。


優しく。


名前を呼んでいる。


そして。


彼女の背中から。


淡い光が溢れ始めた。


月光の粒子。


無数の光。


それは少しずつ形を成していく。


翼だった。


神々しい月光の翼。


誰もが息を呑む。


黒星王。


そして。


月の継承者。


二つの鍵が。


ついに揃おうとしていた。

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