↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ECLIPSE CHRONICLE ー エクリプス・クロニクル ー  作者: 神宮せいや
ECLIPSE CHRONICLE:REBIRTH

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
239/310

アダムの真実

ドクン――。


ドクン――。


最後の観測者の紋章が脈動する。


その鼓動に呼応するように、《創世契約書》がゆっくりと浮かび上がった。


ページが風もない神域で独りでにめくられていく。


一ページ。


二ページ。


十ページ。


百ページ。


そこに記されていたのは、世界が誕生してから現在までの、すべての歴史だった。


シオンは観測者の瞳で契約書を見つめる。


無数の文字列が頭の中へ流れ込む。


創造主。


終焉。


黒星王。


世界再構築。


第五百世界。


そして――


管理者機構。


「……!」


シオンの瞳が大きく見開かれた。


「違う。」


「今までの歴史と違う。」


始祖も契約書を見つめる。


「何が見えた?」


シオンは静かに答えた。


「管理者は世界を支配するために生まれたんじゃない。」


「世界を監視するためでもない。」


「本当の役目は……。」


その瞬間だった。


神域全体へ重い足音が響く。


コツ――。


コツ――。


コツ――。


白い階段の最上段。


空間がゆっくりと歪み始める。


黒でも黄金でもない。


銀白色の光が集まり、一人の男が姿を現した。


長い白銀の髪。


漆黒の法衣。


その胸元には、円環を象った管理者の紋章。


仮面は付けていない。


穏やかな顔立ち。


知的な蒼銀の瞳。


第20話で現れたアダムとは違う姿だった。


始祖はゆっくり目を見開く。


「……アダム。」


男は小さく微笑んだ。


「久しぶりだ。」


「始祖。」


その声には敵意がない。


クロノスのような悲しみもない。


ただ長い年月を生きた者だけが持つ静けさがあった。


シオンは剣を抜かない。


観測者の直感が告げている。


この男は敵ではない。


アダムはゆっくり契約書へ近付いた。


「ようやく。」


「ここまで来たか。」


その視線はシオンへ向けられる。


「最後の観測者。」


シオンは問い掛ける。


「教えてくれ。」


「管理者って何なんだ。」


アダムは契約書へ手を添えた。


静かな声で語り始める。


「管理者とは。」


「神を管理する者だ。」


世界が静まり返る。


始祖も何も言わない。


その事実を否定できないからだ。


アダムは続ける。


「神は完全ではない。」


「生命を愛しすぎれば始祖になる。」


「記録を愛しすぎればクロノスになる。」


「可能性を求めすぎればルシエルになる。」


「誰もが均衡を失う。」


「だから。」


「神を止める存在が必要だった。」


シオンは静かに頷く。


「それがお前。」


「いや。」


アダムは首を横へ振る。


「管理者という役目だ。」


「私は初代に過ぎない。」


その瞬間。


契約書の最後のページが開く。


そこには一つだけ。


署名されていない空欄が残っていた。


始祖の表情が変わる。


「まだ……残っていたのか。」


アダムは静かに頷く。


「七柱の契約。」


「そして。」


「八番目の契約者。」


シオンは眉をひそめる。


「八番目?」


「そうだ。」


アダムの瞳が真っ直ぐシオンを見る。


「この契約には最初から。」


「もう一人加わる予定だった。」


静寂。


始祖が苦しそうに目を閉じる。


「だが。」


「その席は誰も座れなかった。」


「世界は未完成のまま始まった。」


シオンは契約書を見る。


確かに空欄がある。


そこだけが白い光を放っていた。


アダムは静かに微笑む。


「その席は。」


「観測者のために残された席だ。」


「七柱では救えなかった未来。」


「七柱では辿り着けなかった可能性。」


「それを完成させる存在。」


「それが最後の観測者。」


シオンは何も答えない。


胸の紋章だけが静かに鼓動を続ける。


ドクン――。


ドクン――。


その鼓動に呼応するように。


契約書の空欄が蒼く輝き始めた。


しかし。


その瞬間だった。


ズガァァァァァァァァァン――――!!


神域全体が激しく揺れる。


七柱の神像すべてへ一斉に亀裂が走った。


始祖が振り返る。


「この気配は……!」


アダムの表情から初めて笑みが消える。


「封印が破られた。」


シオンも剣を抜く。


神域の遥か上空。


白い空間が裂け。


そこから一つの巨大な”眼”が静かに開いた。


その眼は。


始祖よりも。


クロノスよりも。


アダムよりも。


さらに古い存在の気配を放っていた。


アダムは低く呟く。


「……ついに目覚めたか。」


「創世以前の神が。」


神域はかつてない震動に包まれる。


最後の観測者は、ついに世界誕生以前の真実へ足を踏み入れようとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。