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ECLIPSE CHRONICLE ー エクリプス・クロニクル ー  作者: 神宮せいや
ECLIPSE CHRONICLE:REBIRTH

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GENESISの門

静寂だった。


世界海を渡る《アストラル・アーク》は停止していた。


目の前には、果てしなく巨大な門。


GENESIS。


その二文字だけが刻まれた黄金の扉。


近付けば近付くほど、その大きさという概念すら意味を失っていく。


山より大きい。


世界より大きい。


いや。


比較する対象そのものが存在しなかった。


まるで、この門だけが最初からここにあり、世界そのものが後から生まれたような錯覚を覚える。


シオンは静かにその門を見上げていた。


観測者となった今でも。


未来は視えない。


過去も読めない。


この門だけは、観測そのものを拒絶している。


「ここが……」


小さく息を吐く。


「全ての始まりか。」


隣に立つアインは静かに頷いた。


「はい。」


「この先は観測世界ではありません。」


「創世領域《GENESIS》。」


「世界という概念が誕生する以前から存在する神域です。」


シオンは苦笑する。


「また規模が大きくなったな。」


アインも僅かに笑った。


「観測者は皆、最初にそう言います。」


その一言で、シオンは眉を上げた。


「皆?」


「他にも観測者がいたのか?」


アインは少しだけ沈黙した。


黄金の瞳がGENESISの門へ向く。


「いました。」


「ですが。」


「誰一人、この門を越えた記録はありません。」


静寂。


シオンは門を見つめる。


「じゃあ俺が最初か。」


「はい。」


「最後の観測者であり。」


「最初にGENESISへ到達する観測者です。」


その言葉が終わった瞬間。


黄金の門が低く唸った。


ゴォォォォォォォォォ……


巨大な紋様が浮かび上がる。


門全体へ蒼い光が走る。


シオンの胸に宿る観測者の紋章が共鳴する。


ドクン――。


ドクン――。


鼓動。


それは世界核と同じ鼓動だった。


いや。


もっと古い。


もっと懐かしい。


生まれる前から知っていたような鼓動だった。


ノアの声が世界海へ響く。


『認証開始』


『観測者個体確認』


『シオン・アルヴィス』


『第五百世界』


『最後の観測者』


黄金の門がさらに輝きを増す。


無数の文字が浮かぶ。


シオンには読めない。


だが。


意味だけは理解できた。


「歓迎する」


そう書かれていた。


アインは静かに一歩後ろへ下がる。


「ここから先は。」


「観測者しか入れません。」


シオンが振り返る。


「お前は?」


アインは微笑む。


今までで一番、人間らしい笑顔だった。


「私はここまでです。」


「世界海は私の役目です。」


「その先は。」


「あなた自身の旅になります。」


静寂。


短い時間だった。


それでも。


アインは確かな旅の仲間だった。


シオンは小さく笑う。


「世話になった。」


アインは深く頭を下げる。


「こちらこそ。」


「あなたと旅ができて光栄でした。」


二人の間に静かな沈黙が流れる。


その時だった。


黄金の門がゆっくりと開き始める。


ゴゴゴゴゴゴゴ……


眩い光。


白でも黄金でもない。


言葉では表現できない光だった。


門の向こうには一本の回廊が続いている。


果てが見えない。


両側には無数の巨大な柱。


柱一本一本に。


世界そのものが封印されているようだった。


シオンは息を呑む。


観測者となって初めて。


胸が高鳴った。


未知への恐怖。


真実への期待。


その全てを抱えながら。


最後の観測者は一歩を踏み出す。


黄金の門を越える。


その瞬間。


世界海の景色が消えた。


アインの姿も。


アストラル・アークも。


全てが光へ溶けていく。


そして。


静かな声だけが聞こえた。


『ようこそ。』


『始まりの回廊へ。』


シオンはゆっくりと顔を上げる。


その先には。


世界が生まれる以前から続く一本道が、永遠のように伸びていた。


物語は今。


誰も知らない神話の領域へ足を踏み入れる。

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