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ECLIPSE CHRONICLE ー エクリプス・クロニクル ー  作者: 神宮せいや
ECLIPSE CHRONICLE:REBIRTH

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蒼穹の観測剣

蒼い光が世界海を包み込んだ。


《オブザーバー・レガリア》。


最後の観測者だけが扱う権能兵装。


その刀身が静かに震えている。


シオンは漆黒の剣を受け止めたまま、一歩も退かなかった。


ギギギギギギギギ……


蒼銀と漆黒。


二つの概念が激しく衝突し、火花ではなく星々が弾け飛ぶ。


世界海へ無数の流星が降り注ぐ。


アインは必死に船を支えていた。


「駄目です……!」


「このままでは押し切られます!」


シオンは黙ったまま敵を見据える。


アビス・イーター。


始祖直属殲滅兵器。


その動きは単純だった。


だが。


無駄が一切ない。


剣を振るうたび。


世界法則そのものが崩壊していく。


「……なるほど。」


シオンは静かに呟いた。


「お前には未来がないんだな。」


アビス・イーターは止まらない。


感情も。


迷いも。


恐怖も。


何一つ存在しない。


だから未来は一つ。


破壊だけ。


シオンはゆっくり目を閉じる。


観測者の権能が世界海全体へ広がっていく。


一つの未来。


十の未来。


百の未来。


千の未来。


一万。


十万。


百万。


無数の可能性が蒼い瞳へ流れ込む。


その膨大な情報量に、世界海そのものが共鳴を始めた。


アインは息を呑む。


「そんな……。」


「未来を全部観測している……。」


ノアの光が静かに脈動する。


『観測演算増加』


『未来分岐演算率九十八パーセント』


『歴代観測者の記録を超過』


シオンの額から一筋の汗が流れる。


観測者であっても限界はある。


無限に近い未来を見続ける代償は大きい。


それでも。


止めるわけにはいかなかった。


その時だった。


一つの未来が視えた。


黒い世界。


崩壊する世界海。


アビス・イーターの勝利。


そして。


その奥で静かに笑う始祖。


だが。


もう一つの未来も視えた。


蒼い光。


守られた世界。


無傷の世界海。


そして。


希望を繋ぐ一筋の道。


シオンはゆっくり目を開く。


蒼い瞳に迷いはない。


「見つけた。」


静かな声だった。


「たった一つだけ。」


アビス・イーターの無数の瞳が一斉に動く。


まるでシオンの変化を察知したようだった。


次の瞬間。


漆黒の剣が消える。


「速い!」


アインが叫ぶ。


しかし。


シオンは驚かなかった。


もう見えている。


一秒先も。


十秒先も。


その先の未来も。


「そこだ。」


シオンは身体を反転させる。


アビス・イーターの斬撃が空を裂く。


その刃を紙一重で躱しながら。


蒼銀の剣を横一文字に振り抜いた。


――閃光。


世界海を貫く一本の蒼い軌跡。


ズガァァァァァァァァァァァン!!


アビス・イーターの右腕が宙を舞う。


黒い結晶が砕け散り。


無数の眼球が悲鳴を上げる。


初めてだった。


始祖直属の眷属が傷付いたのは。


アインは思わず息を止める。


「斬った……。」


ノアの声が響く。


『損傷確認』


『アビス・イーター右腕部欠損』


『観測者優勢』


だが。


シオンは表情を変えなかった。


蒼い瞳は黒い核だけを見つめている。


「違う。」


静かな声。


「まだ終わってない。」


案の定だった。


切断された右腕が黒い粒子へ変わる。


世界海の闇を吸収しながら。


ゆっくりと再生を始める。


アインの顔が曇る。


「再生能力……。」


「やはり始祖の力が流れています。」


シオンは剣を握り直す。


「なら。」


蒼銀の刀身がさらに輝きを増す。


「核を斬るしかない。」


その瞬間だった。


アビス・イーターの胸部。


黒い核が大きく開く。


ゴォォォォォォォォォォン――!!


内部から溢れ出したのは。


黒い炎ではない。


黄金の光だった。


その光を見た瞬間。


ノアが初めて大きく声を上げる。


『後退してください!!』


『それは始祖の権能――』


最後まで言葉は続かなかった。


黄金の光は一瞬で世界海全体を覆い尽くし。


シオンの視界は、純白の輝きに飲み込まれていった。

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