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ECLIPSE CHRONICLE ー エクリプス・クロニクル ー  作者: 神宮せいや
ECLIPSE CHRONICLE:REBIRTH

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観測者対眷属

静寂だった。


アビス・イーターは動かない。


ただ漆黒の剣を構え、最後の観測者を見つめている。


世界海が軋む。


銀色だった海は少しずつ黒く染まり始めていた。


一本の剣を抜いただけ。


それだけで世界法則そのものが崩れ始めている。


アインは息を呑んだ。


「あの剣は……」


黄金の瞳が震える。


「《アビス・ブレイカー》」


静かな声だった。


「始祖が世界を終わらせるためだけに創った概念兵装です。」


シオンは剣から目を離さない。


「あれで斬られたら?」


アインは答える。


「肉体は傷付きません。」


「ですが。」


僅かに唇を噛み締める。


「存在そのものが世界海から削除されます。」


静寂。


観測者ですら例外ではない。


世界核にも戻れない。


歴史にも残らない。


完全なる消滅。


それがあの剣だった。


その時。


アビス・イーターが一歩踏み出す。


ズン――


たった一歩。


それだけで世界海が数百キロに渡って波打つ。


無数の世界が揺れる。


シオンは静かに息を吐いた。


「相変わらず。」


蒼い瞳が輝く。


「俺の相手は化け物ばっかりだな。」


そう呟くと。


ゆっくり右手を前へ出した。


観測者の紋章が蒼く輝く。


ゴォォォォォ……


世界海の光が集まってくる。


無数の星々。


無数の未来。


無数の希望。


その全てが一つへ収束していく。


アインは目を見開いた。


「まさか……!」


光の中から一本の剣が現れる。


蒼銀色の刀身。


透明な結晶で構成された柄。


刀身には星々が流れ続けていた。


それは。


黒星王の《エクリプス・ブレイド》ではない。


観測者だけが持つ新たな剣。


シオンは静かにその柄を握る。


「これが。」


少しだけ笑う。


「今の俺の剣か。」


ノアの声が響く。


『権能兵装確認』


『観測者専用武装』


『名称――《オブザーバー・レガリア》』


蒼い剣が眩く輝いた。


同時に。


アビス・イーターが動く。


轟音。


いや。


音すら置き去りにする速度だった。


漆黒の剣が世界を切り裂きながら迫る。


世界海そのものが真っ二つに割れた。


アインが叫ぶ。


「避けてください!」


シオンは動かない。


ただ。


蒼い瞳で敵を見つめる。


「見えてる。」


静かな声。


観測者権能。


未来観測。


一秒先。


十秒先。


百通りの未来。


その全てが脳裏へ流れ込む。


避ければ。


後ろの世界が斬られる。


受ければ。


自分が消える。


なら。


答えは一つだった。


シオンは剣を振り上げる。


「守る。」


たった二文字。


その瞬間。


蒼銀の剣と漆黒の剣が激突した。


ガァァァァァァァァァァァン――――!!


世界海が爆発する。


銀色と黒。


二つの光が無限の世界を照らした。


衝撃だけで近くの小世界が吹き飛ばされそうになる。


アストラル・アークが激しく揺れる。


アインは必死に船を制御する。


「押し負けます……!」


シオンは歯を食いしばる。


重い。


今まで戦ったどんな敵よりも重い。


剣ではない。


世界そのものを押し付けられているような圧力だった。


アビス・イーターの無数の瞳が妖しく光る。


『■■■■■■』


次の瞬間。


漆黒の剣から黒い亀裂が放たれる。


それはシオンではなく。


遥か後方に浮かぶ一つの小世界へ向かっていた。


シオンの表情が変わる。


「あいつ……!」


最初から狙いは自分ではない。


守るべき世界を狙い。


自分に選択を迫っている。


敵は理解していた。


最後の観測者は。


必ず誰かを守ることを。


シオンは迷わない。


蒼い剣を強く握る。


「好きにはさせない。」


その瞬間。


観測者の紋章が今までにないほど激しく輝いた。


世界海全体へ蒼い光が広がる。


そして。


最後の観測者の新たな力が目を覚まえようとしていた。

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