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ECLIPSE CHRONICLE ー エクリプス・クロニクル ー  作者: 神宮せいや
ECLIPSE CHRONICLE:REBIRTH

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未知なる扉

ゆっくりと。


ゆっくりと。


世界の外側へ続く扉が開いていく。


ゴォォォォォォォ……


重厚な音が宇宙へ響く。


だが不思議なことに。


その音は耳ではなく心へ届いていた。


シオンは蒼い瞳を細める。


観測者の権限を使っても見えない。


未来も。


過去も。


可能性も。


何一つ観測できない。


まるで。


そこだけ世界法則が違うかのようだった。


扉の奥には銀色の回廊が続いている。


果てが見えない。


距離も分からない。


空間そのものが歪んでいる。


観測者となった今でさえ理解できない領域だった。


『進行を推奨』


ノアの声が響く。


シオンは苦笑した。


「簡単に言うな」


観測者になってから。


初めてだった。


未知に対する恐怖を感じたのは。


終焉とも戦った。


創造主とも対話した。


世界終了術式すら乗り越えた。


それでも。


目の前の扉は別格だった。


何も分からない。


だからこそ恐ろしい。


その時だった。


胸元の黒星晶が脈打つ。


ドクン――


蒼い光が揺れる。


シオンは一瞬だけ後ろを振り返った。


遥か遠く。


セレスティア世界が見える。


小さな光。


だが。


そこには確かに仲間達がいる。


ルナリア。


クロノ。


アリア。


セレス。


みんながいる。


守りたかった世界。


命を懸けて残した未来。


その光景を見た瞬間。


シオンは自然と笑った。


「大丈夫か」


自分自身へ問い掛ける。


答えはすぐに出た。


怖くないわけじゃない。


だが。


立ち止まる理由にはならない。


シオンは一歩踏み出した。


銀色の回廊へ。


その瞬間だった。


世界が変わる。


ゴォォォォォォォォォォォン――――!!


視界が白く染まる。


空間が反転する。


上下左右の概念が消える。


時間が歪む。


未来が重なる。


過去が砕ける。


観測者の能力ですら制御できない。


圧倒的な情報量。


シオンは思わず目を閉じた。


だが。


次の瞬間。


全てが静まった。


静寂。


シオンはゆっくり目を開く。


そして。


息を呑んだ。


そこは宇宙ではなかった。


世界ですらなかった。


巨大な海だった。


果てしない銀色の海。


空も海も境界がない。


上下すら存在しない。


ただ。


無限に広がる銀色の海だけが存在している。


そして。


海の上には無数の光球が浮いていた。


一つ一つが世界だった。


セレスティアと同じ規模の世界。


それが数え切れないほど存在している。


シオンは絶句する。


「これが……」


言葉が出ない。


観測者となった今でも。


理解が追い付かなかった。


ノアの声が響く。


『世界海』


静かな声。


『全世界群の外部領域』


『全観測世界の集積地点』


シオンは光球を見つめる。


どこまでも続いている。


終わりが見えない。


世界核で見た光景とは比較にならない。


創造主が神なら。


ここでは創造主ですら一つの存在に過ぎない。


そんな感覚だった。


その時。


海面が揺れる。


波紋が広がる。


シオンは視線を向けた。


そして。


そこに立つ人物を見つける。


白銀の髪。


純白の衣。


黄金の瞳。


第二章で見た人影。


ノアの端末。


だが。


近くで見ると分かる。


人間ではない。


存在そのものが違う。


創造主とも。


終焉とも。


根本的に異なる。


その人物は静かに微笑んだ。


「初めまして」


穏やかな声。


だが。


背後では無数の世界が脈動している。


まるで世界そのものが彼に従っているようだった。


シオンは警戒を解かない。


蒼い瞳で真っ直ぐ見据える。


「お前がノアか」


白銀の人物は首を横に振った。


「違います」


静かな返答。


そして。


黄金の瞳が細められる。


「私は案内者」


「ノア様の代行端末です」


世界が静まる。


シオンの表情が変わる。


これほどの存在ですら。


端末。


代行者。


つまり。


本体はさらに上にいる。


創造主を超える存在が。


その事実に。


観測者となったシオンですら初めて戦慄した。


そして案内者は静かに言う。


「観測者シオン・アルヴィス」


銀色の海が揺れる。


無数の世界が輝く。


「あなたには真実を知る資格があります」


その言葉と共に。


遥か遠く。


世界海の中心で。


巨大な光が目を覚ました。


それは。


創造主すら知らない。


全ての始まりへ繋がる光だった。

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