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ECLIPSE CHRONICLE ー エクリプス・クロニクル ー  作者: 神宮せいや
ECLIPSE CHRONICLE:REBIRTH

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観測者の覚醒

宇宙そのものが息を止めていた。


世界核の中心。


観測の座。


その前に立つシオンの背中を。


誰もが見つめていた。


ルナリア。


クロノ。


創造主。


終焉。


アーカイヴ。


ゼロ。


そして。


五百人の黒星王達。


全員が。


最後の瞬間を見届けようとしていた。


シオンはゆっくりと歩く。


一歩。


また一歩。


その度に身体が光へ変わる。


腕が消える。


足が消える。


輪郭が曖昧になる。


もう戻れない。


そのことを。


誰よりもシオン自身が理解していた。


だが。


不思議と怖くなかった。


胸の中には後悔がなかったからだ。


世界は救われた。


仲間達は生きている。


未来は残った。


なら。


自分の役目は終わった。


そう思えた。


その時だった。


「待って」


ルナリアの声。


シオンの足が止まる。


振り返る。


銀色の髪。


涙で濡れた瞳。


必死に笑おうとしている顔。


その姿を見た瞬間。


シオンの胸が少しだけ痛んだ。


ルナリアは前へ出る。


震える足で。


涙を堪えながら。


一歩ずつ。


そして。


シオンの前で立ち止まる。


「約束して」


静かな声。


消えてしまいそうな声。


だが。


確かな意思があった。


シオンは微笑む。


「何を?」


ルナリアは涙を拭う。


そして。


精一杯笑った。


「帰ってきて」


静寂。


宇宙が静まる。


誰も何も言えない。


それは願いだった。


命令でもない。


約束でもない。


ただ。


一人の少女が。


大切な人へ願った言葉。


シオンは目を閉じる。


少しだけ考える。


そして。


笑った。


いつものように。


どこまでも優しく。


「ああ」


短い返事。


だが。


それだけで十分だった。


「必ず帰る」


ルナリアの瞳から涙が零れる。


それでも笑った。


信じることにした。


この人は昔からそうだった。


無理だと言われても帰ってくる。


不可能だと言われても辿り着く。


だから。


今回もきっとそうだ。


シオンは再び前を向く。


観測の座。


世界の中心。


その玉座へ。


ゆっくりと手を伸ばした。


その瞬間だった。


ゴォォォォォォォォォォォォォォン――――!!


世界核が輝く。


宇宙が光に包まれる。


銀河が回転する。


無数の未来が収束する。


歴史が一つになる。


創造主が目を見開く。


終焉も息を呑む。


アーカイヴが静かに膝をつく。


ゼロが微笑む。


五百人の黒星王達が光になる。


全てが。


シオンへ集まっていく。


『観測者継承完了』


世界の声が響く。


優しく。


暖かく。


祝福するように。


『新たなる観測者を承認』


シオンの身体が完全に光へ変わる。


蒼い瞳だけが残る。


そして。


最後の黒星王は。


観測の座へ腰を下ろした。


その瞬間。


宇宙が生まれ変わる。


世界樹アルファが輝く。


世界核が安定する。


空が戻る。


海が戻る。


未来が戻る。


世界再生は完全に成された。


だが。


代償もまた支払われた。


シオン・アルヴィス。


五百回目の黒星王。


彼はもう人ではない。


世界を見守る存在。


観測者となった。


ルナリアは涙を流しながら空を見上げる。


シオンはもう遠い。


届かない場所にいる。


それでも。


蒼い光が見えた。


観測の座から。


優しく。


暖かく。


まるで笑っているように。


その光を見た瞬間。


ルナリアも笑った。


涙を流しながら。


「いってらっしゃい」


静かな声。


その言葉は。


世界の果てにいるシオンへ確かに届いた。


そして。


最後の観測者は。


新たな世界の始まりを見届ける。


五百回続いた戦いの果てに。


ようやく訪れた未来を。


誰より近くで。


誰より遠くから。


見守り続けるために。

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