観測者継承
ドクン――
ドクン――
ドクン――
今までとは違う。
まるで新たな心臓を迎え入れるような鼓動。
世界そのものが待っていた。
五百回の歴史。
五百回の絶望。
五百回の希望。
その全てを継承した存在を。
シオンの身体は既に七割以上が光へ変わっていた。
足元は完全に粒子化している。
地面に立っているはずなのに。
まるで宙へ浮いているようだった。
ルナリアは必死に涙を堪えていた。
泣けば止まらなくなる。
そんな気がしていた。
だから歯を食いしばる。
だから前を向く。
最後まで。
シオンが選んだ道を見届けるために。
その時だった。
世界核の中心。
純白の結晶がゆっくりと開き始める。
バキッ――
ゴゴゴゴゴゴゴ……
巨大な結晶が花のように開く。
その奥に存在していたものを見て。
全員が息を呑んだ。
そこには玉座があった。
純白の玉座。
光で構成された椅子。
無数の星々が周囲を回っている。
銀河が流れ。
未来が浮かび。
歴史が輝く。
まるで宇宙そのものを形にしたような玉座だった。
創造主が静かに呟く。
「観測の座」
ルナリアが顔を上げる。
創造主は続ける。
「世界を見守る者だけが座れる場所」
銀色の瞳が細められる。
「私も」
「終焉も」
「管理者達も」
小さく首を横に振る。
「辿り着けなかった場所だ」
静寂。
シオンは玉座を見つめる。
不思議だった。
初めて見るはずなのに。
懐かしい。
まるで。
ずっと前から知っていた場所のような感覚。
その瞬間。
世界核が反応する。
ゴォォォォォォォォォォン――――!!
光が溢れる。
シオンの胸の黒星晶が共鳴する。
ドクン――――!!
五百人の黒星王達の声。
ネメシスの想い。
創造主の願い。
終焉の涙。
全てが一つになる。
そして。
世界核から声が響いた。
『観測者継承開始』
機械的な声ではない。
優しい声だった。
まるで母親のような。
世界そのものの声。
『適格者確認』
『シオン・アルヴィス』
『第五百世界黒星王』
『全条件達成』
光が集まる。
世界中の星晶が輝く。
王都セレスティア。
世界樹都市アストレア。
天空神殿エデン。
世界の全てが共鳴する。
『継承を承認』
その瞬間だった。
シオンの周囲に無数の光が現れる。
ルナリアが目を見開く。
クロノも息を呑む。
それは人影だった。
ゼロ。
第四百九十九世界の黒星王。
そして。
歴代全ての黒星王達。
五百人の英雄達が再び現れたのだ。
誰も言葉を発しない。
ただ。
静かにシオンを見ている。
誇らしそうに。
嬉しそうに。
第四百九十九世界の黒星王が微笑む。
「行ってこい」
ゼロも笑う。
「あとは頼んだ」
一人が頷く。
また一人。
そして全員が頷く。
五百回積み重ねられた歴史。
その全てが。
最後の黒星王へ未来を託していた。
シオンは静かに目を閉じる。
思い出す。
旅立ちの日。
ルナリアとの出会い。
仲間達との冒険。
アリアとの約束。
クロノとの喧嘩。
セレスとの再会。
終焉との戦い。
創造主との対話。
全てが脳裏を駆け巡る。
どれ一つ無駄ではなかった。
どれ一つ失いたくなかった。
だからこそ。
守りたかった。
この世界を。
シオンはゆっくりと目を開く。
蒼い瞳が輝く。
そして。
観測の座へ向かって歩き出した。
一歩。
また一歩。
光が舞う。
宇宙が震える。
未来が輝く。
そして。
最後の黒星王は。
世界を見守る者となるため。
観測の座へ手を伸ばした。




