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ECLIPSE CHRONICLE ー エクリプス・クロニクル ー  作者: 神宮せいや
ECLIPSE CHRONICLE:REBIRTH

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五百回目の選択

静寂だった。


誰も言葉を発せなかった。


シオン・アルヴィスが創造主になる。


それが世界を救う唯一の方法。


創世の書が導き出した答えだった。


ルナリアの顔から血の気が引く。


「待って……」


震える声。


「それって……どういう意味なの……?」


誰も答えられない。


だが。


答えは既に理解していた。


創造主になるということ。


それは人間を超越するということ。


いや。


人間であることを捨てるということだった。


シオンは黙っていた。


創世の書を見つめる。


蒼い瞳に迷いはない。


だが。


どこか寂しそうだった。


創世の書が最後の記録を映し出す。


光が広がる。


そして。


未来の光景が現れた。


世界の果て。


終焉の中心。


そこに一人の男が立っている。


黒髪。


蒼い瞳。


黒い外套。


シオンだった。


だが。


もう人間ではない。


身体は光になっている。


星々がその身体の中を流れている。


世界そのものと一体化していた。


ルナリアは涙を流す。


「嫌だ……」


その光景を見たくなかった。


分かってしまったから。


その未来が意味するものを。


創世の書が静かに文字を浮かべる。


【創造主は世界そのものである】


【ゆえに個人ではない】


【ゆえに孤独である】


【ゆえに永遠である】


クロノが拳を握る。


「つまり……」


掠れた声。


「シオンが創造主になったら」


続く言葉を言えない。


創世の書は容赦なく真実を告げる。


【人としてのシオン・アルヴィスは消滅する】


世界が静まり返った。


ルナリアの瞳から涙が零れ落ちる。


止まらない。


止められない。


ようやく帰ってきたのだ。


三年間待ち続けた。


何度世界が変わっても忘れなかった。


やっと再会できた。


それなのに。


また失うのか。


「ふざけないで……」


小さな声。


震える声。


「そんなの……」


涙が床へ落ちる。


「そんなの救いじゃない……」


シオンは黙っていた。


何も言わない。


言えなかった。


なぜなら。


自分も同じことを思っていたから。


世界を救える。


みんなを守れる。


だが。


その代償は自分自身。


また同じだった。


劇場版と。


あの日と。


何も変わらない。


その時だった。


ゼロが前へ出る。


最初の黒星王。


何万年も戦い続けた英雄。


彼は創世の書を見つめながら静かに言った。


「違う」


全員が振り返る。


ゼロはゆっくり首を横に振る。


「それは答えの半分だ」


創世の書が震える。


まるで否定するように。


だが。


ゼロは続けた。


「創造主も失敗した」


静かな声。


「だから世界は不完全だった」


「だから星喰いが生まれた」


シオンが顔を上げる。


ゼロの瞳が真っ直ぐ向けられる。


「なら」


その声には確信があった。


「五百回目は違う」


創世の書がさらに強く光る。


ゼロは笑った。


初めてだった。


心から笑ったのは。


「お前には仲間がいる」


ルナリアを見る。


クロノを見る。


アリア。


レオニクス。


エリナ。


セレス。


アーカイヴ。


五百回分の想い。


五百回分の希望。


全てがシオンへ繋がっている。


「創造主に足りなかったもの」


ゼロが言う。


「それがある」


ルナリアの瞳が揺れる。


シオンも気付く。


創造主は孤独だった。


だから失敗した。


だから終焉を生んだ。


だが。


自分は違う。


一人じゃない。


その瞬間だった。


オリジン・アーカイヴ全体が激しく揺れる。


警鐘のような音が鳴り響く。


無数の書架が崩れ始める。


創世の書のページが勝手にめくられる。


ゼロの表情が変わった。


「まずい」


クロノが振り返る。


「何が起きてる!?」


答えはすぐに現れた。


世界の外側。


遥か彼方。


終焉の空。


真なる星喰いが咆哮を上げたのだ。


ドォォォォォォォォォォォォォォン!!


宇宙そのものが震える。


オリジン・アーカイヴに亀裂が走る。


創世の書の文字が乱れる。


ルナリアが息を呑む。


シオンの黒星晶が激しく脈打つ。


そして。


空間の中心に巨大な赤い瞳が現れた。


星喰い。


真なる終焉。


その視線は真っ直ぐシオンを見ていた。


『見つけた』


低い声。


世界を震わせる声。


『五百回目の黒星王』


ゼロが剣を抜く。


クロノが構える。


ルナリアが月光を纏う。


だが。


間に合わない。


終焉は既にオリジン・アーカイヴへ侵入していた。


『創造主の欠片』


赤い瞳が開く。


無数の瞳が開く。


世界の終わりが近付いてくる。


『最後の希望』


静かな声。


だが。


そこに宿るのは圧倒的な殺意だった。


『今度こそ終わらせよう』


その瞬間。


オリジン・アーカイヴ最深部が崩壊した。

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