終焉を終わらせる方法
オリジン・アーカイヴ最深部。
創世の書が最後のページを開いていた。
眩い光が空間を満たす。
無数の記録。
無数の歴史。
無数の可能性。
五百回繰り返された世界の全てが共鳴している。
そして。
そこに刻まれていた。
終焉を終わらせる方法。
星喰いを倒す方法。
世界を救う最後の答え。
シオン達は息を呑む。
ルナリアも。
クロノも。
ゼロでさえ。
その答えを待っていた。
何万年も。
何百回もの世界を超えて。
ようやく辿り着いた真実だった。
創世の書が静かに文字を浮かび上がらせる。
【星喰いは倒せない】
静寂。
誰も言葉を失った。
クロノが目を見開く。
「は……?」
理解できなかった。
今まで何のために戦ってきたのか。
何のために世界を繰り返したのか。
何のために黒星王が生まれたのか。
その全てを否定する言葉だった。
しかし。
創世の書は続く。
【星喰いは世界誕生以前から存在する】
【終焉そのものである】
【ゆえに消滅しない】
ルナリアの顔色が青ざめる。
終焉そのもの。
つまり。
星喰いは生物ではない。
生命ではない。
概念だった。
夜が存在するように。
死が存在するように。
終わりという現象そのもの。
だから殺せない。
だから滅ぼせない。
だから何百回戦っても勝てなかった。
ゼロが拳を握る。
「そんなことは……」
その声は震えていた。
何万年も積み重ねた戦い。
何万年も積み重ねた犠牲。
それら全てが無意味だったと言われたようなものだった。
だが。
創世の書は否定する。
新たな文字が浮かび上がる。
【終焉は消せない】
【だが終わらせることはできる】
その瞬間。
空間が揺れる。
創世の書から映像が溢れ出す。
世界誕生以前。
創造主。
そして。
星喰い。
巨大な闇。
無限の終焉。
それらが映し出される。
創造主は孤独だった。
だから世界を創った。
だが。
世界を創った瞬間。
終焉もまた生まれた。
始まりと終わり。
光と闇。
創造と破壊。
それらは決して切り離せない。
創世の書が告げる。
【星喰いは創造主の半身である】
世界が止まった。
ルナリアが言葉を失う。
クロノが固まる。
ゼロですら目を見開いた。
「半身……?」
シオンが呟く。
創世の書は静かに答える。
【創造主が世界を創った時】
【不要と判断した感情が分離した】
【孤独】
【絶望】
【喪失】
【終焉】
【それら全てが星喰いとなった】
静寂。
誰も動けない。
星喰いは侵略者ではなかった。
外敵でもなかった。
創造主自身だった。
創造主が捨てた絶望。
創造主が捨てた孤独。
創造主が捨てた悲しみ。
それが星喰いだった。
だから。
創造主は星喰いを倒せない。
星喰いも創造主を滅ぼせない。
同じ存在だから。
同じ魂だから。
ゼロが震える声で呟く。
「だから世界を繰り返しても……」
創世の書が光る。
【答えは戦いではない】
【答えは統合】
シオンの胸の黒星晶が激しく脈打つ。
ドクン。
ドクン。
ドクン。
記憶が流れ込む。
五百回分の記憶。
五百回分の人生。
五百回分の希望。
全てが一つに重なり始める。
創世の書が最後の真実を映し出す。
【五百回目の黒星王】
【創造主の最後の欠片】
【光と闇を繋ぐ者】
【世界と終焉を統合する者】
シオンの瞳が大きく揺れる。
そして。
最後の一文が現れた。
【世界を救う方法は一つ】
【シオン・アルヴィスが創造主になること】
轟音。
オリジン・アーカイヴ全体が震える。
ルナリアが顔を上げる。
クロノが言葉を失う。
ゼロが静かに目を閉じる。
ようやく辿り着いた。
何万年も探し続けた答えに。
だが。
その答えはあまりにも残酷だった。
世界を救う方法。
それは。
シオン自身が人間であることをやめることだった。
そしてその頃の世界の外側。
アーカイヴと星喰いが戦う空間で。
真なる星喰いが初めて笑った。
『辿り着いたか』
低い声が宇宙を震わせる。
赤い無数の瞳が開く。
『五百回目の希望』
終焉は知っていた。
最初から全て。
そして。
最終決戦への時計が静かに動き始めた。




