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ECLIPSE CHRONICLE ー エクリプス・クロニクル ー  作者: 神宮せいや
ECLIPSE CHRONICLE:REBIRTH

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最初の敗北

世界は燃えていた。


つい先ほどまで楽園だった第一世界。


争いはなく。


飢えもなく。


誰もが明日という未来を信じて笑っていた理想郷。


そのすべてが、音を立てて崩れ去っていく。


空は裂け。


海は蒸発し。


大地は砕け散る。


星喰いの巨大な影が通り過ぎるたび、一つの文明が跡形もなく消滅していく。


絶望――。


そんな言葉では、とても足りなかった。


これは滅亡そのものだった。


そして、その世界の中心で。


若き日のゼロは、ただ一人戦い続けていた。


漆黒の剣を握り締め。


全身を傷だらけにしながら。


何度倒れても。


何度叩き伏せられても。


再び立ち上がる。


世界を守るために。


人々を守るために。


未来を守るために。


シオンは息を呑む。


目の前で繰り広げられる戦いは、自分が経験してきたどんな死闘よりも苛烈だった。


これが――黒星王の始まり。


すべての原点。


若きゼロが天へ向かって叫ぶ。


「止まれぇぇぇぇぇぇぇ!!」


漆黒の剣が振り抜かれる。


放たれた黒い斬撃は空間そのものを切り裂き、一直線に星喰いへ届いた。


巨大な翼が断ち切られる。


宇宙そのものが震えた。


だが。


星喰いは止まらない。


ゆっくりと。


まるで傷など存在しないかのように、その無数の瞳が開かれる。


赤い瞳。


幾千万もの瞳。


そのすべてが、若きゼロを見下ろした。


そして初めて、その口が開く。


『――無意味だ。』


その一言と同時に。


世界法則そのものが崩壊した。


ドォォォォォォォォォォォン!!


若きゼロの身体が弾き飛ばされる。


山脈を砕き。


大地を抉り。


割れた大陸へ叩きつけられた。


衝撃だけで、大陸が真っ二つに裂ける。


「そんな……」


ルナリアの声が震えた。


土煙の中から、若きゼロは再び立ち上がる。


だが、その身体は限界だった。


全身は血に染まり。


右腕は砕け。


左目は潰れ。


呼吸さえまともにできていない。


それでも。


剣だけは離さなかった。


「……まだだ。」


震える声。


「まだ……終われない。」


星喰いが歩み寄る。


ゆっくりと。


確実に。


その一歩ごとに世界が軋み、未来が削られていく。


そこには圧倒的な力しか存在しない。


勝機など、どこにもなかった。


クロノが苦しげに呟く。


「……勝てない。」


誰も否定できない。


力の次元が違う。


戦いですらなかった。


人が宇宙そのものへ剣を向けているようなものだった。


その時――。


若きゼロの背後に、一筋の光が灯る。


一人。


また一人。


無数の人々が立ち上がっていた。


老人。


子ども。


兵士。


学者。


王。


農夫。


傷つき。


血を流し。


恐怖に震えながらも。


誰一人として逃げようとはしなかった。


彼らはゼロの背中へ歩み寄る。


未来を託すために。


希望を繋ぐために。


その中から、一人の少女が前へ出た。


銀色の髪。


月光を思わせる優しい瞳。


ルナリアが息を呑む。


「……私?」


違う。


別人だ。


だが、その面影は驚くほど似ていた。


第一世界に生きた月の巫女。


彼女は若きゼロへ静かに手を伸ばす。


涙を流しながら。


震える声で告げた。


「お願い……。」


その小さな願いが、世界へ響く。


「諦めないで。」


その一言に。


若きゼロの瞳が揺れた。


続いて、次々と人々が前へ歩み出る。


未来を託す者。


希望を託す者。


願いを託す者。


その光景は。


シオンがこれまで幾度となく受け取ってきた想いと、何一つ変わらなかった。


現在と過去が、静かに重なる。


ゼロは目を閉じる。


深く息を吸い込み。


ゆっくりと立ち上がった。


砕けた身体で。


折れかけた剣を握り締めたまま。


彼は再び空を見上げる。


星喰いを。


絶望そのものを。


そして。


静かに笑った。


「……そうか。」


涙が頬を伝う。


「俺は、一人じゃなかったんだ。」


その瞬間だった。


黒い光が世界を包み込む。


人々の願いが。


希望が。


未来への祈りが。


すべて若きゼロへ流れ込んでいく。


世界中の想いが一つとなり。


最初の黒星王は、真の力へと覚醒した。


しかし――。


ゼロは勝てなかった。


シオンたちは、その瞬間を確かに目撃する。


黒星王の力を得ても。


人々すべての願いを背負っても。


その剣は、星喰いへ届かなかった。


世界は崩壊する。


文明は滅びる。


命は消え。


未来は砕け散る。


そして。


最後に残されたのは――。


若きゼロ、ただ一人だった。


静寂。


燃え尽きた世界。


灰色の空。


生命の気配を失った大地。


何も残っていない。


若きゼロは、その中心で静かに膝をついていた。


守れなかった。


救えなかった。


託された願いを。


未来を。


世界を。


その絶望は、想像を超えていた。


ルナリアは涙を流し。


アリアは言葉を失い。


レオニクスは拳を強く握り締める。


誰も何も言えない。


ただ一人。


シオンだけが静かに、その光景を見つめ続けていた。


理解してしまったからだ。


これまで繰り返されてきた悲劇。


無数の世界ループ。


歴代の黒星王。


すべての始まりは――。


この日の敗北だったのだと。


その時。


滅びた世界の中心に、一つの気配が現れる。


純白の法衣。


銀色の瞳。


管理者の王アーカイヴによく似た姿。


だが、その面影は今より遥かに若い。


若きゼロがゆっくりと顔を上げる。


男は静かに微笑んだ。


その微笑みは、救いにも見えた。


あるいは、新たな絶望の始まりにも。


そして。


世界の運命を永遠に変える、その一言を告げる。


「――やり直してみるか?」


その瞬間。


シオンたちを包む光景が大きく揺らいだ。


時が軋み。


世界が反転する。


幾千、幾万もの運命が交差し始める。


世界ループ誕生の真実が――。


ついに、その幕を開けようとしていた。

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