表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ECLIPSE CHRONICLE ー エクリプス・クロニクル ー  作者: 神宮せいや
ECLIPSE CHRONICLE:REBIRTH

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
145/168

黒星王VS虚無

第一世界。


かつて、すべての始まりだった世界。


今、その面影はどこにもない。


空は無数の亀裂に引き裂かれ。


大地は砕け散り。


海は干上がり。


文明は灰となって漂っている。


残されているのは、終焉の記憶だけだった。


その崩壊した世界の中心で。


二人の観測者が静かに向かい合う。


一人は――シオン・アルヴィス。


黒星王。


最後の観測者。


未来を信じ続ける者。


そして、もう一人。


虚無の観測者。


最初の観測者。


未来を諦めた者。


希望と絶望。


光と闇。


始まりと終わり。


相反する二つの存在が、ついに対峙した。


静寂が世界を包む。


その沈黙は、ほんの一瞬だった。


次の瞬間。


虚無の観測者の姿が消えた。


「――っ!」


シオンの瞳が見開かれる。


速い。


いや、速いという言葉では足りない。


存在そのものが空間を飛び越えている。


距離という概念が意味を失っていた。


気づいた時には。


虚無の観測者の拳が、眼前まで迫っていた。


ドォォォォォォォォォォン!!


蒼黒い衝撃が炸裂する。


シオンは反射的に剣を差し込んだ。


刃が拳を受け止める。


しかし。


受け止めただけだった。


凄まじい衝撃が全身を貫く。


「ぐっ……!」


身体ごと吹き飛ばされる。


砕けた大地を削りながら、何百メートルも後方へ叩き飛ばされた。


腕が痺れる。


骨が軋む。


剣を握る手が震えていた。


これまで数え切れない強敵と戦ってきた。


管理者。


星喰い。


終焉を告げる者。


だが。


目の前の男は、そのすべてを凌駕していた。


虚無の観測者は微動だにしない。


静かにシオンを見下ろす。


「驚いたか。」


赤黒い瞳が細められる。


「これが――絶望だ。」


その一言とともに。


世界が震えた。


空が黒く染まる。


無数の瞳が開く。


無数の腕が闇から伸びる。


世界そのものを侵食する黒い波動が、第一世界を覆い尽くしていく。


第一世界を滅ぼした力。


虚無。


その本質が解き放たれた。


シオンは歯を食いしばる。


胸の黒星晶が激しく脈打つ。


蒼黒い光が全身を包み込み、震える身体へ力を宿していく。


「……まだだ。」


ゆっくりと立ち上がる。


ここで膝をつくわけにはいかない。


負けるわけにはいかない。


王都にはルナリアがいる。


アリアがいる。


レオニクスがいる。


エリナも。


ガルドも。


仲間たちが待っている。


帰る場所がある。


だから。


ここで終わるわけにはいかなかった。


虚無の観測者は静かに右手を掲げる。


闇が集束し、一振りの剣を形作った。


黒い剣。


光すら吸い込み、存在そのものを終焉へ導く刃。


シオンも剣を構える。


蒼黒い輝きが刀身を包み込み、黒星晶と共鳴する。


二人は互いを見据えた。


そして。


同時に地を蹴る。


ドォォォォォォォォォォォォォォン!!


剣と剣が激突した。


轟音が世界を揺らす。


第一世界の残骸が吹き飛び、無数の世界記録が激しく明滅する。


一撃。


二撃。


三撃。


四撃。


斬撃が交差するたび、空間そのものが裂けていく。


あまりの速度に、残像すら残らない。


虚無の観測者は笑っていた。


「いい。」


剣を振るう。


「それでこそ観測者だ。」


シオンは鋭く踏み込む。


蒼い瞳に強い意志が宿る。


「観測者じゃない。」


黒星晶が鼓動する。


蒼黒い光が爆発する。


「俺は――シオンだ!」


渾身の一撃が放たれる。


蒼黒い斬撃が虚無を切り裂いた。


虚無の観測者が、初めて一歩後退する。


赤黒い瞳が、わずかに揺れた。


驚き。


それに似た感情が、一瞬だけ浮かぶ。


「……なるほど。」


男は静かに呟く。


「そこが違うのか。」


観測者。


管理者。


救世主。


英雄。


そんな肩書きではない。


シオンは、誰かになろうとして戦っているわけではない。


ただ。


シオン・アルヴィスとして、大切な人を守りたいだけだった。


その純粋さが。


虚無の観測者には、眩しかった。


だからこそ。


耐え難いほど憎らしかった。


「ならば――試してやろう。」


男は両腕をゆっくりと広げる。


世界が悲鳴を上げた。


第一世界の空が完全に砕け散る。


裂け目の奥から。


無数の幻影が現れた。


ルナリア。


アリア。


レオニクス。


エリナ。


ガルド。


シオンが守りたい仲間たち。


だが。


誰も立ってはいなかった。


血に染まり。


倒れ。


命を失い。


絶望の中へ沈んでいる。


「……っ!」


シオンの身体が止まる。


虚無の観測者の声だけが響く。


「これが未来だ。」


幻影は増えていく。


さらに増えていく。


王都の人々。


子どもたち。


笑い合っていた人々。


守りたかったすべてが、終焉へ飲み込まれていく。


「見ろ。」


赤黒い瞳が静かに輝く。


「これが現実だ。」


「違う!」


シオンが叫ぶ。


だが幻影は消えない。


「違わない。」


虚無の観測者は淡々と告げる。


「私は見てきた。」


第一世界。


第二世界。


第三世界。


無数の世界。


無数の滅亡。


数え切れない終焉を。


「希望は敗北する。」


「未来は壊れる。」


「世界はいずれ終わる。」


その言葉には、誰よりも多くの現実を見てきた者だけが持つ重みがあった。


だから虚無になった。


だから未来を諦めた。


その絶望が、シオンの胸へ突き刺さる。


――その時だった。


胸元の黒星晶とは別の光が輝く。


蒼銀色の優しい輝き。


ルナリアとの共鳴だった。


『シオン。』


優しい声。


聞き間違えるはずがない。


『帰ってきて。』


温かな声が、心へ届く。


『約束したでしょ。』


その瞬間。


幻影が揺らいだ。


絶望の世界へ一本の亀裂が走る。


シオンはゆっくりと目を開く。


蒼い瞳に、確かな光が宿っていた。


そして。


小さく笑う。


「……ほらな。」


虚無の観測者が眉をひそめる。


「何だ。」


シオンは剣を握り直す。


蒼黒い光が、これまで以上に強く燃え上がる。


「お前が負けた理由。」


世界が震える。


黒星晶が眩く輝く。


シオンは真っ直ぐ虚無の観測者を見据えた。


「一人で抱え込んだからだ。」


その言葉と同時に。


蒼黒い光柱が天を貫く。


第一世界を照らし。


崩壊した空を裂き。


無数の世界へ希望の光が広がっていく。


希望と虚無。


二人の観測者。


数万年にわたって続いてきた因縁は。


今――。


ついに最終局面へと突入した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ