表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ECLIPSE CHRONICLE ー エクリプス・クロニクル ー  作者: 神宮せいや
ECLIPSE CHRONICLE:REBIRTH

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
107/168

帰還の軌跡

夜空を、一筋の光が駆け抜けた。


それは流星だった。


だが、普通の流星ではない。


蒼黒い光。


夜を裂く漆黒の尾。


空そのものを震わせながら落ちていく巨大な光。


まるで世界の外側から飛来したかのような異質な存在。


誰も知らない。


誰もその正体を説明できない。


それでも。


その光を見た者達は、なぜか足を止めていた。


王都セレスティア。


石畳の大通り。


露店の主人が空を見上げる。


帰宅途中の兵士達が立ち止まる。


窓辺で本を読んでいた少女が顔を上げる。


誰もが同じ光を見ていた。


「なんだ……あれ」


誰かが呟く。


答える者はいない。


ただ。


胸の奥が熱くなる。


理由もなく涙が溢れる。


懐かしい。


会いたかった。


そんな感情だけが心に残る。


年老いた老人が震える手を伸ばした。


「まさか……」


だが続く言葉は出てこない。


思い出せない。


あと少しなのに。


名前だけが出てこない。


まるで誰かに奪われたかのように。


それでも。


老人の頬には涙が流れていた。


空を見上げる瞳は、どこか嬉しそうだった。


同じ頃。


世界樹都市アストレア。


北方氷原。


海上国家マリネス。


砂漠都市ザルディア。


世界中の人々が空を見上げていた。


そして同じ感情を抱く。


忘れていた。


何か大切なものを。


忘れてはいけない誰かを。


その光は、世界中の記憶を揺さぶっていた。



その頃。


世界と世界の狭間。


蒼黒い流星の正体は、シオンだった。


凄まじい速度で落下している。


世界の壁を突破した反動で、身体は光そのものになっていた。


風が唸る。


空間が軋む。


無数の光が周囲を流れていく。


それは失われた記録だった。


消された歴史だった。


再構築によって忘れ去られた世界の残骸だった。


シオンは静かに目を開く。


蒼い瞳の奥に、青空が映る。


三年ぶりだった。


本物の空。


本物の風。


本物の世界。


胸が熱くなる。


「帰ってきたんだな……」


小さく呟く。


その声は風に消えた。


だが。


確かな実感があった。


観測者領域ではない。


記憶の海でもない。


自分が守った世界だ。


その瞬間。


胸元が温かく光った。


ドクン――


鼓動。


ルナリアの気配。


シオンは思わず笑う。


「待ってろ」


風の中で呟く。


「今度こそ帰る」


月の花畑。


最後の約束。


泣きながら笑った少女。


その全てが胸に蘇る。


もう迷わない。


もう立ち止まらない。


世界が忘れても。


歴史が消えても。


自分は帰る。


大切な人の元へ。


そして。


蒼黒い流星はさらに加速する。


王都セレスティアへ向かって。


運命に導かれるように。


まっすぐに。


その頃まだ誰も知らなかった。


この流星が。


世界の運命を再び動かすことになると。


忘れられた英雄が。


ついに帰還しようとしていることを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ