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ECLIPSE CHRONICLE ー エクリプス・クロニクル ー  作者: 神宮せいや
ECLIPSE CHRONICLE:REBIRTH

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帰還への扉

世界の壁。


それは管理者が創り出した最後の牢獄だった。


観測者領域と現実世界を隔てる絶対境界。


どれほど強大な存在であろうと超えることはできない。


神ですら干渉できない。


管理者達はそう信じていた。


だが。


その壁に今、小さな亀裂が生まれていた。


観測者領域。


黒い星の上。


シオンは静かに空を見上げていた。


蒼い瞳の先。


無限に続く闇の向こう。


巨大な壁が存在している。


世界そのものを覆う光の壁。


まるで空そのものが閉ざされているようだった。


その表面に。


確かに亀裂が走っている。


ほんの僅かな傷。


だが。


それは今まで誰一人付けられなかった傷だった。


レイは腕を組みながら笑う。


「驚いたな」


シオンは視線を外さない。


「何がだ?」


「世界の壁が反応したことだ」


レイの表情が少しだけ真剣になる。


「普通は有り得ない」


「何万回世界を繰り返しても」


「何万回黒星王が現れても」


「あの壁は壊れなかった」


静寂。


そして。


レイは小さく呟く。


「今回は本当に違うらしい」


シオンは黙っていた。


理由は分かっている。


ルナリアだ。


彼女が思い出した。


忘れられた英雄を。


消された歴史を。


二人を繋いでいた記憶を。


その想いが今。


世界を越えて届いている。


ドクン――


胸が脈打つ。


黒星晶の痕跡が蒼く輝く。


遠く離れていても。


世界を隔てていても。


確かに繋がっている。


シオンは小さく笑った。


「待たせすぎたな」


その言葉には後悔が滲んでいた。


三年。


ルナリアは一人だった。


自分を忘れさせられたまま。


理由も分からず苦しみ続けた。


それでも。


彼女は辿り着いた。


記憶の海へ。


自分の名前へ。


自分との約束へ。


ならば。


今度は自分の番だった。


その時だった。


観測者領域全体が震えた。


轟音。


空間そのものが悲鳴を上げる。


AE-01が再び立ち上がる。


白い神衣は砕け。


身体の各所には黒い傷が走っている。


だが。


その瞳はまだ消えていなかった。


『黒星王危険度更新』


『世界壁干渉確認』


『最終封鎖権限起動』


シオンの表情が変わる。


レイも空を見上げた。


すると。


世界の壁の周囲に無数の白い輪が出現する。


一つ。


二つ。


十。


百。


千。


数え切れないほどの術式。


管理者による最終防衛機構。


世界そのものを閉ざす檻だった。


レイが舌打ちする。


「本気だな」


「みたいだな」


シオンは剣を握る。


蒼黒い光が刀身を包む。


AE-01が両手を広げる。


『黒星王帰還確率上昇』


『許可不能』


『完全封鎖を実行』


その瞬間。


白い光が解放された。


無数の鎖。


無数の槍。


無数の法則。


全てがシオンへ向かう。


観測者領域そのものが敵になったかのようだった。


だが。


シオンは前へ出る。


迷わず。


一歩。


また一歩。


そして。


静かに呟く。


「邪魔だ」


黒い光が爆発する。


ドォォォォォォォォォォォン!!


蒼黒い衝撃波。


世界を揺るがす力。


無数の鎖が吹き飛ぶ。


白い槍が砕け散る。


AE-01が初めて大きく後退した。


観測者領域全体が激しく揺れる。


だが。


それでも壁は壊れない。


巨大な壁はそこに存在している。


シオンは息を吐いた。


「やっぱり簡単じゃないか」


レイが苦笑する。


「当たり前だ」


だが。


その時だった。


世界の向こう側。


記憶の海。


ルナリアが突然胸を押さえた。


ドクン――


鼓動。


懐かしい熱。


まるで誰かが呼んでいる。


クロノが振り返る。


「感じたのか?」


ルナリアは頷く。


涙が浮かんでいた。


「シオンがいる」


確信だった。


見えない。


聞こえない。


それでも分かる。


今。


彼は戦っている。


帰ってこようとしている。


ルナリアは胸の前で手を組む。


そして静かに願った。


「帰ってきて……」


その瞬間。


観測者領域。


シオンの胸元が眩く輝いた。


レイが目を見開く。


「まさか」


黒星晶の痕跡。


ルナリアの想い。


記憶の海。


その全てが共鳴を始めていた。


ドクン。


ドクン。


ドクン。


世界が震える。


世界の壁が軋む。


そして。


バキッ――


小さな音が響いた。


シオンの瞳が見開かれる。


世界の壁。


その亀裂が。


確かに広がった。


同時刻。


記憶の海上空。


巨大な白い門の奥。


そこからゆっくりと何者かが歩み出す。


銀色の神衣。


銀色の髪。


機械のような瞳。


世界を編集する最高位存在。


管理者アーカイヴ。


クロノの表情が凍り付く。


「来たか……」


ルナリアも息を呑む。


今までの管理者とは違う。


格が違う。


存在そのものが違う。


アーカイヴは無表情のままルナリアを見下ろした。


そして。


感情のない声で告げる。


『記録保持者確認』


『黒星王復元率上昇』


『世界安定率低下』


静寂。


次の瞬間。


その瞳が蒼く光る。


『管理者アーカイヴ』


『排除を開始する』


世界が震えた。


帰還への扉が開き始める中。


最強の管理者がついに動き出した。

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