表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ECLIPSE CHRONICLE ー エクリプス・クロニクル ー  作者: 神宮せいや
ECLIPSE CHRONICLE:REBIRTH

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
100/163

世界の傷跡

記憶の海は激しく揺れていた。


上空には巨大な白い瞳。


管理者の監視権限。


その圧倒的な存在感だけで空間そのものが悲鳴を上げている。


白い光が降り注ぎ。


無数の記録が砕け散る。


歴史が壊されていく。


まるで世界そのものが過去を消そうとしているようだった。


ルナリアは立ち尽くしていた。


胸の奥では未だにシオンの記憶が脈打っている。


忘れていた三年間。


奪われていた想い。


ようやく取り戻した大切な記憶。


絶対に失いたくなかった。


「シオン……」


小さく名前を呼ぶ。


すると胸が温かくなる。


不思議だった。


ここにいないはずなのに。


遠く離れているはずなのに。


まるで彼がすぐ近くにいるような気がした。


その時だった。


「ルナリア!」


クロノの声。


次の瞬間。


巨大な光の柱が降ってくる。


ドォォォォォォォォォン!!


轟音。


記憶の海が割れる。


ルナリアは咄嗟に後ろへ飛んだ。


さっきまで立っていた場所が消滅している。


存在そのものを消去する攻撃。


もし直撃していれば。


記憶も。


魂も。


何も残らなかっただろう。


「大丈夫か?」


クロノが駆け寄る。


ルナリアは息を切らしながら頷いた。


「うん……」


だが。


クロノの表情は険しい。


今まで見せたことがないほど真剣だった。


上空を睨みながら舌打ちする。


「最悪だな」


「クロノ……」


「管理者が本気で動き始めた」


静かな声。


だが。


そこには焦りが混じっていた。


ルナリアは思わず聞く。


「どうしてそこまで……?」


クロノは少しだけ黙った。


そして。


静かに海を見つめる。


「世界が怖がってるんだ」


「え……?」


「シオンを」


ルナリアの胸が揺れる。


クロノは続けた。


「黒星王は世界を救った」


「本来なら英雄として語り継がれる存在だ」


「だが管理者は違った」


海が揺れる。


失われた記録が周囲を漂う。


クロノはその光景を見ながら語った。


「世界再構築の時、管理者は結論を出した」


「黒星王は危険だと」


「危険……?」


ルナリアには理解できない。


世界を救った人だ。


誰よりも優しい人だ。


危険なはずがない。


だがクロノは首を振る。


「優しいから危険なんだ」


「え?」


「何度世界が滅んでも立ち上がる」


「何度失敗しても諦めない」


「どんな未来でも変えようとする」


赤い瞳が細くなる。


「管理者にとって、それは異常なんだ」


ルナリアは言葉を失った。


管理者は世界を守る存在。


そう思っていた。


だが。


今聞いている話は違う。


「じゃあ……」


震える声。


「管理者は世界を守ってるんじゃないの?」


クロノは苦笑した。


どこか悲しそうな笑みだった。


「昔はな」


静寂。


「昔の管理者は確かに世界を守ろうとしていた」


「でも長すぎた」


「何万回も世界を繰り返した結果」


「奴らは変わった」


ルナリアは息を呑む。


クロノの声が重くなる。


「今の管理者は世界を守ってるんじゃない」


「世界を固定しているだけだ」


その瞬間。


上空の白い瞳が輝く。


まるで会話を聞いていたかのように。


『異常情報拡散確認』


『観測者クロノ』


『危険度上昇』


クロノが鼻で笑う。


「図星か」


すると。


白い瞳の周囲に無数の術式が展開された。


空を埋め尽くすほどの数。


世界編集権限。


歴史改変権限。


記録削除権限。


ルナリアですら危険だと理解できた。


「まずい……」


クロノも表情を変える。


「ここは長く持たない」


その時だった。


記憶の海の奥。


遥か遠くで何かが光った。


黒い光。


シオンの記録。


いや。


違う。


ルナリアは胸を押さえる。


この感覚を知っていた。


「シオン……?」


微かな熱。


微かな鼓動。


世界の外側から届くような感覚。


クロノも気付く。


赤い瞳が見開かれる。


「まさか……」


黒い光が一瞬だけ強く輝く。


ドクン――


世界が震えた。


上空の白い瞳も反応する。


『観測領域異常反応確認』


『黒星王出力上昇』


『警戒レベル最大』


クロノの顔色が変わる。


「始まった……」


「何が?」


ルナリアが問い掛ける。


クロノは空を見上げた。


その先。


世界の外側を見つめるように。


そして静かに言った。


「シオンが動き出した」


その言葉と同時に。


遥か彼方。


世界と観測者領域を隔てる壁に。


小さな亀裂が走ったことを。


まだ誰も知らなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ