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気づけば全部の死亡フラグをへし折っていた転生悪役令嬢ですが何か?  作者: 柚木(ゆき)ゆきこ@書籍発売中
第四章 ラクロワ領ラクリス編

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62、近づくお別れ……

「ちょっとぉ〜?! マリちゃん、ローブの下、装備を付けてなかったのぉ?!」

「あ、はい」

 

 翌日、メゾン・ド・マルセ。

 試着しようとローブを脱いだ私に、ヴィリーさんは叫び声をあげた。


「このローブに私が防御魔法を付与したので、中の服は動きやすいものを第一に選びました」

「た、確かにねぇ……装備は動きにくいけどぉ〜。それにマリちゃんの防御魔法はすごいんだけどぉ……」


 私の言葉を聞いたヴィリーさんがうんうんと唸っている。


「防御魔法を過信しすぎるのは良くないわね。ちゃんと防具でも身を守らなくちゃぁ」

「エクス、お前ちゃんとマリにそこを伝えたのか?」


 無言のエクス。そうなんだよねぇ、最初私はジャックさんのローブを着ていたから……多分エクスも忘れてたのかもしれないよね……。あと一応、私の防御魔法はジャックさんのお墨付き。早々破れないと思っていたのかも。

 そんなことを言えるはずがないので、二人で黙っていると……レオさんが頭を押さえた。


「今回は問題なかったが……何が起こるかわからんからな。マリはローブの下に装備するように」

「はい……」


 二人でしゅん、としていると後ろにいたマルセルさんが声を掛けてきた。


「だから私が服を仕立てたのよぉ〜。ほら、マリちゃん、どうぞ!」


 彼の手にあったのは、動きやすそうな普通の洋服である。私は受け取ったあと、試着室で着替えた。ある程度伸びる素材でできているのか、着やすいがもいい。うん、そして着心地も良い。

 私が試着室を出ると、周囲から歓声が上がった。


「マリちゃん、超お似合い! 可愛い!」

「流石、アタシよねぇ〜」

「店長、自画自賛はお止めください」


 見つめられて恥ずかしいな、と思いつつ、私は周囲を見回す。……一番見てほしい人がどこにもいなかったのだ。そんな私の様子にレオさんが気づいたのだろう。奥を指差して教えてくれた。


「ああ、エクスなら隣で着替えてるぞ」


 レオさんに言われて、隣の試着室を見ると……確かにモゾモゾとカーテンが揺れている。そうか、マルセルさん……エクスの服も作ってるって言っていたよね。

 そんなことを考えていた私の耳に、マルセルさんの言葉が入ってくる。


「ふふふ、今回はお揃いで作らせてもらったわ! これを着れば一発で恋人同士だってわかるはずよぉ?」

「……!?」


 私は声にならない叫び声が喉から出る。そして試着室の中からは、何かをどこかにぶつけたような鈍い音が聞こえた。ヴィリーさんは「あらあら」なんてたのしそうに頬を染めているし、レオさんは大笑いしている。

 マルセルさんは私にウインクした。


「今回のコンセプトは『仲睦まじさ』を周囲に知らしめることよ! これで、引き抜きとかはなくなるんじゃないかしら?」

「な、なるほど……?」


 まぁ、確かに私は何度か引き抜きみたいなことが起きたし……? それを防ぐための服と言われれば納得できる気が——


「ちょっと待て! 俺とマリは恋仲じゃない!」


 叫びながら試着室を出てくるエクス。その言葉に少しだけ胸が痛んだ気がしたけど、気のせいかな。エクスは肩で息をしながら、大声を上げた。


「そんなのマリに失礼じゃないか! 俺みたいな愛想もなくて、ぶっきらぼうなやつ……あ」

「あらー? エクス、自己分析が良くできてるじゃない?」


 笑いながらヴィリーさんに突っ込まれるエクスの顔は、真っ赤である。


「もう少し笑顔の練習をしたらどうかしら、はい、どうぞ!」

「ヴィリー……!」


 エクスはヴィリーさんを睨みつける。けれども、彼女は楽しそうに微笑むだけだ。レオさんも二人の様子をニヤニヤと眺めている。一触即発の空気ではあったが、それを止めたのはマルセルさんだった。


「あらあら、室内で険悪な空気を作るのはやめて頂戴ね? さぁ、これが防具よ、つけてみて!」


 その言葉に皆が我に返ったのだった。



 マルセルさんから服の試着を終えた私とエクスは、早速広告塔となるためにもらった服のひとつを着る。マルセルさんの指定で、今日はお揃いの服だ。彼は満足そうに私たちを見ながら、話した。


「一週間くらい着て頂戴ね。それに、ニアから聞いたわ。二人はそろそろ次の街に行くんでしょう? もしどこで購入した服なのか訊ねられたら、私の名前を出して頂戴」

「わかりました!」

 

 素材は自分で手に入れたとはいえ、今まで着ていた服よりも断然こちらの方が着やすい。オーダーメイドで作られた服ってすごいんだなぁ、と改めて実感していた。その時、ヴィリーさんの顔が少しだけ曇った。


「一週間あれば買い出しと軽く探索ができそうだな。幾つか手に入れたいドロップ品が残っているからちょうど良い」


 エクスが頷く。この街ともあと一週間でおさらばだと思うと、少し残念な気持ちもある。


「お前ら、本当に行くのか?」


 レオさんの言葉にヴィリーさんも目に涙を溜めている。短い間ではあったけど、本当に二人にはお世話になった。

 お兄ちゃんやお姉ちゃんがいたら、こんな感じなんだろうな……って私も思ったもの。


「もちろん、色々な場所に行くこと、それが俺たちの目的でもあるからな」


 エクスの言葉に同意する私。そんな暗くなった雰囲気を明るくするかのように、マルセルさんが一度手を叩いた。


「そうそう、メゾン・ド・マルセは王都にも支店があるのよ! もし王都に行った時は寄ってね? はい、これ、アタシの署名入りカード。王都でそのカードを出してくれたら、割引してあげるわ!」

「ありがとうございます!」


 カードを受け取って私は思った。

 ……王都か。いつか行ってみたいなぁ!


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