幕間 ダンジョンの最奥
「バルザス様、魔力の反応が消えました」
「ち、失敗か。ざまぁねぇな」
ラクリスダンジョンの地下。五十階層よりも更に深層。
空洞の部屋の中にガタイの良い男とローブを着た男が立っていた。
部屋の中心にはまるでオプジェのように飾られている赤い球。二人はその前に陣取り、赤い球の上に浮かんでいる映像らしきものを見てため息をつく。その映像にはデスピオンを倒した場所が映っていた。
「ありゃー、図体だけがデカくなった紛いモンだな……強さは元のヤツと変わらねぇ」
「せめて魔法を使えれば良かったのですが……知能がないからでしょうか?」
「凶暴化はするが、それだけって感じだな」
バルザスと呼ばれた男は、頭を掻いた。
「しっかしなぁ、こんな研究でいいのか? 失敗ばかりじゃねーか」
バルザスは手に持っている青い球へと視線を向ける。その青い球の左半分は割れていた。そう、マリが拾った欠片くらいの大きさに——
ローブを着た男はバルザスの言葉に、声をあげて笑う。
「失敗があるからこそ、研究ですからね」
「ならいいんだが……移動するコッチの身にもなってほしーぜ、全く」
「それは本当に助かっていますよ。私は武力を持ち合わせておりませんから」
じろりと睨みつけているバルザスをものともせず、男は嫌味を受け流す。隣にいたバルザスは大きく息を吐いた。
「あー、わかったよ。研究者サマの話は俺にはわからんからなぁ……」
「恐縮です」
「ほめてねーよ」
そう言いながら、バルザスは両手を頭の後ろに置いて天井を見ていたが……不意に何かに気がついたのか、男に呼びかけた。
「いくぞ」
「……また来ます」
男は赤球にそう声をかけると、バルザスと一緒に消える。その数秒後、現れたのは。
——腰まである銀の長い髪を三つ編みにした男性だった。




