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気づけば全部の死亡フラグをへし折っていた転生悪役令嬢ですが何か?  作者: 柚木(ゆき)ゆきこ@書籍発売中
第四章 ラクロワ領ラクリス編

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59、異常種のデスピオン

「こいつはデスピオンだ!」


 レオさんの言葉にエクスが声を荒げた。

 

「……! 希少種のか?!」

「そうだ!」

 

 レオさんの声と同時に、デスピオンは黒く大きな尾を勢いよくこちらへと向ける。すると尾の先端から液体が発射され……私の防御魔法に当たった。液体の掛かった部分を見るが、幸い防御魔法には傷ひとつついていない。


「今のは毒だ! デスピオンの厄介なところは、尾の先から毒液を噴射する。しかも量が多い」

「あの毒がかかると、皮膚が溶けてしまうのよ! 気をつけて」


 デスピオンの毒は腐食性があるようだ。エクスは眉間に皺を寄せながら、声を上げる。


「デスピオンはこんなに大きかったか?!」

「いや、元々腰くらいの大きさの希少種だ。こいつは少食だからか、普段は滅多に遭遇しない」


 レオさんの言葉に私はサソリを思い出す。確か地球にいたサソリも、日中は隠れて動かない生態だったような気がする。だから食事量も少なく済むんだったか……。けれども目の前のサソリはあまりにも大きすぎる。


「こいつは特殊個体だな……ヴィリー、ちょっと弓で外殻を射て欲しい」

「わかったわ」


 ヴィリーさんは私の防御魔法から抜け出すと、目にも留まらぬ速さで矢を射る。それと同時に私が彼女に向けて防御魔法を展開した。矢はデスピオンの額部分に当たったのだが……黒光りする甲殻が硬かったのか、弓は刺さることなく落ちていく。


「ちっ……剣でも刃が通りそうにないな……殻の隙間を狙うしかないか」

「魔法は使えないのか?」

 

 レオさんの舌打ちを聞いたエクスが訊ねる。彼の代わりに後ろにいたヴィリーさんが答えた。


「あいつは魔法無効の能力を持っている、と本には書かれていたけれど……実際は分からないわ」

「一度試してみてもいいですか?」


 私の言葉にレオさんとヴィリーさんは目を見開く。魔法無効の能力が、どのようなモノなのか確認しておくべきだと思ったからだ。殻へと届く前に魔法が消えてしまうのか、殻には届くのか……これが分かるだけでも、大きな違いがある。


「やってみろ! エクス、一旦俺らは後ろに下がるぞ」

「ああ!」


 私はシロアリで使った火魔法をデスピオンへと放つ。魔法はデスピオンの外殻に当たると……そのまま霧散する。どうやら殻自体に魔法を無効にする効果があるのだろう。

 これではシロアリのように、魔法で胴体を貫くことはできない。


 私の火魔法を受けたデスピオンは、尾の先をこちらに向けた。その後先ほどよりも大量の毒液を周囲に撒き散らす。


 ——ジュッ


 何かが溶けるような音が聞こえる。私は音のする方へと顔を向けると、デスピオンの毒が落ちたと思われる砂は黒く変色し、煙が出ていた。そして辺りにただよう腐敗臭。まるでデスピオンの毒性が高いことを証明しているように見えた。

 しかも私の防御魔法に穴を開けようとしているのか、連続で尾先から液体を噴射している。身動きが取れない私は防御魔法内で考えを巡らせていたのだが……デスピオンの様子が突如変化した。

 どうやら防御魔法が壊れないことに気づいたらしい、デスピオンは動きを止める。


 私たちが訝しげにデスピオンを見ていると、レオさんが叫んだ。

 

「まずい、離れろ!」


 エクスと私は風魔法で宙に浮かぶ。そしてレオさんはヴィリーさんの元へ、全力疾走でたどり着いた。それと同時に、デスピオンの身体が左へと動いたと思ったら……その反動を利用して、身体を回転させたのだ。

 その勢いは凄まじく、近くにあった岩が粉々に砕けていた。

 

 私たちが唇を噛んでデスピオンを睨みつけていると、まだ敵がいることに気づいたのかこちらへと向かってくる。しかし、身体が巨体であるためか、動きはゆっくりだ。

 レオさんとエクスは毒攻撃に近づくことができず、眉間に深い皺を刻んでいる。


「毒の噴射がどうにかなれば……レオ! 毒切れとかはないのか!?」

「分からん! こいつは滅多に出てこないから、情報が少ないんだ!」

「でも普通のスコーピオンだって毒切れなんて聞いたことがないから、無いと仮定して戦った方がいいわ!」

 

 ヴィリーさんの言葉に、忌々しそうに顔をしかめるエクス。そうね、常に最悪を考えた方がいいわ。

 デスピオンは近づいてくると、巨体や尻尾を振り回す。尻尾からは毒が滲み出ており、辺りに飛び散って煙を上げていく。あの尻尾を無力化できればいいのだけれど……。


「あの! 尻尾を魔法で拘束してみます!」

「頼んだ!」


 私は風魔法でデスピオンの尾を捕らえようとする。けれども、外殻の魔法無効化の影響なのか、風魔法では拘束することができない。その間にも遠くからヴィリーさんが矢を何本か鋳るが、なかなか殻の隙間に入れることは難しいようだ。レオさんやエクスも尻尾を気にして近寄れていない。


「魔法だと、完全に無効化されてしまうのね……どうすれば——」


 尻尾さえ捕縛できれば……ついでに身体ごと動きを止められれば、エクスとレオさんも倒しやすいはずだ。色々な魔法が頭の中をよぎる。しかしどれも納得のいく魔法では無い。

 そんな悩んでいる私の目に、ふと入ってきたのは砂だった。デスピオンの毒液が掛かった砂は、固まっているように見える。その時、私は天啓が降りてきたかのように閃いた。


「もしかしたら……!」

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