58、砂漠調査で出会ったのは?
そこからは早かった。
たまに休日を挟みながら毎日潜り続けたからか、階層はどんどん更新されていく。やはりレオさんとヴァリーさんの存在が大きい。いつぞや、雑談でホワイトアント……シロアリを倒して宝箱の中から腕輪を手に入れた、と話すと目を見張っていた。
「ホワイトアントを百匹以上倒しただと? なら三十五階層くらいまでなら余裕だな」
「可愛いのに強いなんて……ますます素敵よぉ〜マリちゃん!」
ヴィリーさんにまた抱きしめられたのは記憶に新しい。
そのため全部の階層を丁寧に進むのではなく、五階層ごと強い魔物がいるところで重点的に訓練することが決まった。そして現在、三十階層にたどり着いていた。
草原、森、湿原、沼地、洞窟……そして現在は岩場。ダンジョンに入ってからは常に歩いているため体力はついたが、岩場に関してはまだ慣れない。足元を見ながら歩いていると、エクスが話かけてきた。
「マリ、ここにいる魔物を倒して素材を手に入れれば、マルセルさんの依頼も完遂だ」
「本当? 集められそうでよかったー!」
マルセルさんの服、楽しみだなぁなんて思っていると、後ろで聞いていた二人が耳をそばだてていた。
「え、マルセルさんって……メゾン・ド・マルセの?」
「そうです! 洋服を作る代わりに材料を取ってきて欲しいという話だったので」
そう私が告げると、レオさんは腑に落ちたような表情で告げた。
「なるほどね。珍しいものを集めているな、とは思っていたが……マルセルさんなら納得だ」
「二人をモデルにした新作楽しみねぇ……私も購入しようかしら?」
そんな話がきっかけで、私たちは皆でマルセルさんの元へ向かうことになる。レオさんとヴィリーさんが物珍しそうに店内を物色する中、私たちはマルセルさんへと最後の納品物を手渡した。
彼はルーペで素材の様子を確認すると、満足げな様子で微笑んだ。
「ええ、ありがとう! これで新作が作れそうよ! 作るのに二週間と程度もらえるかしら? できたら、ニアに伝言させるか……ギルドに言伝するわ」
「よろしくお願いします」
その日にエクスと私で話し合い、次の街へと向かうのは服を受け取ったあとにしようと決めた。私も大分戦闘に慣れてきたというのもあるけれど……スタージアが言っていたじゃない? 色々な場所に行きたいって。
この街の北西側には、港街があるらしいの。彼女の言葉で最初に上がっていたのが海だったから、私は行きたいなと思う。それに……きっと海の幸も美味しいわ!
それから一週間。
私たちは三十五階層を探索していた。三十一階層からは砂漠だ。といっても、本物の砂漠のように暑さはない。ただ見渡す限り砂地が広がっており、今までの階層に比べると、足が取られてしまう。
「はー、いつ来てもここは歩きにくいな」
「同感〜」
前を歩くレオさんとヴィリーさんは額の汗を拭っている。エクスも歩きにくいのか……眉間に皺を寄せていた。
「それより、本当にモンスターがいないな」
「うん、普通ならそろそろ遭遇してもおかしくないよねー」
エクスの言葉に私も同意する。
今回私たちが三十五階に足を運んだのは、レオさんとヴィリーさんへ指名依頼が来たためだ。三十五階層にモンスターが少ない気がする、そう報告を受けたギルドがベテランの二人に依頼を投げたのだという。
最初はレオさんとヴィリーさんの二人で行く予定だったが、直前になって二人が私たちにも声を掛けてきたのだ。「少し手伝ってくれないか」と。
「確かに、ここの層に入ってもう一時間くらい経つわよ? 流石にモンスターの一匹や二匹、出てきてもおかしくないわよねぇ」
ヴィリーさんも頬に手を当てて首を傾げる。
「以前来た時は、穴があちらこちらに開いていたような記憶があるんだが……俺の記憶違いか?」
「……いや、エクスの言う通りだ。俺らが前に来た時も、穴がそこら中に開いていた」
私たちは周囲を見回すが、エクスやレオさんが言うような穴は見つからない。
「三十五階はスコーピオンとワームがメインなのよ。大体どちらかが巣穴から飛び出してくるのだけれど……」
「全くその様子がない」
ヴィリーさんの言葉に続けるように、レオさんは告げる。そして目を細めて周囲を観察していた。
「これは……もしかしたら……」
そうレオさんが呟いた、その時。
——ゴゴゴゴ!
まるで地鳴りのような音が辺りに響き渡る。それと同時に地面が激しく揺れ、私たちは立っていることができずしゃがみ込む。
「マリ! 防御魔法を周囲に展開してくれ!」
「はい!」
切羽詰まったレオさんの声を聞いて、私は四人の周囲を防御魔法で囲む。魔法が完成した途端前方の砂が空高く舞い上がり、まるで津波のようにこちらへ飛んでくる。
思わず手で目を隠す私。
音が聞こえなくなるのと同時に、私は目を開ける。
……すると大きな影が目の前に現れた。
何が起きたか分からず、私は目を丸くしていると、レオさんが舌打ちしながら話し出した。
「くっそ! まさかこいつが居座っているとは思わなかった!」
「他のモンスターがいない理由はこいつだったのね……!」
エクスも大きな影を睨みつけていた。私も同様に上を見上げる。
すると目に入ってきたのは私たちの数倍はあるであろう、サソリの形をした巨大なモンスターの姿だった。




