57、新たな仲間?
「改めて、俺はレオ。こっちはヴァレリー」
「マリちゃん、よろしくねぇ〜! ヴァリーって呼んで!」
ニッコニコのヴァリーさんに頬をすりすりとくっつけられ、抱きしめられながら私はレオさんの話を聞いていた。レオさんは苦笑いで私たちを見ている。エクスなんて、死んだ魚のような目をしているくらいだ。
そう、私はダンジョンから帰る間……ずっとこの状態だった。レオさん曰く、私、いやスタージアの容姿がヴァリーさんのツボなのだとか。確かにさっきから「かわいい、こんなかわいい子がいるなんて」と延々と呟いているので、本当にスタージアの容姿が好きなのだろう。
今もギルド内に設置されている休憩所にいるけれど、冒険者がギョッとしたような表情でこちらを見ているので、きっとヴァリーさんのこの姿は珍しいに違いない。
「いや〜、ヴァリーがすまない。最近は滅多になかったんだがなぁ……」
頭を掻いてそう話すレオさん。その顔には半分呆れが入っているような気がする。しかし、ヴァリーさんはそんなことなどお構いなしなのだろう。止める様子は全くない。むしろどんどん手に入る力が強くなっていく。
「本当にこんなかわいい子がエクスと一緒だったなんて……! はっ、エクスが攫ってきたんでしょう?!」
「攫ってない!」
何度も聞くこのやり取りに、私は申し訳ない表情をする。元々エクスにお金を返すために、そして常識を教えてもらうために一緒にいるだけ。そう思うと胸が締め付けられるような気がする。
そんな私の表情に気がついたエクスは、肩をすくめた。
「皆俺をからかっているだけだから、気にしなくていい。それにマリと一緒にいるのは俺の意志だから——」
静寂が辺りを包む。エクスはそのことを察して、口をつぐんだ。レオさんは目と口をあんぐりと開けて私を見ているし、ヴァリーさんまでもが頬擦りを止めて唖然とエクスを見つめている。
「エクス、そんなことも言えるようになったのね……」
「大人になったな……」
二人に言われて恥ずかしさが沸き起こってきたのだろうか、エクスの頬は真っ赤に染まっていく。
「お前も可愛いところあるじゃねぇか!」
そう言ってレオさんは頭をわしわしと撫でた。エクスは迷惑そうに手を払おうとするが、レオさんが止める様子はない。
「おいっ、やめろって!」
そう言って嫌がるエクスが年相応に見えて……なんだか新鮮な感じを味わったのだった。
落ち着いたところで、二人に話を聞いたところ、元々エクスはレオさんとヴァリーさんと組んでいた時期があったらしい。ジャックさんの元を去った後、力試しに立ち寄ったのがこの【ラクリス】のダンジョンだった。
そこで他の冒険者に絡まれているのを見たレオさんとヴァリーさんが、強引にエクスをチームに入れたのがきっかけだそう。
「まあ、魔の山から一番近いしな。実力試しにはもってこいだったのもある」
「そんなスカしてるから、狙われたんじゃないの? まあ、絡んだ奴がエクスの実力を見抜けなかったのもあると思うけど」
ヴァリーさんは私の頭を撫でながら言う。そういえば、最初のギルドの時は私が絡まれたけど……エクスも相手を煽っていたような気がしなくも——
そう思った私はちらりとエクスを見ると、丁度彼もこちらを見ていたのか視線がぶつかった。慌てて視線を逸らしたけれど、不審がられただろう。実際エクスは訝しげに私を見ていたが、頑なに視線を合わせようとしない私を見て、諦めたようだ。
そんな私たちをよそに、レオさんは話を続ける。
「佇まいを見れば、実力者かどうかなんて分かるのにな。まああの時の奴らは、エクスが貴族に召し上げられた後、どこかに行っちまったよ」
「私たちはそこからずっとここにいるけど、まさかエクスがこんな可愛いマリちゃんと帰って来るなんて思わなかったわね。よくやったわ!」
「いや、ヴァリーのために連れてきたわけじゃないから」
握り拳を掲げるヴァリーさんへ冷静にツッコミを入れるエクス。話を聞くに、スタージアの元へ行ったエクスが二人に連絡を入れていたわけではないようなので、本当に偶然なのだろう。
「それにここへ来たのは、マリの戦闘慣れのためだ。ある程度いたら、次の街に行く予定だからな」
エクスの言葉に私は頷いた。「色々な場所を巡りたい」これはスタージアのお願いでもあるけれど……私の意思でもある。ヴァリーさんは私が同意したのを見たからか、手に力が入っていく。
「ええー?! そんなぁ……寂しいじゃない。いつまでもここに居ましょうよ?」
「まあ、この場所は実入りはいいからな」
ヴァリーさんの言葉にレオさんも同調するけれど、決めたことなのだ。
「私はこの国を見てまわりたいなと思っているので、もう少ししたら次の街に行こうと思います」
そう告げると、やはり寂しく思ってくれているのかヴァリーさんは肩を落とす。けれども、ふと何かを思いついたのか目をキラキラと輝かせた。その様子を見たエクスが片眉をひくつかせている。
「……そっか。わかった! なら、この街にいるときだけでいいから、チームを組みましょう?」
「それがいい! 俺はエクスがまた絡まれないか心配だったが……そうすれば絡んでくるやつも居ないだろうしな!」
そう言って楽しそうに笑うヴァリーさんとレオさん。二人の意見にエクスは真っ向から反対する。
「はぁ?! 勝手に決めんな!」
「いいじゃないー! エクスは数年前の知識でしょう? 私たちは最新の知識があるのよ。調べなくても教えてあげられるわ!」
やいのやいの言い合っていたが、二対一では流石のエクスも勝てなかったらしい。押し切られた形になっていた。そのうちにレオさんに連れられてエクスが受付へと向かっていく。彼の表情は不貞腐れていた。
私はそんなエクスを見て笑みを漏らす。
「マリちゃん、よろしくねぇ〜!」
「こちらこそ、よろしくお願いします!」




