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ディストピア生活初級入門(第5部まで完結)  作者: 中将
第6章 科学VS呪い

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第83話 得体のしれぬ味方

 3回目なのでいい加減慣れてきたし、今日は紋付き袴では無いため比較的歩きやすい。しかし、このダラダラ続く石畳は本当にキツイことには変わらない。


 しかし、不気味なぐらいに静かだ。神社なのだから静かなのは当たり前なのだが、本祭神社側は明らかに僕たちの動きを分かっている。

 それにも関わらず「平常運転」であることに不気味さを感じるのだ。


 そんな風に思っていると先頭を歩いていた玲姉がピタッと動きを止める。


 それと同時に後ろを歩いていた僕たちも登るのを止めて緊張感が一気に高まっていった。


「――どうやら、階段を登りきったところで待ち構えているようね。

 私が一足先に出てその際に一斉攻撃をかけてくると思うからその隙に攻撃してね」 


 と、玲姉は真後ろを歩いていたまどか、島村さん、建山さんに向かってそう言った。


 建山さんはニコニコとしているだけだが、まどかと島村さんは表情を引き締めた。


 僕も先ほどのリビングの天井が吹き飛んだことを考えると覚悟せざるを得えず喉をゴクリと鳴らした……。

 

 そして玲姉が一番上まで到達したその瞬間だった!

 

 紫色のリングのようなものが玲姉の方に何個も襲い掛かってきた!


 玲姉はバク転をしながら体をひねるという体操選手も顔負けの動きで楽々と交わしたのだ。しかし、意味不明な物理の法則を歪めたような動きをして玲姉の身体を拘束した!


「なるほどね。随分と準備が良いようじゃない」


 玲姉はリングに拘束され、何か電磁波のようなものを浴びているようだが、余裕の表情だ。


 しかし、こっちとしては想定外のことが起きたわけで、僕たちは一斉に残りの階段を駆け上がった。


 そこには100人単位の紋付き袴をつけた宮司のような人たちが集結しており、何やら呪文のようなものを永遠と唱えている……。


 玲姉は様々な呪文を投げつけられながらも涼しい顔をしている。だが、動きは取れていないようだった。


「想像以上だ! 超高度の精神攻撃を浴びせたのに……。正気を保てているとは……。だが、動きは封じた! 他の奴らを一掃しろ!」


 宮司たちは動揺しながらも何やら呪文を更に唱え、一気にゾンビや幽霊のような奴らが一気に姿を現す! この間僕たちの地下訓練場で見たよりもおどろおどろしい半分顔が崩れ去ったようなものばかりだった……。


 しかもその数は一瞬で数えることは出来ないがざっと500以上いるだろう! 僕だけだったら一瞬で飲み込まれてしまう……。


「ここは私が!」


 建山さんがすかさず飛び出て10体ぐらいのゾンビを一気に吹き飛ばし、更にその後ろの宮司に向かって突入していく。


「援護します!」


 建山さんの間をかいくぐるように島村さんの弓がゾンビを撃ち抜く。


 何だかんだでコンビネーションがあっているような気がする。


 仲が悪そうな2人に言ったら即座に否定されそうだけど……。


「うおおおお!!!! お兄ちゃんの馬鹿ぁぁぁぁ!!!!」


 僕の目の前のまどかは僕のことを叫びながらゾンビを倒していっている。拳にヘンな体液が付いていてもお構いなしだった。


 完全に吹っ切れたかのようになっている……。僕に対するストレスをまき散らしているかのようだ……。


 いずれは僕もゾンビのように粉々にされてしまうのかもしれないと思うと、何か不穏なものを感じてしまうが、これは弱点を克服しているということで、良いことなんだよな……? 


「虻輝様、そんなに前に行かれると守りにくいので後ろの方へ。戦況についてはこのアーマーを介してでもご覧になれます」


 僕が身を乗り出して様子を確認しようとしていると為継に諫められる。


 僕が後ろに下がると、幽霊が襲ってきてロボットが火炎放射器で焼き払って撃退していた。驚きのあまり僕の心臓が止まりそうになった……。


 確かに僕があんな不気味なゾンビや幽霊に襲われたらひとたまりもない。まどかは長年の関係上イジっているだけで、あれだけ戦えるのは正直尊敬できた。


「3人の実力は知っていたけど、凄い活躍だね……。あれだけの数のゾンビや宮司が次々となぎ倒されていくよ……」


 島村さんは1射撃で4本の弓を放ち味方をかいくぐりながら2体ずつぐらいに当てている。

 

 建山さんはトンデモないスピードで捻じ伏せていった……。


「密かに恐ろしいのはやはり柊玲子ですよ。あれで20人ぐらい引き付けておきながら平気な顔をしています。あれは、脱出しようと思えばできるのではないでしょうか?」


「え? どういうこと?」


「わざわざあの3人の経験値を上げるために敢えて自ら手を下さないのです。恐らくは危機に陥れば脱出するでしょう」


 僕は玲姉の方を見た。確かに玲姉はどちらかというと保母さんが子供を見守っているような表情をしているように見えた……。


 スッと玲姉は僕の方を見て視線が合う。とんでもなく不満そうなのを見ると、どうやら”保母さんのようだ”という論評が気に入らないのだろう……。


 いや、今のは訂正して謝るよ……と心の中で伝えたら。大きく頷いた。玲姉と僕の間は20メートル、しかもあちこちでうめき声が聞こえる状況下で玲姉は僕の思考を読み取り、僕は玲姉の表情を読み取って対話をしているのだから異常性が凄かった。


「そ、それはあり得るよね弟の僕すら玲姉の実力の全貌を知らないんだから、本当にとんでもないことだと思うよ」


「本当に我々と同じ人類と分類して良いのか謎ですな……。局長が言うには何度分析しても人類で間違いないと」

 

「前も言ったけどその手のことは玲姉本人には言うなよ? 殴られるのは僕なんだからな?」


 僕の知り合いの失言は”監督不行き届き”という事でなぜか僕に追及が飛んでくるんだから理不尽にもほどがあるだろ……。


「あっ!」


 まどかが足を取られて尻餅をついて倒れると周りのゾンビが襲い掛かってくる! これは危ない!


「とうっ!」


 玲姉が突然現れそのゾンビを飛び蹴りをして吹き飛ばしていった……。玲姉はその後まどかを抱きとめてまどかはギュッと抱きつく――感動的ではあるが何が起こったのか分からない。


 特にいつの間にあの紫のリングを抜けたんだ……。気が付けば術をかけていた術師も全員倒されていた……。目にもとまらぬ速さとはこのことだ。


「……為継、玲姉はいつ抜け出したんだ? 僕はまどかの方を直前見ていて分からなかったのだが……」


「私も気になってロボットの撮影データを巻き戻して確認したのですが――それが映像で捉えられていません。データが捉えることが出来なかった間に事は起きたのだと思うのですが……」


「なんじゃそりゃ……」


 最新鋭のロボットが映像を取れていないとは思えないがそれを超えるぐらいな驚異的な動きをしているということだ……。


「もっとも柊玲子の全貌はあの局長が15年以上かけても解明できていないのですから映像程度では分かるはずもありません。

 ただ一つ言えることは、”現在彼女は我々の敵ではない”という事ですかな」


「いや、味方だろ。そうじゃなかったら大王の痣取りのために力を貸してくれないって」


 『味方だ』では無く『現在は敵ではない』と言うところが何事も慎重な為継らしい表現だった。


「基本的に私は自分以外は100%味方だとは思っていませんからな。味方だと思っていても永遠ととんでもなく上手な嘘を吐き続けている場合、裏切られた場合の損失は計り知れませんので」


「僕についてはどうなの?」


「虻輝様は非常に単純な思考をされているのでかなり安心できますな。深く考える必要がありません。敵や味方を考えるとかそれ以前の問題だと思います」


 為継の考え方には苦笑するしか無かった。その上で僕が間接的にとんでもなく馬鹿にされていると言えた……。


 僕もまどかに対して似たような扱いをしているのだから冷静に考えてみればかなり失礼なんだろうけどな……。

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