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ディストピア生活初級入門(第5部まで完結)  作者: 中将
第6章 科学VS呪い

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第82話 同じ言葉を言っても……

 玲子さんと建山さんがアッサリと対処してくれたから感覚が麻痺してしましますが、

 あの広いリビングが丸ごと吹き飛んでしまうだなんてとんでもないぐらい異常な出来事が起きているんですよね……。


 この間もゾンビの集団に襲われたことですし、改めて気合を入れていかなければ……。


 そんな風に緊迫をしていると暖かい手が私の手に触れてきました。私の隣に座っている玲子さんが、私の手を握っているようです。


「大丈夫? あんまり気負う必要はないからね? 例えば知美ちゃんは弓道の大会で数多く結果を残してきたわよね?」


「そうですね……大会に出ているときはいつも通りやっているだけで自然に結果が良い方向に出ていましたね」


「それはとても才能があるからよ。その通り今回もやれば良いのよ」


「ですが、”いつも通り”と思ったとしてもどうにも違うような気がするんですよね。

 弓道の的は動かないですし、同じ動作を繰り返していくことで結果が出ていました。

 ですが、実戦で戦う相手がいるとなると話は全く変わってきます。

 相手によって対応が変わっていきますし、


「それは確かに言えているわね。とは言え、弓道で一度も中央に当てることが出来ない人がいきなり中央で真ん中に当てる事って極めて難しいと思うのよ。

 確かに、臨機応変さは凄く大事だけど、やれることの範囲があるとき急激に上がる事は稀だからやれることをやるという意味では変わらないのよ。

 むしろ奇をてらってやれないことを無理やりやろうとすると足を引っ張ることになるわ」


「なるほど……急に強くなるのなんて物語の中だけですよね」


「知美ちゃんの遠距離攻撃は絶対に頼りになるわ。私を盾だと思って存分に力を発揮して頂戴ね」


「はいっ!」


 玲子さんの言葉はいつも私の心を軽くしてくれます。本当に私の力が役立つかは分かりませんが、やれるだけのことはしっかりとやっていこうと強く思いました。


 さっきまでは凄く怖かったですが、何か虻輝さんに対するアピールの場ではないのか? と凄く前向きになった気がします。

 


◇ 虻輝視点



 この飛行自動車は3列で前の列で玲姉と島村さんが話をしている。島村さんは顔色が悪かったのが玲姉から言葉をかけられるたびに良くなっていっているような気がした……。


「お兄ちゃんのことはあたしが守るから……」


 そう言ってまどかは僕の手を握ってきた。柔らかいながらもしっかりしていた。


 FPSゲームをしていたわけだが大きくプレイングが乱れて転倒した。奇跡的に立て直して相手を上回って勝ったがタイミング次第では危なかった……。


「は? お前に守られるほど落ちぶれてないって(笑)。為継のロボットが守ってくれるから大丈夫だって!」


 僕はまどかの手を振り払う。


 まどかは一瞬、この世の終わりのような表情になった後、ニャハハ~! そうだよね~。といつも通りの表情になった。


 ものの数秒でコロコロ表情が変わったが、何か葛藤があったような気がした……。


 とても悪いことをしたような気分になった。


 正直なところ、この間の島でまどかに欲情しかけた時から後悔が止まらなかった。


 何もしがらみが無ければまどかと付き合っているという事もあったかもしれない――だが、ずっと妹として見てきたのに今更そんなことも出来ない。

 僕のように心が汚れた人間は相応しくない。


 まどかが何の意図をもって僕に触れてきているのか全く分からないが、僕にとっては複雑な感情が思い起こされる……。


 だが、その後にショボンとして窓の外を見ているまどかの表情はそれはそれで後悔が押し寄せてくる……。一体どうしたら良いのか……。

 

「ま、まぁ。玲姉の援護をすることがお前のベストだよ。前の席で玲姉が言ってただろ? 自分にやれることをやることが一番大事だって」


「う、うん……」

 

 玲姉が島村さんの顔色を良くした発言を言ってもまどかの顔は冴えない。え? 何を言えば良かったの? ま、まぁ世の中万能な特効薬が無いのと同じように、誰もを元気づけられる万能な言葉なんてないんだよな……。


 むしろ、微妙な反応をして内心ドギマギしている僕に対して、どうしていつも通りにまどかが接しているのかも謎だ。


 いや、むしろまどかは僕以外に同年代の男とまともに話せないんじゃないか? それならちょっと納得がいく。他に選択肢がないからやむを得ないのかもしれない(僕も3つ上で同年代とは言い難いが……)。


 そうなるとどこかの時点で虻利のツテを使って男を紹介してやるしかないか……。

 ――とか思っていると玲姉が振り返ってきて盛大な溜息をついてきた。こういう時は僕がメチャクチャズレた考えをしている時だ。そんなにズレていたんだろうか……。

 

「さ、到着しましたよ。特攻局のメンバーも別の車で来ているので、打ち合わせみたいなことをしましょう」


 玲姉やまどかととんでもなく気まずい状況になってどうしようもない……と思っていたところ上手い具合に現地に到着したようだった。


 ホッと胸を撫で下ろしながら飛行自動車を降りると、特攻局の人たちも到着しており建山さんを最敬礼で向かい入れた。その数何と300人ほどだ。関東には500人特攻局の人がいると言われているからかなりの人員がここに割かれていることになる。


「皆、今日は今年の中で最も大きな組織に突入する! 並々ならぬ力を持っていることが予想されることから今回は助っ人を連れてきた! だが、それぞれの身を守ることを全力で行うように! 我々は令状という公権力ある! 自身を持って突入するように!」


「はいっ!」


 建山さんは他の飛行自動車で合流してきた凛々しい表情で部下に立ちに訓戒を与えていた。いつもの僕に色仕掛けをしてくる姿とは全く別人だ。


 こういう姿を見ていると本当に仕事が出来るんだろうなと思えてしまう。

 ゲームしか出来ない僕を好きな理由が何なのか全く意味が分からない……。


 敢えて言うのなら、ゲームが強そうなので何か技術面で評価できるところがあるのかもしれない。


「特にこの柊玲子さんは私に匹敵するだけの実力を持っている。指示に従うように!」


 おぉ! と大きく歓声が上がった。特攻局でも最上位にいるであろう建山さんと同等と聞けばそりゃテンションも上がるだろう。


「皆! 相手は全力で抵抗をしてくるだろうから、しっかりと生きて帰るわよ!」

 

「はいっ!」


 玲姉が一言言うと一気にテンションが上がる。美人に号令をかけられたらうれしいだろうな。


 建山さんからも今回の相手が相当な軍事力を持っていることは伝えられているのだろう。何やら見慣れぬ武器のような物を持っていた。


「こちらは科学技術局からの小早川さんだ。粗相のないように」


 為継は静かに頭を下げる。拍手がまばらに起きただけだった。


「了解しました」


 為継の紹介の時は玲姉とは違って何か緊迫感を生んだ。一気にその場にいた特攻局にメンバーが心を閉ざしたようにも見えたのだ。しかも、為継の横にはいつ呼んだのか、ロボットが3機静かに控えていた。


 やはり特攻局と科学技術局の間には見えないライバル関係や対立があるのだろう。

  

 だが、わざわざこのような出陣式みたいなことをやるのを見ても、やはり今回の突入には相当意義があるという事なのだろう。


「では、指定した配置通りに!」


 10人ほどが車に戻り、200人ほどが色々なところに小走りで分かれていった。僕たちは正面から向かうが、色々なところから向かっていくのだろう。


 まるでシミュレーションゲームで城攻めでもしているような気分になったのだった……。


 ただ、ゲームと決定的に違うのは本当に存亡をお互い懸けた戦いだという事だ……。

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