第九話「白」
部屋の様子を見て、僕が最初に思ったのは、
普通の部屋だな。
ということだった。
何の変哲もなく、掃除も行き届いていて、清潔感があって、これといって目立ったことなんて無かった。
「驚くことなんて無いじゃん」
と僕が言った。
「ええ、今はまだなの」
今はまだなの、と彼女は言う。そのうち、彼女の正体とも言うべき何かが正体を表すのだろう。と、気楽に構えていた。
そのうち彼女は、僕にコーヒーを入れてくれた。その白い指先がマグカップの持ち手のところをつかんでいる姿を見て、僕は少しだけうっとりしてしまった。
彼女には、恐ろしく妖しげな雰囲気があるから、僕はいたる仕草に恍惚としてしまう。
「…………苦手じゃなあい?」
と石峰さんは聞いてくれた。
「いや、コーヒーは好きだよ」
と僕は答えた。
彼女は少し微笑んでいた。そうして時計の秒針の音だけが、白い部屋の中へといつまでも響き渡っていた。
丸いテーブルを挟んで、彼女は僕の目の前に座った。そうして華奢な足を組んで、一緒にコーヒーをすすった。
彼女の清らかな唇の中に、すらすらと入り混んでいるコーヒーを眺めていた。また恍惚としていた。
これは、もしかしたら恋心なのかもしれないと思ってみる。
それも悪くはないはずなのに、どうしても嫌な緊張感が抜けてくれなかった。
「…………あ、そろそろ」
と、石峰さんは言ったから、今までの沈黙が破られて、僕はハッとした。これから何かが始まるという、えげつない緊張にかられた。




