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第五話「観察と認識」

 


 あのオリエンテーションの時の一件から、もう僕は全然、石峰さんとは会話をしなくなった。やはり、あれは奇跡だったんだ、と思うと、もう少し根掘り葉掘り聞いてみれば良かったかな、と少し後悔してみる。



 だが、今でも僕の心の内にある混乱は、収まらなかった。たびたび彼女を見かけるが、その折りに話しかけようとするのだが、勇気が出ない。目の前の熊に猟銃でも突き付けるかのような緊張感が僕を襲うのだった。



 発展があったのは、オリエンテーションから数ヶ月が経過し、僕らが次の学年にあがってすぐの春の季節の出来事だった。


 僕が石峰さんを見つけてちょうど一年が経過した頃である。


 僕は、このまま帰宅部というのもよろしくないかな、と思ったので、本が読める文芸部に所属をすることに決めたのだった。


 同級生は歓迎してくれた。多分、人数が少ないというのもあったし、今回の様子を見ると、この文芸部に新入生が入ってきてくれている様子もうかがえなかったから、僕は貴重な存在なのだろう。



 ただ、何となく。何となくこの部活に所属したが、あろうことか僕が入部して数日後、なんと石峰さんが入部希望者として部の扉を叩いたのだった。



 僕は仰天した。二年生以上の学年が新しく部活に入る、というのは比較的珍しいことだったし、そこに石峰さんが来たというのは現実を疑ったほどだった。


「あっ、久しぶり」

 と、僕は目を丸くしながら、そう僕は彼女に挨拶をした。


「…………倫くん。ここだったんだね」

「ああ、いや実は僕も数日前に入ったばっかりで」

「そう」


 短い会話だった。けれども、僕は去年のオリエンテーションの日の事を鮮明に思い出しつつあった。


 木漏れ日を浴びながら、ブランコをこぐ異形の彼女と目を会わせながら、君の存在の異質さを、直接聞いたあの時の記憶。


 とたんに、脈拍が上がるのを感じた。

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