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第四話「発展と歩み」

 

「そう、見えるよ。とても」


 僕が強くそう言っても、彼女は顔色を変えない。


 困る様子も怒る様子も感じられない。他愛の無い会話の延長線だとでも思っているのだろうか。


「誰かに電話しないの?」

 彼女は言った。


 その言葉を聞いて、僕はスマホの存在を思い出した。

「ああ、そうだね」


 取り出して、それが圏外になっている事を確認した。やっぱりか、と落胆する。


「圏外だよ」

「そっか」


 僕らはまだ、この場所で二人きりの状況が続くようだ。だんだんと陽が落ちてきた。夜の匂いがする。


 この場所でずっと待ち続けても、何も起きないという事が分かっていたから、僕らは歩く事にした。


 公園を抜け、ゆっくりと僕らは歩き始めた。二人で並んで歩いていると奇妙な感覚に襲われる。


 それはここ数ヶ月の間、意識し続けた存在が、すぐ隣にずっといるという点で、もっと奇妙なのはそれが恋愛感情では無いという点だった。



「ねえ。さっきも言った事なんだけど、君はほんとうに普通の人間なの?霊感もない?悩み事もない?そのぉ、なんて言うかな、人って誰でも人とは違っているなあって感じる時があると思うんだけど、君の場合はその、あまりに、存在感が違うというか…………」


 僕がしどろもどろにそう言うと、


「そんなに気になるの?」

 と彼女は言った。


 僕たちの足が止まった。


 深い森の中で、彼女に見つめられた僕は、蛇に睨まれた蛙のような気持ちになった。ほとんど喰われそうだった。


「気になる」

「アナタ正直だね」


 そう言う彼女は、うっすらと微笑みを浮かべていた。

 それからまた足を進める。


 数分歩いただけだった。

 しかし僕らは、元の明るい場所に出ることができた。



 僕らは友達と合流し、先生に注意され、そうして石峰さんとはこれでもとの距離感に戻ってしまった。


 その事実が少し残念ではあったが、僕の心中に奇妙に渦巻く黒い点のようなものを感じ取った。






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